IBM iのお客様は現在、急速に変化するビジネス環境への対応と進化するIT技術の活用で、かつてないチャレンジの時期を迎えています。また、業務のさらなる効率化、業務プロセスの革新、DX、モダナイゼーションと、さまざまな課題が山積しています。
菅田は最初に、「1988年が何の年だったか、ご存じでしょうか」と話し始めました。
1988年は、IBM iの前身であるAS/400が誕生した年です。そしてその前後の数年間に、「オフコン」と呼ばれるコンピュータが続々と登場した年でもあります。日本の企業はその当時、「OA(Office Automation)化」と呼ばれる基幹業務・主要業務の情報化に走り出していました。AS/400はそのさなかに誕生したのです。
それから30余年、「オフコン」と呼ばれたコンピュータの中で今も機能拡張を継続しているのはIBM iだけで、そのほかはすべて淘汰され市場から姿を消してしまいました。
IBM iとその他の「オフコン」は、何が違っていたのでしょうか。
菅田は、「AS/400・IBM iが他に類を見ないITシステムだからです」と、次のように説明します。
「AS/400は“ビジネス業務に最適化させる”という命題の下、IBMが開発したプラットフォームです。その革新的なアーキテクチャは現代のITインフラとしても遜色がなく、そのままIBM iに受け継がれています。つまりITのトレンドに合わせてタイムリーに機能を拡張し、その時代のビジネスに必要な機能を備えるという命題をもって誕生したのがAS/400であり、その命題を堅持し改良と革新を続けた来たのがIBM iなのです。IBM iではグリーンスクリーンと呼ばれる5250画面が、開発から30年以上経った現在も変わらずに使えます。その一方でRやPythonなどの最新テクノロジーも使えます。時代のビジネスに必要な機能を備えるという命題を現在まで堅持し貫いてきたのが、唯一IBM iだけだったのです」
ここで菅田は、IBM iとx86系システムの比較へと話を進め、「IBM iがなぜDXに最適なプラットフォームなのか」を説明しました。
現在、IBM i以外のプラットフォームでは新しいマシンやOSが登場するたびにアプリケーションの改修などが必要となり、多くのワークロードがかかっています。そしてその典型例と言えるのが、x86系システムです。
x86系システムではハードウェアやOSの世代が更新されるたびに、現行システムの移行が必要になります。つまり4~6年ごとに、使用中のシステムの改修が必要になり、多大のコストとワークロードがかかるのです。
これに対してIBM iは資産継承性が高いアーキテクチャを備えるため最小限のワークロードで済み、時には何も手を加えずに移行できることも少なくありません。
「以前のようにビジネス環境が比較的安定している時期であれば、従来の焼き直しの移行でもビジネスニーズに合致していました。しかし現在のように変化が速くその中で競争力を維持するには、ITの積極的な活用・投資・開発がつねに欠かせません。そのような時にシステムの更改が毎回大変なプラットフォームでは、新しいことへの投資は困難です。IBM iはハードウェアが変わろうともOSがバージョンアップしようとも資産をそのまま継承でき、新しいテクノロジーとも共存可能です。ビジネス的な観点で変えなくてもよいところはそのまま継承し、変更すべきところ、DXしたいところに注力できます。IBM iは今の時代にこそ最適なプラットフォームであり活用すべき基盤であると、オムニサイエンスでは考えています」
またそれに加えてIBM i用ツールの自社開発にも力を入れ、2014年にBIツールの「PHPQUERY」、2021年にIBM iと他システムとの連携を容易にする「API-Bridge」を開発しました。さらにこのほかにも「CSV-Bridge」や「XML-Bridge」「OmniFunctions」などIBM iを使いやすくする製品を多数開発し、ご提供しています。
当社でこれら製品の開発を担当しているのは、平均年齢30歳という若いエンジニアたちです。菅田も2022年3月まで日本IBMでIBM i・Powerサーバーのテクニカル・セールスに従事していたエンジニアで、4月から当社のCTOとして製品・技術開発をリードしています。
そして、このようなバックグラウンドをもつ当社が、IBM iでDX戦略を推進するためのビジョンとして掲げているのが、Legacy with DXなのです。
菅田は、「お客様の企業資産であるレガシーな仕組みを賢く使い、それを真に価値のあるITシステムへと成長させて次世代に継承する、というのが、Legacy with DXに込めた当社の思いです。進化するIBM iを従来のまま使い続けるのではなく、新しいテクノロジーにチャレンジしてポテンシャリティを最大限に引き出していくことこそが、Legacy with DXの考え方です」と説明します。
そしてLegacy with DXの軸は「クラウドとAPI」と続けます。
IBM i環境では、2019年からIBMのクラウドサービス「Power Virtual Server」(以下、PowerVS)が利用できるようになっています。日本では2020年に東京リージョン、2021年からは大阪リージョンでもサービスが提供されています。
オムニサイエンスではPowerVSのスタート当初から、このサービスに注目してきました。その理由を菅田は、次のように説明します。
「IBM iアプリケーションへの新機能の実装は、ITリソースの調達も必要になることが多いため、システム更改のタイミングで行うのが従来からの通例でした。しかし市場の変化が激しい今、次のシステム更改まで実装を先送りするのは、企業競争力の維持・向上の観点では遅すぎます。その点PowerVSであれば、必要な時にITリソースを調達でき、新機能の実装をスピーディに行えます。当社がPowerVSに注目するのは、PowerVS自体がオンプレミスのIBM iを超える機能・サービスを備えるのと同時に、クラウドのベネフィットをフルに活用できるからにほかなりません」
実際、当社はPowerVSの活用にいち早く取り組み、日本初のオンプレミスからPowerVSへのIBM iシステムの本番移行をご支援しています(ブラブジャパン株式会社様の事例はこちら)。
そして2022年6月には「PVS One」という、PowerVSをご利用になるお客様向けのご支援サービスを開始しました。
PVS Oneは、オンプレミスからPowerVSへの移行支援や、PowerVS上での運用・監視サービスをご提供するものです。オンプレミスにおけるハードウェア/OSのリプレース作業、本番切り替え支援、運用中の支援サービスのクラウド版です。またPowerVSへの移行後は、インフラの運用自動化や外部SaaSとのAPI連携などクラウドならではの基盤構築・運用もご支援しています。
Legacy with DXのもう1つの軸であるAPIに関しては、2021年に「API-Bridge」の提供を開始しました。既に複数のお客様が本番システムで利用され、多数のお客様が検討中です。
API-Bridgeについて菅田は、「API-Bridgeは、IBM iでAPIを使いやすくするための製品で、IBM iをAPIサーバーに、あるいはAPIクライアントにできるツールです。Webの世界でデータやサービスの連携用に用意されているAPIを、IBM iでも自由に同等に使えるように機能性と使いやすさを追求した製品です」と語り、次のように基調講演を締めくくりました。
「IBM iのシステム間連携では従来、ODBCやJDBCが多用されてきました。API-Bridgeでもデータベースやテーブル、レコードレベルの連携が可能ですが、API-Bridgeではそれに加えて、RPGやCOBOL、CLなどのプログラムを外部からコールし、その結果をJSONという標準のデータ形式で返すことができます。しかもODBC・JDBCのようにIBM i用のドライバーを用意する必要はありません。これによってIBM i上のビジネスロジックやプログラムを簡単に公開でき、他のプラットフォームとの自由なやり取りが可能になるのです。つまりIBM iのDX戦略に欠かせないテクノロジーがAPIであり、その利用を容易にするのがAPI-Bridgeなのです。API-BridgeはIBM iのDX戦略に欠かせないツールであると、オムニサイエンスでは確信しています」
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