ウイルスの世界的大流行を「パンデミック」と呼ぶのになぞらえて、誤った情報や不正確な情報の氾濫を「インフォデミック」と言うが、現在のインフォデミックの状況のなかで、企業はどのようなアクションを取っているだろうか。
IDCは、今年2月に実施した「Future of Trust(信頼の未来)」調査の結果から、多くの企業で「組織の信頼性を高めることへの関心が高まっている」と指摘している(回答者は7カ国507人)。
たとえば、「組織の信頼を高めることは必要か?」という設問へは、80%が「社内外で組織の信頼性を高めることが必要」と回答している。
・強くそう思う(Very High):43%
・そう思う(Above average):37%
・ふつう(Average) :17%
・そう思わない(Below avarage):2%
・強くそう思わない(Very Low) :1%
上記のような回答になる理由として、IDCは次の3つを挙げる。
●巧妙化するサイバーセキュリティの攻撃
●増え続ける複雑な規制要件
●ITおよびセキュリティインフラの断片化
この結果企業は、誤った情報の氾濫による売上・ビジネスへの影響や、企業が発信したデータの保護に関する複雑な問題、ユーザーがSNS上などで発信する情報の自社への影響の把握の困難、の3点について懸念を高めているという。
下の図表は、企業が取り組む上記の対策である。「個人情報保護に焦点を当てた業界や地域の規制が強化される中、企業は個人情報をより安全に保護するために、リスク評価やマッピングの改善にいっそう注力するようになっている」と、IDCは指摘する。
◎回答の多い順
・統合的リスク管理プロセスの改善
・個人データの保護
・財務管理および透明性の改善
・生産性とイノベーションの改善
・個人情報保護対策の改善および実施
では、IDCの見解はどのようなものだろうか。まず、企業がインフォデミックのなかでブランド価値を保持し正当な評価を得るためには、次の3つの取り組みが重要になる、と述べる。
●透明性が高く、シンプルで短いプライバシーポリシーを導入する
●ユーザーに関するデータ収集を制限または最小化する
●常に消費者の利益を第一に考えて行動する
このなかに、ユーザー情報の収集・制限に関する項目があるが、「膨大な個人情報は必要ない、という考えに基づく企業の中核的価値観(コアバリュー)を実践することが、企業ブランドを高め、顧客・取引先からの信頼の獲得につながる」と断言している。
IDCが、企業の信頼獲得・保持に関して2021年に投資すべき分野として挙げるのは、「リスク」「セキュリティ」「コンプライアンスとプライバシー」「倫理」の4つである。
「リスク」については、既存・新規および新しいタイプのリスク要因の特定と評価、「セキュリティ」はAIやアナリティクスを活用したサイバーセキュリティへの対処、「コンプライアンスとプライバシー」に関しては、企業が収集するデータの種別と保護についての評価、「倫理」についてはデータ活用に関する倫理規定の策定と実施が、投資すべき分野として挙げられている。
IDC記事「The Future of Trust in an Infodemic: Drivers, Challenges, and Investment Areas」(英語)
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