Text=三神 雅弘 日本アイ・ビー・エム
次に、5250エミュレータではサポートされない機能を含め、Navigator for i の代表的な機能について見ていこう。
システム状況の管理
システム・タスクのシステム状況については、システムのCPU、メモリー、ディスクやジョブの状況を1つの画面で確認できる。
図表6のメニューの「システム」から「システム状況」を選択する。
CPU、メモリー、ディスク、ジョブ等の情報は、それぞれがブロックとなって表示される(図表7)。
各ブロックを表示する位置は変更できる。また、ブロック右上の×印をクリックすることで、そのブロックを非表示にできるので、システム監視に必要な項目のみを表示するなどのカスタマイズが可能である。
画面下部の中央にある矢印をクリックすると、システム・トレイが開く。管理システムが複数登録されている場合には、システム・トレイにそのシステムが表示される(図表8)。
ここで別のシステムを選択すると、表示しているタスク画面のまま、そのシステムの管理に切り替わる。図表8の場合では、新しく選択したシステムのシステム状況画面が表示される。
またこのシステム・トレイから「新規ノードの追加」を実行することで、新たな管理対象システムを追加し、そのシステムの管理画面を表示できる。システム・トレイは、いずれのタスク画面からでも実行可能である。
システム状況の右上には、いくつかのアイコンが並んでいる。図表9の一番左のアイコンは「プロパティー・ビュー」で、システム状況がリストで表示される(図表10)。
図表9の左から2番目の星型のアイコンは、「お気に入りリストに追加」である。お気に入りリストに追加された機能は、ホーム・タスクのお気に入りの管理から実行できる(図表11)。
Navigator for i には多くのタスクがあり、目的の画面がどこにあるかに慣れないとわかりにくいが、お気に入りに登録することで、管理したい画面を素早く表示することが可能になる。
図表9の右から2番目のアイコンは「最新表示」、一番右は「統計のリセット」、真ん中にある「SQL」のアイコンは、「SQLの表示」である。
新しいNavigator for i では、IBM i サービスを使用してシステムから情報を取得している。IBM i サービスは、CLコマンドや API の代わりに SQLステートメントを使用してシステム情報にアクセスする。このSQLアイコンをクリックすることで、Navigator for i がシステム情報の取得に使用するSQLステートメントを表示できる(図表12)。
SQL表示の右下にある「SQLの実行」をクリックすると、IBM i Access Client Solutions (以下、ACS) の「SQLスクリプトの実行」が起動して、表示されているSQLスクリプトが実行される(図表13)。
ちなみにACS の「SQLスクリプトの実行」を起動するには、ACSのメニューから「ツール」「ナビゲーター要求」を選択して(図表14)、該当するシステムのナビゲーター要求を開始しておく必要がある。
アクティブ・ジョブ
実行管理機能タスクから「アクティブ・ジョブ」を実行することで(図表15)、アクティブ・ジョブの一覧が表示される(図表16)。
ここでは、5250エミュレータから WRKACTJOBコマンドを実行した場合と同様の情報が表示される。Navigator for i のアクティブ・ジョブの表示では、表示される項目について「基本」「処理」「すべて」の3つの選択が用意されている。
「基本」はジョブに関する基本的な情報のみを表示する。ジョブのリストを最も速く表示するためのオプションである。図表16で、拡張タイプのカラムの項目に何も表示されていないのは、「基本」オプションが選択されているためである。
「処理」を選択すると、ジョブ作業属性に重点を置いた項目が表示される。図表16で「処理」を選択して最新表示にすると、拡張タイプのカラムにも情報が表示される(図表17)。
「すべて」は、アクティブ・ジョブ処理のすべてのカラムの情報を返す。そのためアクティブ・ジョブ数が多い場合には、表示されるまでに時間を要する。
Navigator for i のアクティブ・ジョブの表示の中で、5250エミュレータからのWRKACTJOBコマンドにはサポートされていない機能として、「ジョブ待機データの調査」がある。
アクティブ・ジョブの表示画面で、左上の「アクション」からメニューを表示して、「ジョブ待機データの調査」を実行する。または、各ジョブから右クリックでポップアップ・メニューを表示し、「パフォーマンス」「ジョブ待機データの調査(新規タブ)」を実行する(図表18)。
すべてのジョブに対して、「ジョブ待機データの調査」を実行した結果は、グラフで表示される(図表19)。
グラフの上をポイントすると、それぞれの待機項目に対する時間がポップアップ表示される(図表20)。
またグラフの待機項目を選択もしくは選択解除することで、それぞれのジョブに対してどのような待機が影響しているのかを確認できる。たとえば図表21は、ジャーナルの時間のみを選択した場合である。
このようにNavigator for i のアクティブ・ジョブから、簡易的にパフォーマンス状況を調査できるようになる。
システム操作員メッセージ
図表6のシステム・タスクから「システム操作員メッセージ」を実行することで、QSYSOPRメッセージの一覧が表示される(図表22)。
デフォルトでは、すべてのメッセージが表示される。メッセージ・リストの上部にある詳細で、「照会メッセージ」を選択すると、未応答のメッセージのみを表示できる。多くのメッセージの中から、簡単に未応答メッセージを確認し、応答できる(図表23)。
未応答メッセージから右クリックでポップアップ・メニューを表示、あるいは左上のアクションからポップアップ・メニューを表示して、「応答」を選択することで、メッセージに対して応答できる(図表24)。
また画面左上にあるアクションからポップアップ・メニューを表示して、「選択項目のエクスポート」あるいは「すべてエクスポート」を選択すると、メッセージの内容をCSVファイルに出力できる(図表25)。
NVMe 情報の表示
Power10 サーバーでは、システム本体の内蔵ディスクは NVMe U.2 ドライブであり、SAS ドライブは EXP24SX 拡張ドロワーでの構成のみである。EXP24SX および SAS アダプタやドライブは 2024年1月までに営業活動を終了する予定である。
今後は NVMe U.2 ドライブ構成となるので、NVMe の情報、とくに書き込み限界や温度などの情報を確認する必要がある。
5250エミュレータのディスク関連コマンドは、NVMe の Namespaceを従来の SAS ディスクとして情報表示するのみで、NVMe 固有の情報には対応していない。NVMe 固有の情報は、Navigator for i で確認できる。NVMe 情報の表示は、図表6のシステム・タスクから「NVMe 装置」を選択する。
NVMe デバイスの書き込み限界は、Life Remaining (%) カラムで確認できる(図表26)。
NVMe情報の表示も、右上の SQL アイコンから SQLステートメントを参照する。このSQLステートメントを保存しておくことで、Navigator for iを使用しなくても、ACSのSQLスクリプト実行で定期的に確認できる。
カラムの選択とフィルター機能
このほかにも、エミュレータからのコマンド実行では利用できない機能例として、カラムの選択とフィルター機能がある。
Navigator for i を実行した結果のリスト表示の画面では、画面右上に点が縦に3つ並んで表示されている(図表27)。
この3つの点にマウスを移動すると、「カラム数」と表示される。これを選択することで、表示に使用されるカラムを選択できる。
図表28はアクティブ・ジョブの画面のカラム選択である。
ここでカラムを選択したり、表示の順序を変更できる。カラムが表示される順序は、実際に表示されている画面からカラムをドラッグすることで変更することもできる。
また、各カラムにはフィルターが用意されており、表示したい対象をジョブ名やユーザー名などで限定できる。さらに表示される順序を昇順、降順で並べ替えできる。たとえばCPU使用率が高い順に表示する、といった並べ替えが可能となる。
このように、表示される情報を自由にカスタマイズできるのは、5250エミュレータのコマンド実行ではできないNavigator for i の特徴であり、これにより必要な情報を素早く選択できる。
著者
三神 雅弘 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス
アドバイザリー Power テクニカルスペシャリスト
1989年、日本IBM入社。AS/ 400のテクニカル・サポートを担当。日本IBM システムズ・エンジニアリングへの出向を経て、2004年よりテックライン、2016年よりビジネス・パートナー向けテクニカル・サポート、2018年よりIBM iブランド業務を兼任している。
[i Magazine 2023 Summer(2023年8月)掲載]