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IBM i 7.5 TR4とIBM i 7.4 TR10、最新機能解説 ❶ ~Db2 for i、IBM i サービス、RPG(5770-WDS)の機能拡張

Text=澤田 英寿(日本IBM)

IBMは今年5月7日、IBM i 7.5 テクノロジー・リフレッシュ 4(TR4)および7.4 テクノロジー・リフレッシュ 10(TR10)を発表し、6月14日から出荷を開始した。今回のTRではセキュリティの強化、Merlinの新バージョン、IBM Navigator for iおよびACSの新機能、RPGの機能強化、HAおよびDRの機能強化、SQLベースの新しいデータベースサービスなど、さまざまな機能強化が実施された。本特集ではそのハイライトを解説する。

IBM i 7.5 TR4とIBM i 7.4 TR10 が登場 

2024年6月14日に、 IBM i 7.5 Technology Refresh 4およびIBM i 7.4 Technology Refresh10が出荷された。

IBMは年2回(春と秋)、新機能の拡張をTechnology Refresh(以下、TR)というグループPTFで提供している。今回の機能拡張は、2024年春のTRとなる。IBM i 7.5 TR4とIBM i 7.4 TR10は、同等機能を提供している。

IBM i 7.5 TR4は、TRのグループPTF SF99957 レベル4で提供される。このグループPTFには、今年発売された新しいサーバーであるIBM Power S1012や、新1Gb イーサネット・アダプターの対応なども含まれている。

ただ個々の新機能は個別のグループPTFで提供される場合が多いので、個別のグループPTFも最新にしておくよう推奨する。

IBM i 7.5 TR4の機能拡張は、誌面の関係ですべては紹介できないので、ここではDb2 for i、IBM iサービス、RPG、IBM i統合Webサービス・サーバー(IWS)、IBM Navigator for iの機能拡張を主体に解説する。

Db2 for iの機能拡張

Db2 for IBM i 7.5 の機能拡張は、Db2 for iのグループPTF SF99950 レベル7で提供される。今回のDb2 for iの拡張機能でも、いろいろなSQL機能が強化されている。

たとえばANY_VALUE 組み込み集約関数が追加され、開発者はよりシンプルなグループ化の検索が可能になった。CREATE ALIAS文では、キーワード*LASTをメンバー名として指定できるようになり、最近作成されたメンバーのデータに簡単にアクセスできる。

ANY_VALUE組み込み関数の使用例

PostalCodeが都市と州を一意に識別すると仮定 (米国ではほとんどが当てはまる)。各郵便番号の顧客数が必要な場合のコマンドは、以下のようになる。

SELECT COUNT(*), PostalCode FROM Customers GROUP BY PostalCode;

SELECT文で、各郵便番号の都市と州を表示したい場合は、それを GROUP BY リストにも追加する必要がある。その場合のコマンドは、以下のようになる。

SELECT COUNT(*), City, State, PostalCode FROM Customers GROUP BY PostalCode, City, State;

インデックスアクセスを使用するには、PostalCode、City、Stateの 3つの先頭キーを持つインデックスが必要である。ANY_VALUE を使用すると、グループ化仕様を変更せずに、これらの列を追加できる。その場合のコマンドは、以下のようになる。

SELECT COUNT(*), ANY_VALUE(City), ANY_VALUE(State), PostalCode FROM Customers GROUP BY PostalCode;

これにより、クエリーでPostalCodeを先頭キーとする任意のインデックスを使用できるようになる。

CREATE ALIAS (SQL) 文で
キーワード *LAST をメンバー名に指定 

最新のディスクのパフォーマンスデータに、以下のようにアクセスする。

CREATE ALIAS QTEMP.TODAYS_DISK_DATA FOR QPFRDATA.QAPMDISK(*LAST);SELECT * FROM QTEMP.TODAYS_DISK_DATA;

この結果、図表1のように最新のディスクパフォーマンスのデータのみを表示できる。

図表1 CREATE ALIAS

IBM i サービスの機能拡張

Db2 for ìのグループPTF(SF99950 レベル7)には、IBM iサービス(SQLインターフェースを経由して、IBM iオブジェクトやシステム情報にアクセスできる機能)の機能拡張が多数含まれている。ここではその中から、主な機能強化点のみを取り上げる。       

監査ジャーナルの大量データを迅速に分析 

監査ジャーナルに記録された大量のデータを簡単に迅速に分析できるように、データマート機能が提供された(別項目のIBM Navigator for iの機能強化でも紹介している)。

◎MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART

監査ジャーナルの詳細を取得、調査、維持するための機能をセキュリティ監査に提供する新しいプロシージャーである。

指定された期間の特定の監査ジャーナル項目タイプの監査ジャーナル・データを元に、表を作成する。もしくは既存のデータマート表を削除する。  

たとえば、AF(権限エラー)監査ジャーナル項目のデータマートを作成したい場合は、ACSのSQLスクリプトの実行で、図表2のように実行する。このコマンドで、ライブラリー(SAWADALIB)に、権限障害を表すジャーナル項目(AF) のみを含むデータマート(AUDIT_JOURNAL_AFとい
う名前の表)が作成できる。

図表2 MANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART

これで権限エラーのみのデータマートが作成される。これにより、膨大な監査ジャーナルを迅速に調査できる。

◎AUDIT_JOURNAL_DATA_MART_ INFO

前述したMANAGE_AUDIT_JOURNAL_DATA_MART を使用して作成された監査ジャーナル・データ・マートの存在と状態を把握するための新しいビューを実行するプロシージャーである。

たとえば、上記で作成したデータマートを確認するには、図表3のコマンドを実行する。

図表3 AUDIT_JOURNAL_DATA_MART_ INFO

 

◎QSYS2.SYSMEMBERSTAT

データベースの行数を簡単に取得するコマンドが用意された。

たとえばライブラリー内にあるすべてのファイルの、すべてのメンバーに関する統計情報を調べられる。このコマンドにより、ファイルのレコード数やソースメンバーのステップ数が簡単に把握できる(図表4)。

図表4 QSYS2.SYSMEMBERSTAT

◎CHECK_PRODUCT_OPTIONS table関数

IBM iのライセンス製品が正常にインストールされているかを、簡単に確認できるコマンドが用意された。

このサービスは、QSYS2.SOFTWARE_PRODUCT_INFOビューとCheck Product
Option (CHKPRDOPT) CLコマンドを使用して、システムにインストールされているすべての製品とオプションを検査できる(図表5)。  

図表5 CHECK_PRODUCT_OPTIONS table関数

 

◎GENERATE_SPREADSHEET スカラー関数

SQLでIFS上にデータベースのExcel表を作成する関数が提供される。前提として、「/QIBM/proddata/Access/ACS/Base/acsbundle.jar 」(IBM iのIFS上にあるIBM i Access Client)が必要である。利用方法については、図表6を参照。データベースをIFS上のExcelファイルへ簡単に変換できる機能で、バッチ処理等に組み込めるので便利である。

図表6 GENERATE_SPREADSHEET スカラー関数

RPG(5770-WDS)の機能拡張

SND-MSGの新しいオプションが提供された。新しいメッセージの種類には新規で、*COMP (完了メッセージ送信)、*DIAG(診断メッセージ送信)、*NOTIFY(通知メッセージ送信)、*STATUS(状況メッセージ送信) などがある。

たとえば下記のようなコーディングで、オンライン画面の下部に、プログラム完了を示すメッセージを送れる。

(RPGコマンド例) SND-MSG *COMP ‘受注処理は正常に完了’;

またSND-MSGの新しいターゲットとして、*CTLBDY(活動化グループ境界への送信)、*EXT(外部メッセージ待ち行列への送信)、*PGMBDY(プログラム呼び出し側への送信)の%TARGET値を指定できる。下記のサイトに簡単なサンプルコードがあるので、参考にしてほしい。

◎RPG Cafe: Spring 2024:More options for SND-MSG
https://www.ibm.com/support/pages/node/7149564

統合Webサービス・サーバーの機能拡張 

IBM iの標準機能である統合Webサービス・サーバー(IWS)の機能であるRSE APIが強化されている。

IBM i 7.5の場合は、5770SS1のPTF(SI85817とSI86098)で提供される。Remote System Explorer (RSE) API は、データベース・ファイル、IFS ファイル、CL コマンド、およびその他のいくつかの IBM i サービスをカバーするIBM iサービス用の REST API を提供するWeb アプリケーションである。

RSE API Web アプリケーションは、IBM Web Administration サーバー・セットの一部である統合アプリケーション・サーバーで実行される(図表7図表8)。

図表7 統合Webサービス・サーバー
図表8 IBM i Remote System Explorer API (RSE API)

また今回の機能強化では、RSE APIの新しいデジタル証明書の管理サービスが提供されている。Remote System Explorer (RSE) API が拡張され、デジタル証明書を管理し、IBM iサーバー上のTLSレベルに関する情報を取得するための新しいREST APIが組み込まれた。

Security Services と呼ばれる新しいカテゴリのサービスが作成され、図表9に示すさまざまなセキュリティAPIが含まれている。これによりRSE APIを使用して、デジタル証明書管理をリモートで自動化できる。

図表9 RSE API-新しいデジタル証明書管理サービス

 

著者
澤田 英寿氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 Power テクニカルセールス 
アドバイザリーIT スペシャリスト

1988年、すなわちIBM i(AS/400)が誕生した年に入社して以来、一貫してIBM iのテクニカル支援に携わる。昔は四国(松山)や大阪事業所で、中堅企業ユーザーの担当や、他社汎用機からの移行プロジェクトなどを担当。現在は、IBM Powerのパートナーに向けた技術支援などを担当。

[i Magazine 2024 Autumn 掲載]

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