IBMは5月7日、IBM i 7.5 テクノロジー・リフレッシュ 4(TR4)および 7.4 テクノロジー・リフレッシュ(TR10)を発表した。
提供予定日は6月14日(IBM Rational Developer for iを除く)。新たにリリースされたPower S1012を含むIBM Power10、Power9、Power8を搭載した一部のIBM Powerサーバーでサポートされる。
今回のTRではセキュリティの強化、Merlinの新バージョン、Navigator for iおよびACSの新機能、RPGの機能強化、HAおよびDRの機能強化、SQLベースの新しいデータベースサービスなどが提供されている(Merlinについては別記事で解説)。
IBM i 7.5 TR4と7.4 TR10で提供される新機能はすべて同じである。なので一方のバージョンで利用可能な機能が他方のバージョンで利用できないというような事態は発生しない。新機能の多くはグループPTFにて提供される。
主な機能強化点には、以下がある。
セキュリティ面の強化
IBM i オプション 35 として提供される IBM i CCA CSP(IBM i Common Cryptographic Architecture Cryptographic Service Provider)が強化され、IBM 4769 Cryptographic Coprocessor を構成するための CHIM リリース 3.3.8 をサポートする。
IBM CHIM を使用すると、IBM i on Power サーバーに配置されたリモート IBM PCIe 暗号化コプロセッサを安全に管理できるようになり、セキュリティ対策が大きく向上する。
IBM Navigator for i
IBM Navigator for i はIBM i用のWebベースのインターフェースである。2021年に大きな改善が実施されたのに続き、今回のTRでも種々の機能強化が行われた。なかでも注目されるのは、Administration Runtime Expert (ARE)のサポートである。
主な機能強化点には以下が挙げられる。
◎一般的なナビゲーターの強化
GUI全体がAngular 17に更新された。シンプルで現代的なGUI外観のためのスタイル変更、
GUIノード認証のためのサインオン・プロンプトの改善などをサポートする。
◎ネットワーク関連
NFSサーバー(ネットワーク・ファイル・サーバー)の改良やTCP/IPサーバーとIAS/IWSサーバーの機能追加を提供する。
◎モニター
モニタージョブはJava 11または17が利用可能になった。
◎パフォーマンス
パフォーマンス・データ・インベスティゲータ(PDI)を提供。JBVPDLY の新しいフィールドが追加され、CPU Utilization と Waits Overview のデータが提供される。
◎高度なジョブスケジューラ
独立補助ストレージプール(IASP)を完全サポートする
◎Administration Runtime Expert (ARE)
AREのコンソールサポートがNavigatorに含まれる。GUIコンソール・ノードから複数のIBM iエンドポイント・ノードへのテンプレートの検証、テンプレート検証のスケジュール、問題が発生したときに修正アクションを実行する。
ACS
IBM i Access Client Solutions 1.1.9.5 が更新された。。
◎SQL スクリプトの実行
Visual Explain に以下のように機能強化された。
・新しいツールバー・ボタンにより、ユーザーがクエリー最適化の洞察の強調表示を簡単に調整可能になった。
・実行可能なダイアグラムの凡例を提供する。
・アクション・メニューが再配置され、グラフ全体に適用できるアクションと、選択したアイコンに固有のアクションが明確になった。
・多数の新しい「例から挿入」オプションが追加された。
◎スキーマ
テーブルとビューのSQLデータ操作言語(INSERT、UPDATE、DELETE)文を生成するアクションを強化した。またテーブルとビューのSQL言語(INSERT、UPDATE、DELETE)文を生成するアクションが強化さた。
IBM i 統合 Web サービス・サーバー(IWS)
IBM Remote System Explorer API (RSE API) は、SQL テーブル、統合ファイル・システム・ファイル、CL コマンド、ジョブなど、クライアントが IBM i 上のさまざまなコンポーネントと対話できるようにする REST API のコレクションである。
今回はシステム上のデジタル証明書を管理する機能が強化され、証明書のエクスポート、インポート、一覧表示、およびアプリケーションIDの証明書への関連付けなどがサポートされる。またTLSシステム情報を取得するためのAPIセットも新たにサポートされる。
クラスター管理ドメイン
権限を利用するプログラムを開発する際に、監視対象リソースを追加、削除、または変更する権限がないユーザーに対しても、これらのアクションを実行可能にする。
Db2 for i
ANY_VALUE 組み込み集約関数が追加され、よりシンプルなグループ化クエリーを構築できるようになった。
またCREATE ALIAS (SQL) 文で、キーワード *LAST をメンバー名として指定できるようになり、 SQL ユーザーが、最近作成されたメンバーのデータに簡単にアクセス可能になった。
IBM i サービス
以下のような新しい機能がサポートされた。
DB_TRANSACTION_RECORD_INFO
トランザクションに対して提供される新しいテーブル関数で、データベース・ファイル・レコードへの保留中の変更に関する詳細情報を返す。
DB_TRANSACTION_OBJECT_INFO
トランザクションに対して提供される新しいテーブル関数で、保留中のオブジェクトの変更に関する包括的な詳細を返す。
MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART
監査ジャーナルの詳細を取得、調査、維持するための機能をセキュリティ監査に提供する新しいプロシージャー。
AUDIT_JOURNAL_DATA_MART_INFO
MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART を使用して作成された監査ジャーナル・データ・マートの存在と状態を把握するために使用される新しいビュー。
CLEAR_TRACKED_JOB_INFO
オプションの入力パラメータが追加され、ジョブ追跡ファイルから削除する特定の追跡ジョブ情報を正確に指定できるようになった。
SYSTOOLS
SYSTOOLSの強化点は、以下のとおりである
SPECIAL_AUTHORITY_DATA_MART
マテリアライズド・クエリー・テーブル(MQT)として実装されたデータ・マートで、ユーザーの特別権限に関する情報が含まれている。このデータ・マートは、特別権限の管理が簡単で効率的なポイント・イン・タイム表示をクライアントに提供する。
GENERATE_SPREADSHEET
SQL ユーザーが IFS 内でスプレッドシートを作成できるようにするスカラー関数が改良された。
SEND_EMAIL
電子メールを送信する使いやすいスカラー関数が複数の方法で拡張され、 クライアントが複数の相手に複数の添付ファイルを付けて電子メールを送信できるようになった。
CHECK_PRODUCT_OPTIONS.
CLコマンドであるCheck Product Option (CHKPRDOPT)の代替となる新しいテーブル関数。
監査ジャーナル・ヘルパー関数
特定の監査ジャーナル・エントリー・タイプ用の新しいテーブル関数がSYSTOOLSに追加され、Navigator for iまたはSQLを使用したセキュリティ強制のアーカイブが可能になった。
監査ジャーナル・ヘルパー関数のパフォーマンス
既存のテーブル関数のサブセットが調整され、クエリー時のパフォーマンスが向上した。
Code for IBM i
Code for IBM i はMerlinと融合する方向へ機能強化を続ける。IBM i アプリケーション開発者の現在のニーズに対応するように進化し、スタンドアロン・コンポーネントとして、または RPG プログラムの埋め込み部分として、コア RPG コードと SQL の両方を作成できるようになった。
またデータベースも拡張された。Visual Explain が Database Extension に追加されたことで、開発者の生産性が大幅に向上した。
IBM Rational Development Studio for i
IBM Rational Development Studio for iは、RPG 用に以下の2つの新機能を追加した。
1つ目は、CONST キーワードのサポートによりデータ構造とスタンドアロン・フィールドで使用可能になったこと。
2つ目はSND-MSGの機能強化である。これにより、*COMP(完了)、*DIAG(診断)、*NOTIFY(通知)、および *STATUS(ステータス)といった追加のメッセージ・タイプを指定できるようになった。またPGMBDY(プログラムの呼び出し元に送信)、*CTLBDY(アクティブ化グループ制御境界に送信)、*EXT(外部メッセージ・キューに送信)などの%TARGET値も指定可能。
PowerHA
IBM PowerHA SystemMirror for i の機能強化には、IBM FlashSystem 非同期ポリシーベース・レプリケーションとの統合、強化された管理ドメインの統合、新しいSQLサービス、Webユーザー・インターフェースの強化などが挙げられる。
BRMS
BRMSの機能強化には、以下の2点が挙げられる。
1つは3592-70Fテープ・ドライブおよびメディアに対するBRMSサポートを追加したこと。もう1つは、テープと仮想テープのソフトウェア・データ圧縮をサポートするBRMSの機能を強化したことである。
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