BPMツールとの連携は
双方向で可能
IBMは2017年7月13日に、RPA市場のリーダー的ポジションに位置する米Automation Anywhere社との協業を発表し、日本IBMにおいては10月20日から「IBM Robotic Process Automation with Automation Anywhere(以下、IBM RPA)」の提供を開始した。
IBM RPAは、IBMのビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)製品「IBM BPM Express」とAutomation Anywhere社のRPAツール「Automation Anywhere Enterprise(以下、AA)」をセットした製品。AA単体での販売はなく、BPM製品とのセットである点が、IBM RPAの大きな特徴である。
その理由について、IBMクラウド事業本部の中村航一氏(クラウド・テクニカル・セールス、シニア・コンサルティング)は、「従来のIBMのRPAソリューションに対するスタンスは、自社では独自製品をもたず、他社のツールを目的に合わせて利用することでした。それをグローバルで展開してきましたが、その経験から得た知見・教訓は、単純な手作業をただ個別に自動化するRPAだけでは思ったような効果が得られない、業務全体を適切に見直し、その業務プロセスのどこにRPAを適用するかを見極めたときに初めて本質的な効果が生まれる、ということでした。つまりRPAにはBPMが不可欠というのがIBMの考えで、それがAA社との協業とIBM RPAの提供につながっています」と話す。
IBM RPAは、業務改革ソリューションの一環として位置づけられている。中村氏はそれを「人体」になぞらえて説明する(図表1)。
【図表1】日本IBMの業務改革ソリューションとRPA
「人の作業を自動化するRPAは、人体で言えば“手”の部分で、画像処理(IBM Datacap)は“目”、ビジネスロジックの自動化(IBM ODM)は“左脳”、AIの活用は“右脳”で、それらを統合し管理する“中枢神経”にあたるのがIBM BPMです。RPAはBPMがあってこそ、より大きな効果を発揮します」
IBM BPMとAAとの連携は、双方向で可能である。BPM側からは、AAを呼び出してタスクを自動実行でき、一方のAA側からは、ロボットによる自動化処理でエラーが発生したときなどに、BPMで定義したプロセスへ情報を回すことにより解決できる。
500種類のコマンドと
豊富なトリガー機能を備える
AAは、開発環境(Bot Creators)、管理環境(Control Room)、実行環境(Bot Runners)の3つで構成されている。
Bot Creatorsによるタスクの作成は、2とおりで可能である。1つは「レコーダー」で、デスクトップ上の作業を記録して「ボット(ロボット)」を作成する方法、もう1つは「タスク・エディター」で、開発画面左列のコマンドをドラッグ&ドロップして、そのプロパティをセットするスクラッチの作成方法である(図表2)。また、レコーダーで記録したボットをタスク・エディターで部分的に編集したり、前半をタスク・エディターで、後半をレコーダーによる記録で作成することなども可能だ。
【図表2】ボットの作成・編集画面(Bot Creators)
「コマンドは約500種類あり、ドラッグ&ドロップによる組み合わせだけで、きめ細かな業務処理が行えるボットが作成できます。たとえば“ファイルを開く”というコマンドであれば、ドラッグ&ドロップするとダイアログが出てくるので、ファイル名を指定しエンコーディングの種類を選択するだけでタスクの定義は完了です」(中村氏)
さらにBot Creatorsでは、作成したボットを起動する「トリガー機能」を豊富にそろえている。「Email」は新規メールの受信時、「File」は指定したファイルが作成・削除・変更・リネームされたとき、「Service」は指定のWindowsサービスが起動・停止・一時停止・再開したときにアクションを起動するトリガーである。
Control Roomは、ボットを適切に利用するための管理機能で「IBM RPAの特長の1つ」と、中村氏は語る。主な機能としては、ボットの稼働状況を可視化する「ダッシュボード」(図表3)、スケジュールにもとづき実行環境へ配布を行う「タスク・スケジュール」、すべてのイベントを表示可能な「監査証跡」など。また、“野良ロボット”の作成を防ぎ、厳密にコントロールするための強力な管理やセキュリティ機能も提供している。
【図表3】ボット/ユーザーなどの管理画面(Control Room)
Bot Runnersは、ボットファイルの手動実行、AAクライアント上での手動実行、Control Roomのスケジューラーによる自動配布・実行の3種類で実行が可能である。
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●価格(保守料を含む)
・10 Bot Creators、3 Control Room、5 Bot Runners、840 PVU(4コア・3サーバー分):130万3000円(月額)
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中村 航一 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMクラウド事業本部
クラウド・テクニカル・セールス
シニア・コンサルティング
ITスペシャリスト
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IS magazine No.18(2018年1月)掲載