IBMが5月11日(現地時間)に発表したAI利用実態調査「Global AI Adoption Index 2021」によると、回答者の1/3が自社ビジネスでAIを利用中で、そのうちの43%が新型コロナにより導入が加速した、という。
この調査は、IBMがMorning Consul社に委託して2021年4月に実施したもので、15カ国の5501人が回答した。企業規模別では、従業員1000人以上が28%、251人~1000人未満が29%、51~250人が18%、50人以下が25%。役職別では、25%がVPまたはCxO、75%がIT・AI業務に精通している部長ないし上級管理職という内訳である。
国別の導入状況を見ると、導入率が最も高いのは中国とインドで、その一方、導入率は最低であるものの「検討中」の比率が最も高いのがラテンアメリカだった。
大企業と中小企業の導入率の差は18ポイントで、大企業は70%、中小企業は52%である。また、34%がAIを未導入だった。
AIの導入理由、障壁、移行時の困難
AIの導入理由のトップ3は、以下である。
・AIの進歩により、AIがより身近になったため:46%
・ビジネス上のニーズ:46%
・新型コロナによるビジネスニーズの変化:44%
その反対に、AIを導入する際の障壁は、次がトップ3だった。
・AIに関する専門知識が限られている:39%
・データの複雑化とデータサイロ:32%
・AIモデル開発用のツール/プラットフォームの不足:28%
これを大企業に絞ってみると、最大の障壁は「データの複雑化やデータサイロの増加」で、中小企業よりも11%ポイント高い。小規模企業の最大の障壁は「AIに関する専門知識の不足」である。また、AIに移行する過程における困難としては、以下が挙げられている。
・信頼できるAIを構築・拡張するためのデータ分析:39%
・AIのビジネスへの浸透:37%
・ビジネスに適した分析基盤を構築するためのデータ整理:37%
・データを収集し、シンプルでアクセスしやすいものにする作業:37%
大企業では「データ分析」と「AIの組織への導入」が移行時の最大の課題で、中小企業では「データの収集」であった。
AIの投資分野
「新型コロナの影響でAIの導入が加速した」とする回答は、全体の43%に上った。そして1/3がAIへの投資を予定中という。投資先は、以下の分野である。
・利用中のAIアプリケーションやプロセスへの組み込み:34%
・人材育成・人材開発:34%
・既製のAIアプリケーションの導入:34%
・独自のAIソリューションの開発:33%
・独自アプリケーションやモデルを構築するための既製ツールの導入:33%
信頼性の高いAIへのアプローチ
AIの活用を考える企業にとって、AIの信頼性は極めて重要なテーマである。調査レポートは、信頼性で重視する点、信頼できるAIを開発する上での障壁、モデリングや管理についての課題を尋ねている。
AIの信頼性と説明力の最も重要な点
AIの信頼性・説明力で重要視する項目 | 回答率 |
---|---|
ブランドインテグリティと顧客の信頼の維持 | 90% |
外部規制とコンプライアンス義務への対応 | 89% |
内部の報告義務への対応 | 89% |
データおよびAIのライフサイクルの監視・管理能力 | 88% |
アプリケーション/サービスのバイアスの抑制 | 87% |
信頼できるAIを開発する上での最大の障壁
信頼できるAIを開発する上での最大の障壁 | 回答率 |
---|---|
信頼できるAIを開発・管理するためのスキルやトレーニングの不足 | 65% |
すべてのデータ環境に対応していないAIガバナンスおよび管理ツール | 62% |
説明できないAIの結果 | 58% |
政府や産業界による規制ガイダンスの欠如 | 58% |
信頼できる倫理的なAIを開発するための企業ガイドラインの欠如 | 58% |
固有のバイアス(社会的、経済的など)を持つデータ上でのモデル構築 | 58% |
企業が軽減しているAIのモデリングと管理に関する最大の課題
AIのモデリングや管理の課題 | 回答率 |
---|---|
トレーニングデータの出所が明確でないこと | 66% |
AIモデルの開発・展開に関わる部署間の協力体制の欠如 | 64% |
AIポリシーの欠如 | 63% |
クラウドやAI環境におけるAIのモニタリング | 63% |
予期せぬパフォーマンスの変化やモデルのドリフト | 62% |
価値創造のスピード | 62% |
モデルからメタデータを取得する能力/コンプライアンスレポート | 62% |
データやモデルのバージョン変更の追跡 | 61% |
意図しないバイアス | 61% |
AIによる判断を説明する能力 | 60% |
自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)は、AIアプリケーションの中で最も身近な分野だが、既に回答者の約半数が利用中で、1/4が今後1年間に導入予定という結果だった。
利用中または利用予定で人気のある自然言語処理アプリケーションは以下のとおりである。
人気のある自然言語処理アプリケーション | 回答率 |
---|---|
メールやテキストの分類 | 35% |
機械翻訳 | 34% |
顧客サービス用バーチャルエージェント | 34% |
コールセンターの自動化 | 33% |
アンケート分析 | 31% |
ターゲット広告 | 29% |
複雑な文書の自動分析 | 27% |
テキストの要約 | 25% |
複雑な文書の検索 | 24% |
従業員エンゲージメント用のバーチャルアシスタント | 23% |
感情分析 | 18% |
・ニュースリリース「Global Data from IBM Points to AI Growth as Businesses Strive for Resilience」(英語)
・「Global AI Adoption Index 2021」(英語)
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