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Gartner、ローコード開発ツールの採用を成功させるために実践すべき7つのベストプラクティスを発表

ガートナージャパンは6月13日、「ガートナー アプリケーション・イノベーション&ビジネス・ソリューション サミット」にて、ローコード開発ツール (ローコード・アプリケーション・プラットフォーム。以下、LCAP) の採用を成功させるために実践すべき、次の7つのベストプラクティスを発表した。

❶ LCAPの利用戦略を策定する

Gartnerに寄せられる問い合わせでは、LCAPをなんでも開発できると捉えて手組用の開発ツールや言語と同じように取り扱い、適用内容を明確に考えていないケースが散見される。その結果として、実現したい内容にマッチしていないツールを選択するケースが多く見られる。

LCAPの活用に当たっては、利用戦略を策定することが重要である。ローコードのユースケースとローコード・テクノロジーを特定し、整合させて、どこで、どのように活用するか、どのような場合には使用すべきではないかを明確にすることで、ミスマッチを避けることができる。

❷ 試験運用や概念実証 (POC) を実施して、LCAPを評価する

多くの企業が、LCAPツールの開発機能に着目しているものの、コーディング以外の機能 (例:テスト、デプロイ、統合など) をどのようなスキルレベルの人が使うのか、成果物をどのように共有・流通させ管理するか、また、何をどのようにガバナンスできるのか、といった観点での評価が不足しているように見受けられる。その結果、開発機能は要件に合致していたものの、運用の際にこんなはずではなかったという局面が多発し、それを埋めるために想定外の追加作業やそれに伴う費用が必要になるというケースが見られる。

こうした事態を避けるために、試験運用や概念実証 (POC)の内容について慎重に検討し、確実に実施することが重要である。組織で試験運用やPOCを実施し、LCAPが開発者のペルソナやユースケースに適合しているかを確認すると同時に、ガバナンス機能を判断したり、搭載機能の有効性を判断したりすることが可能になる。

❸ LCAP支援チームを設置し、市民開発者をサポートする

多くの企業では、LCAPを使えば簡単にアプリケーションが早く作れるようになると考え、実際、そうした成果が実証されつつある。一方、市民開発者は、LCAPを使う際に、使い勝手や実現したいことに対する技術面の不足など、さまざまな障壁に遭遇する。そうした障壁は、市民開発者の意欲を削ぐだけでなく、適切なLCAPの利用の妨げになり、適用の拡大や浸透・定着の妨げにもつながる。

LCAP支援チームを設置し、技術面でのサポートを提供することで、市民開発者がLCAP利用の早い段階から成功体験を積み重ねることが可能になる。その結果、市民開発者にとって使いやすいLCAPや開発・デリバリ環境に仕立て上げることができ、それがさらにLCAPの活発な利用促進につながる。

❹ 適応型ガバナンス・フレームワークを適用する

多くの企業では、「ガバナンスは全体に対して均一に適用する」という発想が無意識のうちに定着しているように見受けられる。適用対象、範囲、重要度、利用者、もしくは複雑度に応じて適用ゾーンを分割し、それぞれに最適なガバナンスを策定する必要がある。

個人やグループ・レベルでの簡単なアプリケーションは、市民開発の主たる適用ゾーンとし、全社レベルのアプリケーション、複雑なアーキテクチャやシステム連携、高度な非機能要件の設計やテクノロジー知見などが必要となるアプリケーションは、IT部門が主として担当するゾーンに設定する。この2つの中間に位置するようなアプリケーションは、IT部門とユーザー側がフュージョン・チームとして密なコミュニケーションをとりながら構築を進めるゾーンに設定する。

IT部門とユーザー部門の役割分担や、ガバナンスの在り方を最適化し、可視化するのが、適応型ガバナンス・フレームワークの考え方である。これにより、アプリケーションを適切なゾーンに割り当てた上で、一貫性を保つべき事項や必ず守るべき事項を特定し、市民開発の意欲や適用の浸透・定着の阻害要因とならないよう、かつ、企業にとってのリスクにならないよう、バランスをとることが可能になる。

❺ アプリケーションのオーナーシップを適切に設定する

LCAPにより、多様なユースケースに応じて多様なアプリケーションが開発できるようになってきており、部門・全社レベルや基幹系などの重要で複雑なアプリケーションにも、LCAPを適用することで、開発のリソース不足を補うことができる場合がある。また、簡単なもの、あるいは、ユーザー個人/グループごとの細かい開発要件に基づくアプリケーションについては、個人やグループにアプリケーション開発・保守のオーナーシップを持たせることで、IT部門のリソースを現在以上に圧迫しないようにできる。

最初は個人レベルの簡単なアプリケーションであっても要件の追加や適用範囲の拡大により、その重要度が増し、複雑で高度なアプリケーションに進化することもある。そのような場合には、オーナーシップを個人からグループ、部門、ひいてはIT部門へと移管することが望ましいケースも見られる。

アプリケーションのオーナーシップは、アプリケーションの特性やその変化に応じて適切に設定される必要がある。これにより、適切なアプリケーション運用やライフサイクル管理が行えるようになり、IT部門の適切なリソース配置やスキル向上の機会の拡大に寄与することになる。

❻ 実践コミュニティ(CoP)を利用して、エンゲージメントを生み出し、スケール感のあるサポートを提供する

市民開発者の適用範囲や規模が拡大するにつれて、開発の数も増え内容も多様化し、スキルの高低も広がる。こうした中、IT部門だけできめ細かなサポートをタイムリーに提供し続けるには限界がある。そこで市民開発者間で、日々、それぞれの知見を共有しあうという発想が注目されている。市民開発者自身が、ローコード開発のプラクティスを提供・共有し、相互扶助を行うコミュニティ (CoP) を積極的に構築・拡大し、運営していくことで、LCAPを利用しやすい環境や文化を醸成することが可能になる。

❼ スキルの育成や維持のために適切な時間を設ける

LCAPを使ったアプリケーション開発は、コーディングが楽になる、もしくは不要になるが、アプリケーション開発であることに変わりはない。つまり、業務上の解決すべき問題を正しく特定し、それに対する正しい解決方法を見出し、正しいアプリケーションを設計・実装・テスト・リリース・改善するアプリケーション開発のライフサイクルが必要である。必要なスキルをすべて獲得するのは、容易ではない。個々人が目指すゴール、スキルレベル、ペースならびに状況に応じて、きめ細かく、かつ継続的に取り組む必要がある。

LCAPのスキル育成や維持は、決しておろそかにせず、拙速な取り組みは避け、十分な時間をかけるようにすべきである。これにより、開発の質、効率が向上し、サポートの層も厚くなり、質も向上する。結果的に、IT部門にとっての負荷軽減になり、リソース不足やスキル不足の解決が促進されることになる。

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