IBMは10月8日、IBM i 7.5 テクノロジー・リフレッシュ 5 (以下、IBM i 7.5 TR5)およびIBM i 7.4テクノロジー・リフレッシュ 11(以下、IBM i 7.4 TR11)の概要を発表した。提供開始は11月22日を予定している(ただし、IBM Backup, Recovery and Media Services for i、IBM Rational Developer for i 、IBM PowerHA SystemMirror for i は除く)。
IBMは春と秋の年2回、テクノロジー・リフレッシュ(TR)というグループPTFにより、IBM iの機能強化を実施している。春のTRは今年5月7日に発表され、6月14日から出荷された。今回は今年2回目、秋のTRとなる。
IBM i 7.5 TR5 およびIBM i 7.4 TR11は、IBM Power10 および IBM Power9ベースのプロセッサを搭載したIBM Powerでサポートされている。
主な機能強化点は以下のようになる。
IBM Navigator for i
IBM Navigator for i の機能拡張は、以下のとおりである。
ライセンス情報
ダッシュボードとシステム・ホームページでは、今後期限切れとなるオペレーティング・システムのサブスクリプションについて明確に通知されるようになった。
一般的な IBM i サブスクリプションとシステム製品ライセンスは、カスタマイズ可能なしきい値に対して監視される。これらのしきい値は、接続プロパティ>しきい値で実行できる。
Administration Rumtime Expert (ARE)
新しいテンプレートをサポートした(基本編集および再構築機能を含む)。
Web 管理 アプリケーション・サーバー
・サーバー・プロパティの表示と変更の強化
・ログ・プロパティの表示と構成
・トランスポート・レイヤー・セキュリティ(TLS)プロトコルの構成および削除ウィザードの搭載
・サーバーリストのソート機能
・Web管理サーバーの再起動アクション
モニター
基本モニタージョブは、Java 11または17を利用できるようになった。
セキュリティ
監査ジャーナルのエントリーサポート、データマートコンテンツの制御を強化するユーザー定義のフィルタリング、暗号化コプロセッサの管理、IBM Navigator for i内での構成を含むデータマートプロパティなどを拡張。
パフォーマンス
ASP グラフ
拡張された ASP グラフに、独立 ASP またはユーザー ASP のビジー率、利用率、および応答時間の時間経過による詳細を確認できるようになった。これらのグラフは、新しいモニターベースの SMASP ファイルを活用し、モニター・パッケージで利用可能である。
CPU 使用率
アクティブなジョブ数に関連するCPU使用率を導入。
ドリルダウン・チャート
事前開始ジョブによるCPU使用率のドリルダウン・チャートを提供。
ブックマーク
出荷時のMTUブックマークを復元するには、ブックマークの管理>アクション>出荷時のブックマークの復元で実行。
IBM i Access Client Solutions (ACS)
IBM i Access Client Solutions 1.1.9.6は、以下のような機能強化を実施している。
SQL スクリプトの実行
・Insert from Examples(例からの挿入)内のカスタム・ユーザー・サンプルの管理を拡張し、削除および置換オプションを追加。
・ACS IFS パネルから RSS パネルへの.sql ファイルのドラッグ&ドロップが可能に。
・IBM 提供の Insert from Examples(例からの挿入)を追加。
・ファイル・セレクター・ダイアログの操作性を向上(Windows のみ)。
・「プロジェクト(Project)」を介したタブ・グループの保存と管理を実装。
スキーマ
新規関数および新規プロシージャー・ダイアログに PROGRAM_NAMEを追加した。
データ転送
IBM iのデータベース・ファイル作成時に、スキャン結果をダブルクリックして詳細を表示する。
5250エミュレータ
・画面アーカイブにタイムスタンプを追加。
・アーカイブ・ビューアーにタイムスタンプ表示を組み込み。
・保存した画面イメージのファイル名にオプションでタイムスタンプを含めることが可能に。
・アーカイブ変換用のコマンドライン・プラグイン「scrconv」を導入。
全般的な機能強化
コマンドライン・ツールとして、「cfg」プラグインを更新し、コンソール構成をサポート。
パスワード変更パネルに直接アクセスするためのオプション「/gui」を「pwchange」プラグインに追加。
Db2 for i
Db2 for i の機能拡張は、以下のとおりである。
GENERATE_UUID
Universally Unique Identifier (UUID) バージョン 4のフォーマット作成を簡素化する組み込みスカラー関数 GENERATE_UUIDを追加。
GENERATE_UUID_BINARY
Universally Unique Identifiers (UUID) バージョン 4のバイナリーエンコードを効率的に生成する組み込みスカラー関数を追加。
SQLユーザー定義テーブル関数(UDTF)
NOT.FENCEDコードを生成するオプションを提供することでパフォーマンスを向上。
Db2 for i サービス
MTI_INFO テーブル関数
SQL パーティショニング・テーブル上に構築されたMaintained Temporary Index(MTI)の詳細を返す際に、メンバー名情報を含むように拡張された。
IBM i サービス
IBM i サービスの機能拡張は、以下のとおりである。
MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART
このプロシージャーは監査ジャーナル・データを効率的に取得、分析、管理するための、ユーザーベースのフィルタリング・オプションを強化し、ストレージ要件を削減する。
AUDIT_JOURNAL_DATA_MART_INFO
このビューは、MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MARTを使用して作成された監査ジャーナル・データ・マートに適用されたユーザーベースのフィルタリングを可視化する。
COMPARE_IFSツール
IFSオブジェクトの追加属性を比較できるように拡張された。
ACTIVE_JOB_INFO関数
SQL Query Engine (SQE) QROハッシュとユニークなプラン識別子を提供し、アクティブなSQLクエリーのパフォーマンス分析を実行できるようになった。
SERVICE_TOOLS_SERVER_INFO
このビューはサービスツールサーバー構成の単一行のサマリーを提供し、STRSSTとDSTのConfigure Service Tools Server LAN Adapterで利用可能な情報をミラーリングする。
IBM System limits Alerting
2つの追加システム・リミットに対する構成可能なアラートが追加され、IBM i 管理者によるシステム・リソースの管理が強化された。
SYSTOOLS
SYSTOOLSスキーマの機能拡張は、以下のとおりである。
SEND_EMAIL
電子メールを使いやすく送信するスカラー関数のSEND_EMAILがさらに拡張され、ユーザーがHTMLまたはXMLコンテンツを使用した本文の電子メールを送信できるようになった。
IFS_ACCESS
IFSプログラマー向けのSQLインターフェースを提供しており、IFSファイルが存在するか、またはユーザーが既存のIFSファイルに対してユーザー指定の権限レベルを持っているかどうかを判断するために使用できるサービスを提供している。
FIRMWARE_CURRENCY
IBM Powerのファームウェアの修正レベルとIBMが現在提供しているレベルを比較するライブビューで、IBM管理者の作業を支援するために追加の列を返すように拡張された.
新しいSQLインターフェース
Validation List (*VLDL)処理用の新しいSQLインターフェースが追加され、IBM i APIの代替手段を利用できるようになった。
POWER_SCHEDULE_INFO
電源オフ/オンのスケジュール用の IBM i CL コマンドの強力な代替手段を提供する。
CONFIGURATION_STATUS
デバイスの存在とステータスを迅速かつ簡単に判断するためのCLコマンドであるRetrieve Configuration Status (RTVCFGSTS)のSQL代替手段を提供する。
監査ジャーナル・ヘルパー関数
特定の監査ジャーナル・エントリー・タイプ用の新しいテーブル関数がSYSTOOLSに追加され、IBM Navigator for iまたはSQLを使用したセキュリティの適用をアーカイブできるようになった。
Code for IBM i
Code for IBM iの機能拡張は、以下のとおりである。
Visual Studio Code(VS Code)
Db2 for i Extension
ノートブックのサポート、複数の結果セット、SQLエラー・ロギング・ファシリティ(SELF)ビューの統合が含まれる。
Code for IBM i
デバッグ・サービス管理、言語サポートの拡張、ツールチップの強化、DBCS処理の改善、表示、物理・論理ファイルのローカル・ワークスペース・コンパイルを導入。
RPGLE
rpglint コマンドライン・インターフェースの新バージョンをリリース。
IBM i ライセンス・プログラム製品
IBM PowerHA SystemMirror for i
IBM PowerHA SystemMirror for i 7.5 TR5、 およびi 7.4 TR11は、IBM Power Virtual Server (以下、PowerVS) との戦略的統合を実現している。
以前は、PowerHA SystemMirror for i は、地理的ミラーリングなどのストレージに依存しないテクノロジーを利用する場合に、PowerVSで利用可能であった。地理的ミラーリング(マルチターゲット地理的ミラーリングを含む)は、クラウドおよびハイブリッドクラウド環境の両方に対して引き続きソリューションを提供するが、新しい統合により、PowerVS内で追加の機能とオプションが提供される。
これにより、PowerHAは、IASP(Independent Auxiliary Storage Pool)ベースのレプリケーションおよびスイッチング技術をPowerVSに統合するようサポートされる。これには、IASP用のグローバルレプリケーションサービス(GRS)が含まれる。
グローバルレプリケーションサービス(GRS)
GRSとの統合により、PowerHAによるPowerVSのSANベースのレプリケーション管理が可能になる。GRSは、PowerVSの2つのデータセンター間で非同期レプリケーションを提供する。
これにより、オンプレミス環境で使用されるGlobal Mirrorテクノロジーと同様の管理手法が提供される。
IBM Backup、Recovery and Media Services for i (BRMS)
IBM Backup、Recovery and Media Services for i (BRMS) のサブスクリプション期間では、BRMS SQL サービスが強化される。
QUSRBRM.CG_BACKUP_STATUS ビューにアーカイブ・コントロール・グループ・データが追加された。このデータはPTFの適用後とコントロール・グループの実行後に追跡される。
RSTLIBBRM コマンドは、複数のライブラリをリストアする場合や汎用的なリストアを使用する場合に、リストア完了時に単一の RSTDFROBJ DFRID(Q1ARSTID)コマンドを実行することで、リストアのパフォーマンスを最適化する。
RSTLIBBRM コマンドは、汎用リストア時にシステムに存在しないライブラリをリストアするように拡張された。 以前は、Library (LIB)パラメータに汎用的なライブラリ値を使用した場合に、既存のライブラリのみがリストアされた。
IBM Rational Development Studio for i
IBM Rational Development Studio for iには、新しい RPGの機能が導入された。
2桁の年に関する警告
ソース・コードで2桁の年が使用されている場合、コンパイル時に警告またはエラーを追加する。
新しい組み込み関数
最大および最小のフィールド値をそれぞれ返す%HIVAL 関数と%LOCAL 関数を導入した。
%PROC の機能強化
プロシージャーのON-EXITセクション内で、%PROC組み込み関数が使用可能になった。
IBM Rational Developer for i (RDi)
RDi 9.8.0.3 では、以下のような機能強化が実施された。
統合ファイル・システム (IFS) の改善
RDiは、初期のクエリー応答時間を高速化することで、IFS のパフォーマンスを大幅に向上した。さらに新しいテーブル・ビューにより、直感的な IFS ナビゲーションが可能になった。
差分比較
RDiは、9.8.0.2で改良されたインターフェースをもとに、デルタ比較のオプションを拡張した。既存のLPEX比較に加えて、ユーザーはRDiメンバー比較を選択できるようになり、柔軟性が向上した。
ILE Docsと@TAGのサポート
ILE Docのリスト内のRDiタグにF1ヘルプを提供する。
JVMのサポート
・IBM Semeru Java ランタイムをプラグイン・モデルに移行し、JDK フォルダを改良する。RDi 9.8.0.3 で古い JDK フォルダのクリーンアップを開始。
・言語およびプラットフォームの更新。
・RPG のモダナイゼーションに向けて、2024 年秋の言語サポートを導入。
・SQL ACS フォーマットのサポートを更新。
・JVM 11 および JTOpen を統合
このほか、統合Webサービス・サーバー(IWS)にも機能拡張が実施されている。
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