MENU

ガートナー「2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」、新登場は「データ・ファブリック」など7つの技術、3年連続は「ハイパーオートメーション」のみ|2022年市場予測❶

ガートナージャパンは11月17日、「2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」を発表した。米Gartnerが毎年発表している技術トレンド予測で、ガートナージャパンではそれを「信頼の構築」「変化の形成」「成長の加速」のカテゴリーで整理している。

 

Gartnerの2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド
Gartnerの2022年の戦略的テクノロジーのトップ・トレンド

 

個々の戦略的テクノロジーの定義と動向は後半で触れるとして、「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」のトレンドを2020年、2021年との対比で見てみよう。

今回の2022年で取り上げられた戦略テクノロジーのうち、2020年・2021年にも登場しているのは「ハイパーオートメーション」、2021年に続いて登場したのは、「プライバシー強化コンピュテーション」「サイバーセキュリティ・メッシュ」「AIエンジニアリング」「トータル・エクスペリエンス (TX)」の4つである。つまり、下記の残り7つが2022年予測で初めて登場した戦略テクノロジーになる。

・ジェネレーティブAI
・データ・ファブリック
・分散型エンタープライズ
・クラウド・ネイティブ・プラットフォーム
・オートノミック・システム
・意思決定インテリジェンス
・コンポーザブル・アプリケーション

 

Gartnerの「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」2020年~2022年
Gartnerの「戦略的テクノロジーのトップ・トレンド」2020年~2022年

2022年の戦略的テクノロジーの定義と動向

 
ハイパーオートメーション *3年連続登場

可能な限り多くのプロセスを迅速に特定し、検証し、自動化することにより、成長の加速とビジネスのレジリエンス向上を実現する技術。Gartnerの調査では、「先進的なハイパーオートメーション・チームは、仕事の質の改善、ビジネスプロセスの高速化、意思決定におけるアジリティの強化という3つの課題に注力している」と指摘している。

プライバシー強化コンピュテーション *2021年・2022年登場

プライバシー強化コンピュテーションは、機密性やプライバシーを損なうことなく、データの共有、保存、分析の安全性を確保する手法。Gartnerは、強化が進む国際的なプライバシー/データ保護規制への対処だけでなく、プライバシー問題による顧客の信頼喪失を回避する必要がある、と説く。そして大企業の60%は、2025年までに、アナリティクス、ビジネス・インテリジェンス、クラウド・コンピューティングのいずれかにおいて、プライバシー強化コンピュテーション手法を1つ以上使用するようになる、と予測している。

サイバーセキュリティ・メッシュ *2021年・2022年登場

今日、デジタル資産やユーザーはどこにでも遍在するため、従来のセキュリティ境界は消滅している。そのため、セキュリティツールを統合し、統合的なセキュリティ構造/態勢を提供するサイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャは、遍在するデジタル資産をセキュアに保持するのに有効である。Gartnerでは、サイバーセキュリティ・メッシュ・アーキテクチャを利用する組織は、2024年までにセキュリティ・インシデントによる財務への影響を平均で90%低減させる、と予測する。

AIエンジニアリング *2021年・2022年登場

AIエンジニアリングは、AIモデルを継続的に利用するための統合的なアプローチ。Gartnerでは、2025年までにAIエンジニアリングのベスト・プラクティスを確立している10%の企業は、確立していない90%の企業に比べて、AIへの取り組みを通じて少なくとも3倍以上の価値を生み出すようになる、と予測している。

トータル・エクスペリエンス (TX) *2021年・2022年登場

トータル・エクスペリエンス(TX)は、カスタマー・エクスペリエンス (CX)、従業員エクスペリエンス (EX)、ユーザー・エクスペリエンス (UX)、マルチエクスペリエンス (MX) を融合するビジネス戦略。TXの目的は、顧客や従業員の信頼、満足、ロイヤリティ、アドボカシー (推奨) を高めることで、組織は、適応力とレジリエンスに富むTXというビジネス成果を達成することにより売上と利益を拡大できる、とGartnerは記す。

ジェネレーティブAI *2022年予測で初登場

ジェネレーティブAIは、コンテンツやモノについてデータから学習し、創造的なまったく新しいアウトプットを生み出す機械学習の手法。Gartnerでは、2025年までに、生成される全データのうちジェネレーティブAIによるものの割合は、現在の1%未満から10%になる、と予測する。

データ・ファブリック *2022年予測で初登場

データ・ファブリックとは、複数のプラットフォームやビジネス・ユーザーをまたいで存在するデータを統合し、高い柔軟性とレジリエンスを持たせたもの。その真価は、組み込み型アナリティクスによってデータの活用効率を動的に改善し、データ管理作業を最大70%削減して、成果を得るまでの時間を短縮する点にある、とGartnerは述べる。

分散型エンタープライズ *2022年予測で初登場

リモートワークやハイブリッド型の働き方が増加するにつれ、さまざまな拠点に人材を配置する分散型エンタープライズへの移行が進んでいる。Gartnerでは、2023年までに、分散型エンタープライズの利点を生かしている組織の75%は、競合他社よりもスピーディに売上拡大を実現する、と予測する。

クラウド・ネイティブ・プラットフォーム *2022年予測で初登場

デジタル化の価値を真に享受するには、クラウドへの「リフト・アンド・シフト」から「クラウド・ネイティブ・プラットフォーム」へと移行する必要がある、とGartnerは指摘する。

クラウド・ネイティブ・プラットフォームは、アプリケーション開発者に拡張性と弾力性に富むプラットフォーム・サービスやインフラストラクチャ機能を提供し、価値実現までの時間短縮とコスト削減を可能にする。Gartnerでは、クラウド・ネイティブ・プラットフォームが新規システムの基盤となる割合は、2021年の40%以下から2025年までには95%以上へと飛躍する、と予測している。

オートノミック・システム *2022年予測で初登場

オートノミック・システムとは、環境から学習する自己管理型・自律型のシステムを指す。外部からソフトウェアを更新しなくても、自らアルゴリズムを動的に書き換えるため、現場の新しい状況に迅速に適応できる。Gartnerでは、オートノミック・システムは複雑なセキュリティ環境で採用されているが、将来的にはロボットやドローン、製造機械などでも一般的になると予測する。

意思決定インテリジェンス *2022年予測で初登場

意思決定に関する組織のコンピテンシーは競争優位性をもたらす重要な要素ですが、意思決定を下すのはますます難しくなっています。

意思決定インテリジェンスとは、意思決定の方法、結果の評価方法、管理方法、フィードバックによる改善方法を理解して意思決定を改善するもの。今後2年間に大企業の1/3が意思決定インテリジェンスを利用するようになる、とGartnerは予測している。

コンポーザブル・アプリケーション *2022年予測で初登場

ビジネス環境が変化し続ける状況下では、アプリケーションを迅速かつ安全、かつ効率的に変更できる基盤が必要になる。コンポーザブル・アプリケーションは、そうした適応力を提供するアーキテクチャ。Gartnerは、コンポーザブルなアプローチを採用した組織は、競合他社を80%上回るスピードで新機能を実装するようになる、と述べる。

[i Magazine・IS magazine]