3年で1000人規模のIBM i技術者を育成
未来に向けてIBM iと歩んでいく
池田 恵美子 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 サーバー・システム事業部長
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高度化するサイバー攻撃に
ソフト・ハードの両面で対応する
i Magazine(以下、i Mag) サーバー・システム事業部では何を担当されていますか。
池田 サーバー・システム事業部には現在、メインフレームである「IBM Z」と、IBM iやUNIX、Linuxが稼働する「Power Systems」の大きく2つの製品軸があり、その事業企画から販売までを担当しています。どちらもミッションクリティカルなシステムを支える信頼性の高い基盤として長く運用されてきましたが、共通する課題が2つあります。1つは、蓄積されてきた膨大なアプリケーション資産を今後も継承していくこと。もう1つは、AIやIoT、モバイル、アナリティクスなど新たなニーズ、日々刻々と変化していく最新のテクノロジーに対応していくことです。つまり今までの資産を大切に守りながら、新しいテクノロジーと連携し、両者をうまく融合させていくことが求められています。
i Mag 今年2月に、POWER9プロセッサ搭載モデルが発表されました。
池田 2017年12月に、POWER9プロセッサとNVIDIAのGPUを搭載したAI特化モデルを発表したのに続き、IBM i、AIX、Linuxが稼働するPower Systemsの新しいモデル群を発表しました。次世代の広帯域 I/O 規格をIBMテクノロジーでさらに低レイテンシー化した、CAPI対応PCIe Gen4(PCI Express 4.0)スロットを全モデルで全面的に採用し、パフォーマンスを大幅に向上させました。また出荷時からPowerVMをビルトインするなど、クラウド連携、モバイル連携、AI連携などに最適化したサーバーとしてご提供しています。
i Mag 2017年9月に、一部のPower Systemsモデルに対する保守サービス終了が発表されました。POWER5、POWER6だけでなく、2010?2013年に販売された比較的新しいPOWER7搭載モデルも2019年に保守が終了します。Power Systemsは長く使えるというイメージが浸透していたので、このニュースに驚いたユーザーも多かったようですが、このタイミングで保守サービス終了を決めた理由を教えてください。
池田 IBMとしてはパフォーマンスや機能のみならず、コストや品質の観点を含めても、POWER8やPOWER9を搭載した最新モデルの利用がお客様にとって最もメリットがあると考えています。これら最新モデルをフル活用いただけるよう、お客様の成長戦略を支えるAIとの連携やリアルタイム分析などの実装に向け継続的に投資しています。
さらにセキュリティ対応の一層の強化がPower Systemsでも大きなテーマです。昨今のサイバー攻撃は高度化・複雑化しており、OSレイヤーのバージョンアップだけでなく、ハードウェアを含めたシステム全体での対応が求められています。IBMではハードウェア・ソフトウェアの両面からセキュリティ対応を強化すべく、多くの人的リソースを投入しています。IBM iとAIXは安全性、堅牢性に定評のあるプラットフォームですが、新しいハードウェアへ迅速に移行していただくほうが、今後さらに高まるサイバーリスクに備え、大切なシステム資産を安全に、そして安心してお使いいただけると考えています。
3年間で1000人規模の
IBM i技術者を新規に育成
i Mag IBM iの技術者、RPGを使って開発・運用が可能な技術者の不足が指摘されています。
池田 ビジネスパートナー様と協業しながら、既存ユーザー様に対する充実したサポート、さらに新規のお客様の開拓に向けて、チャネルの強化に力を入れていく方針ですが、その施策の1つに、IBM iに関するスキルやノウハウを備えた人材育成があります。若手のエンジニアから、豊かな経験とノウハウを有するシルバー世代まで、技術者をどう育て、どう活用していくかは、IBM i市場にとって重要な課題です。そこで日本IBMでは、パーソルテクノロジースタッフ様とマンパワーグループ様の2社の人材派遣会社と協業し、「RPGアプリケーションの開発・運用支援サービスの強化」を目指して、IBM i技術者の育成に取り組んでいます。今年から3年間で、1000人規模の新しいIBM i技術者の創出を目指します。
このほか、IBM iのSI企業様と共同でリモート開発・保守・運用サービスの標準モデルを策定し、すでに11社がサービス提供されています。また、日本IBM自身も、グローバル・ビジネス・サービス (GBS) 部門がIBM i の大規模アプリケーション保守サービスに積極的に取り組んでいます。
i Mag IBM i技術者を新規に育成していくのですか。
池田 そうです。RPG Ⅲ、ILE RPG、そしてフリー・フォームRPGと、ご要望に応じて全方位で対応します。新しいテクノロジーや周辺システムとの連携スキルなどを含めた教育プログラムを関連パートナー様と共同で策定し、推進していきます。今年3月に発表した直後から、お客様やビジネスパートナー様から多数のお引き合いをいただいており、この取り組みが市場に大いに歓迎されていることを実感しています。
i Mag IBM iは1988年にAS/400として誕生してから、今年で30周年を迎えます。
池田 IBM iは日本のみならずグローバルで、本当に多くのお客様にご活用いただき、一大市場を形成しています。お客様やビジネスパートナー様など、長きにわたりIBM i を愛してくださる皆様に心から感謝を申し上げます。今後もさらに企業の成長やビジネスの成功に貢献するIT基盤として、IBM iを使い続けていただけるように、イノベーションを提供していく責務があると思っています。私たちは過去の歴史を振り返るのではなく、未来に向けて今後もIBM iと歩んでいこうと思っています。資産継承性や信頼性、堅牢性、セキュリティ性、高いパフォーマンスなどは今後も変わらずご提供する一方、AI、クラウドや他プラットフォームのアプリケーションとの水平統合、そしてそれらに対応した人材育成に力を入れ、これからの30年もご利用いただけるように努力していく所存です。