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IBM iの世界はフル構築からサービス活用へ ~API連携ツールの登場で基幹データ活用の機運が高まる|特集 IBM iの連携力❶

基幹データを多彩なシステムで活用する
「連携」に着目

IBM iの資産を効果的に活用する。IBM iの資産を未来に向けて発展的に継承する。今、こうした狙いの下、システム連携があらためて注目を集めている。

IBM iには企業の財産ともいうべき膨大な基幹データが蓄積されている。それをオープン系の業務システムやWebアプリケーション、昨今では多彩なクラウドサービスなど、さまざまなシステムへどのような手法で連携させ、活用していくかの検討が進められている。

システム連携といっても多種多様な手法があり、システムの要件やデータ量、データ形式、連携のレベル(データの連携、処理の連携、アプリケーションの連携)、連携のタイミング(リアルタイム、非同期、バッチ型)などによって、それぞれに最適解は異なる。

しかし用途や要件に応じてその都度、連携プログラムを開発したり、複数のツールやソリューションを導入していくと、開発工数や製品ごとのライセンスコストが膨らみ、システム変更によるプログラムの改修、運用管理負荷の増大なども課題となる。実際のところ、用途に応じてシステム連携の手法を使い分けるのは、工数、コスト、スキルのあらゆる面でハードルが高いと言えるだろう。

そこで連携の手法を統一化・標準化し、連携コストや管理負荷を低減するための方策が求められている。

API連携ツールが
連携ソリューションの「台風の目」に

現在、システム間の連携手法としては、以下が考えられる。

①ファイル転送によるデータ連携
②ディスク共有によるデータ連携
③データベース連携
④ツールを利用したシステム連携
⑤メッセージキューによる連携
⑥SOAPやRESTによるAPI連携

今、IBM iに関する連携ソリューションで、「台風の目」となっているのがAPI連携ツールである。APIはApplication Programming Interfaceの略で、プログラムの機能の一部を別のプログラム上で利用できるように共有する仕組みを意味する。

APIを公開することにより、ソフトウェアに外部とやり取りするための「窓口」を作る。この窓口を通して、外部アプリケーションと連携することが可能になる。この窓口の仕様がAPIリファレンスであり、データを活用する側(データの利用者)はこれに沿ってアプリケーション開発を進める。

利用者は公開されているAPIプログラムのサーバーへリクエストを送信し、その応答(レスポンス)として、プログラムの一部機能を利用する。通常のAPIは利用者側が用いるプログラミング言語と同一の言語を使って提供する必要があるが、今流行のWeb APIは、HTTP/HTTPS方式の通信により言語の違いを吸収できるメリットが注目されて、普及が広がっている。

Web APIには、SOAPとRESTの2種類の構築方法がある。SOAP は XML メッセージングなどの特定要件を備えるプロトコルであるのに対し、REST は柔軟な実装を提供する一連のガイドラインである。SOAPは仕様が巨大かつ複雑になりがちなため、昨今では敬遠される傾向にあり、REST APIの注目度が高まっている。

現在では多数のSaaS型クラウドサービスがAPIの仕様を公開しており、REST APIを記述するための仕様およびその仕様に基づいた開発を支援するためのツールやフレームワークが数多く登場している。

オープン系の世界ではデファクトになりつつあるこうしたAPI連携ツールが2021年、IBM i市場にも登場した。オムニサイエンスの「API-Bridge」と三和コムテックの「ARCAD API」である。どちらもRPG(もしくはCOBOLやCL)プログラムをAPIで公開するための機能を備えており、IBM iのロジックやデータをAPIにより、周辺システムで活用する道が拓かれたと言える。

ただし、企業内の連携すべてをAPIで実行するのは現実的ではない。たとえばシステム間で大容量データを送受信する場合には、FTP によるバッチ型のファイル転送が適している。一方、リアルタイム性を確保し、すでに公開されているAPIの窓口を利用して、個別にシステム連携のプログラムを開発することなく連携を実現したいなら、APIの利用が望ましい。

連携の手法にはもちろんAPI以外にも、ETL(Extract Transform Load)ツールやEAI(Enterprise Application Integration)ツール、DB連携ツールなどがある。

ETLツールはデータ分析やデータマイニングを狙いに、バッチ処理型でデータの抽出・変換・書き出しを実行する。

一方のEAIツールは、ETLのように1カ所にデータを集約するのではなく、CRMやERPといった各種業務システム、Webシステム、あるいはメインフレームやオープン系サーバーといったシステムの違いを吸収しながら、複数アプリケーションを通じてデータをやり取りする。

ETLはバッチ処理を基本にデータ集約を実現するツールで、EAIはアプリケーション統合によりリアルタイム処理を実現するツールという点に違いがある。

またこれ以外にも、テーブル単位で異種DB間を同期し、差分データのみをほぼリアルタイムに転送するようなDB連携ツールなどもある。

API連携ツールが注目を集めるに従って、従来から提供されてきたこうした連携ツールにも関心が高まっているようだ。

一般にEAIツールでは「ASTERIA Warp」(アステリア)、「DataSpider」(セゾン情報システムズ)、ETLツールでは「HULFT」(同)など、市場シェアが高く、ハイエンドな機能を備えるシステム連携ソリューションが普及しており、当然ながら連携対象にはIBM iも含まれている。

そこで本特集では、IBM iとの連携を重視し、IBM iとの親和性が高い連携ソリューションをいくつか紹介する。

たとえばEAIツールとしては、「Magic xpi Integration Platform」(マジックソフトウェア・ジャパン)。進化したETLツールとして、「GoAnywhere MFT」(ソルパック)と「Qanat 2.0」(JBアドバンスト・テクノロジー)。

さらに異種DB間のリアルタイムレプリケーションを実行する「Syniti Data Replication」(クライム)と「Connect CDC」(三和コムテック)。

それに前述した「API-Bridge」と「ARCAD API」に加えて、「i-Cross API」(イグアス)、ベンダー向けのAPI連携サービス「Qanat Universe」(JBアドバンスト・テクノロジー)、API-Bridgeを活用して日販テクシードが提供する「ハイブリッドAPI開発スターターパック」などがある。

リアルタイム性を追求し、フロントエンド側のデータベースをもたない運用を目指す場合はAPI連携ツール、今後社内で多様な連携手法に対応するニーズがある場合はEAIやETLツールなど、それぞれの適性を理解しつつ最適手法を選択する必要がある。 

これまでのシステム構築は要件や機能性が優先し、連携手法を検討するのは最終段階になりがちであった。しかし今後は、連携の手法を起点に全体のアーキテクチャを考える必要があるのかもしれない。

IBM iと親和性の高い連携ソリューション
IBM iと親和性の高い連携ソリューション

[i Magazine 2022 Autumn(2022年11月)掲載]

特集 IBM iの連携力

PART1:注目されるIBM iの連携ソリューション

API連携ツールの登場で基幹データ活用の機運が高まる

・オムニサイエンス:API-Bridge
・日販テクシード:ハイブリッドAPI開発スターターパック
・三和コムテック:ConnectCDC、ARCAD API
・クライム:Syniti Data Replication
・マジックソフトウェア・ジャパン:Magic xpi Integration Platform
・ソルパック:GoAnywhere MFT
・JBアドバンスト・テクノロジー:Qanat Universe、Qanat 2.0
・イグアス:i-Cross API

PART2:IBM i 最新連携事例

・株式会社フェリシモ
データ中心アーキテクチャに沿って
ファイル連携とAPI連携を使いわける

・日本ハム株式会社
・日本ハムシステムソリューションズ株式会社
IBM iの基幹データをAPIでAIシステムへ連携

・株式会社JRC
IBM iを中心にしたシステム構成から
データ連携が主役の将来構想へ