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IBM i Merlin V2、最新機能解説 ~Single Node OpenShiftのサポート、Visual Studio Code互換のIDE、デバッグの機能拡張、ライセンスの簡素化など

Text=児玉 尚子

IBM i Merlin V2登場

IBM i Modernization Engine for Lifecycle Integration (以下、Merlin) V2が発表され、2024年6月14日に利用可能となった。

MerlinはRedHat OpenShift 上で稼働し、ブラウザベースの統合開発環境(Visual Studio Code互換)、ソース制御管理機能のGit、およびアプリケーション・ビルド機能としてのJenkinsを統合したIBM i のアプリケーション開発環境である。

さらに、固定フォーマットのRPGをFree Format RPGに変換する機能やアプリケーション影響分析などのモダナイゼーション機能を統合している。


Single Node OpenShiftのサポート

Merlin V2では、Red Hat OpenShift Container Platform v4.14 以降でのSingle Node がサポートされる。

一般的にOpenShiftでは、クラスタを構成するためにMaster NodeやWorker Nodeといった複数のノードが必要とされるが、Single Node OpenShiftでは1ノードでOpenShiftの構成が可能となるので、可用性があまり求められないケースでも小さく始められる。

既存のIBM i 環境に空きリソースがある場合、それを有効活用してMerlinを構成することも考えられる(図表1)。

図表1 Menlinのサンプル構成

Merlinの統合開発環境

Merlinの統合開発環境(IDE)は、IBM i Developerというツールで提供されている。

Merlin V2では図表2のように、1つのMerlinの環境で、1つのプロジェクトにIBM i Developerをデプロイし、各開発者はそれぞれWorkspaceを作成し、使用する。

図表2 Merlinの統合開発環境

IBM i の開発環境として、あらかじめサンプルのWorkspaceが用意されており、「IBM i Developer」または「IBM i Developer and demo application」を選択して作成する(図表3)。

図表3 IBM iの開発環境を選択

IBM i Developerは、Code for IBM iやDb2 for iなどすべての IBM i 開発ツール(図表4)を含むクリーンなワークスペースを作成する。

図表4 IBM i Developer インストール済み拡張機能

一方のIBM i Developer and demo applicationは、IBM i 開発ツールとともに Git からロードされたサンプルソースが取り込まれたワークスペースを作成する。 

サンプルソースには、ILE RPGやSQL、ディスプレイファイルがある(図表5)。

図表5 IBM i Developer and demo applicationのサンプルソース

開発者は複数のWorkspaceを作成できるが、一度に実行できるのは1つのWorkspaceのみである。

Code for IBM i の活用

Merlin V2では、Visual Studio Codeとの互換性がある統合開発環境となり、Code for IBM i の拡張機能がデフォルトでインストールされている。

Code for IBM iは、Visual Studio CodeでIBM iのプログラム開発を可能にする開発環境であり、近年、IBM i の開発環境として利用者も増えている。

また、Db2 for iの拡張機能もデフォルトでインストールされており、Merlin IDE から SQLの作成および実行が可能となる。図表6は、現行のグループPTFの情報をSQLで呼び出し、表示している例である。

図表6 現行のグループPTF情報をSQLで呼び出して表示


デバッグの機能拡張

Merlin V2では、IBM i プログラム・デバッグが改善され、サービス・エントリー・ポイントのデバッグ機能が追加された。

IBM i Project Explorerのプロジェクトを使用して、IBM iに接続し、サービス・エントリー・ポイントを設定する。ライブラリーリスト、またはオブジェクトライブラリーからデバッグするプログラムを選択すると、デバッグのポップアップメニューから2つのデバッグ機能を使用できる。すなわちMerlin 1.4.0で使用可能となったバッチ・デバッグと、Merlin V2で使用可能となったサービス・エントリー・ポイント設定の2つである。

サービス・エントリー・ポイントはRPG、COBOL、C++、および CL で作成されたプログラムを簡単にデバッグできるよう設計されている。

新しいサブスクリプション・ライセンス

Merlin V2では、Merlin V1とは異なり、無期限ライセンスはなく、サブスクリプション・ライセンスのみとなる。Merlinのライセンスは、Virtual Processor Core (VPC)単位で設定されている。

Merlinでは、開発者1人(Workspace1つ)当たり1 VPCライセンスが必要となる。 つまり、Merlin のライセンスの考え方は開発者単位となる。

Merlin V2では、ここまで紹介したSingle Node OpenShiftのサポート、Visual Studio Code互換のIDE、デバッグの機能拡張、ライセンスの簡素化のほかにも、ARCAD 機能のアップデートなどがあり、より使いやすい開発環境になっている。

Merlin V2のセットアップ方法や新しい機能の使用方法については、下記リンク先のガイドを参照されたい。英語サイトではあるが、画面なども含め、詳細に記載されている。

◎IBM i Merlin使用ガイド
https://ibm.github.io/merlin-docs/#/?id=main

IBM iアプリケーション開発のモダナイゼーションを加速させる開発環境として、ぜひ新しいMerlin V2を活用してほしい。

著者
児玉 尚子氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 Power テクニカルセールス 
アドバイザリーIT スペシャリスト 

2009年に入社以来、IBM i のテクニカル支援に携わる。大阪事業所で関西、西日本の中堅企業ユーザーを担当。現在は、IBM Powerのパートナーに向けた技術支援などを担当。

[i Magazine 2024 Autumn 掲載]

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