IDC Japanは、国内企業の情報システム子会社に関する調査結果を発表した。これによると、情報システム子会社自身、その親会社とも、情報システム子会社における人材不足や新規テクノロジーの対応遅れなどを課題として認識していることが明らかとなった。
国内の大手企業は、1990年前後からテクノロジーの専門性を高めるためなどの理由で、自社の情報システム/ITの開発、運用を専門に行ういわゆる「情報システム子会社」を設立した。
情報システム子会社は長年にわたり、これら企業のITを支えてきましたが、デジタルトランスフォーメーション(DX)、デジタルビジネスの時代を迎え、期待される役割も変化している。その中で、情報システム子会社のベンダーなどへの売却を行う企業もある一方、逆に親会社に吸収合併することでデジタルビジネスの強化を図る企業も見られる。情報システム子会社は、今変革期を迎えていると言えます。
こういった背景の中、IDCは情報システム子会社を持つ企業(親会社)、および情報システム子会社双方に対して、アンケートおよび直接取材を行い、情報システム子会社の現状課題と今後についての調査を実施した。
これによると、親会社、子会社とも、その課題について「人材不足」が1位になったものの、その回答率は子会社が親会社を上回りました。人材不足が課題であるという共通認識はあるものの、その深刻さについては管理する側と現場では違いが見られる。
一方、「親会社ビジネスのへの対応能力」については、子会社は課題と考えている割合が低いものの、親会社では「人材不足」に次いで2番目に多い回答となるなど、ここでもサービスを提供する側と受ける側で認識が異なることがわかった。
また、今回取材を行った親会社の中には、デジタルビジネス時代の到来を見据え、情報システム子会社を本社に吸収合併するとともに、新たにデジタルビジネスの子会社を設立した企業もある。
一方で、親会社IT部門や事業部門とともにワーキンググループを作り、親会社のITやビジネス変革に取り組む情報システム子会社も存在している。
デジタルテクノロジー利用の巧拙が企業の競争力を左右する今日、親会社の戦略に従って情報システム子会社の再編を行うケースは増えるとみられる。
「情報システム子会社の吸収、売却、戦略転換といった戦略的なオプションはさまざま存在するが、その意思決定をする前に親子間の協業と相互理解を進めることが必要である。その中で、親会社、子会社とも自社の戦略や能力を客観的に理解/評価し、何を強化すべきか、何を捨てるべきかを考えたうえで、最適な意思決定を行わなくてはならない」と、IDC Japanのグループバイスプレジデントおよびチーフリサーチアナリストの寄藤幸治氏は述べている。
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