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EXA AI SmartQA ~容易なデータ投入、簡単な学習が可能な「使いながら育てる」チャットボット|エクサ

 

Watsonの実証実験で
AIの知見・ノウハウを蓄える

 大規模基幹システムのインテグレーションやMaximoを用いた大規模設備の保全、公共設備の保守メンテナンス・システムの構築で広く知られるエクサは、実はAIビジネスの草創期(2015年)からWatsonを利用する実証実験に多数参画し、AI・コグニティブに関する知見・ノウハウをさまざまにもつ企業でもある。その同社が、2017年6月に同社初のAI製品としてリリースしたのが、チャットボットツール「EXA AI SmartQA」(以下、SmartQA)である。

「当社はこれまで、お客様のRFP(提案依頼書)にもとづく受託型のビジネスを展開してきましたが、今後はその形を残しつつも、当社からお客様への訴求型・提案型のビジネスが不可欠と認識しています。そのなかで、AI分野であれば、当社の知見と技術力を投入してお客様へ提案・訴求でき、お客様をリードしていけると考えています。SmartQAは、その訴求型ビジネスの主軸であり、AIビジネスの領域を拡大する戦略的なツールとして育てていく考えです」と、取締役 常務執行役員の長澤拓也氏は話す。

 また、マーケティング部の村山吉美氏(担当次長)は、「最近、SmartQAに関して、当社とお取引のないお客様から問い合わせを受けることが多くなり、チャットボットの幅広い浸透を実感しています。SmartQAは、未知のお客様にアプローチできるツールにもなり得ると考えています」と述べる。

 SmartQAは、技術面で特徴のあるツールである。1つは、Watson対応の他社のチャットボット製品がコーパス(学習データのデータベース)作成用のAIエンジンとして「NLC」(Natural Language Classifier)を採用しているのに対して、SmartQAは「IBM Retrieve and Rank(R&R)」である。もう1つは、コーパスは1つが一般的なのに対して、SmartQAは2つ設けていることだ(図表1)

 

 

「これは、より簡単に、より使いやすくする、というSmartQAの製品コンセプトに基づく選択です」と、長澤氏は次のように説明する。

「AIエンジンの選定では、NLCも検討の俎上に乗せましたが、NLCが1つの回答に対して10?15もの質問をセットしないと満足のいく正解率が得られないのに対して、R&Rは1セットの質問と回答だけでも高い正解率が得られます。チャットボットを使いこなしていただくには、学習が簡単に行えることが重要と判断し、R&Rを選択しました」

 またコーパスを2つ設けている点については、「運用の観点」と話す。

「コーパスに新たな知見を投入しても、精度が上がるとは必ずしも言えず、むしろ正解率が下がることさえあります。そうした場合、コーパスが1つだと元に戻すのが大変ですが、2つのコーパスのうち1つを常に元のバージョンにしておけば切り替えるだけで戻すことができ、運用が楽です。Watsonの実証実験で数々のPoCを手がけてきた当社の知見の1つと言えます」と、長澤氏は語る。

 

PoCの経験から学んだ3つのポイント

 その「PoCから学んだこと」として長澤氏は、①データを投入する仕組みが容易であること、②学習を簡単に行えること、③コーパスの精度を高めていく仕組みがあること、の3点を挙げる。

 ①はQAを記載したExcelのアップロード、②はR&Rの採用により実現しているが、③に関しては学習サイクルを効率的に回す、使いやすい仕組みを提供している。そして長澤氏は、「AI・チャットボットは、使いながら育てていくことこそ重要で、SmartQAはそれを可能にする機能をとくに充実させています」と強調する(図表2)

 

 コーパスを成長させる仕組みとしては、学習データを投入すると回答候補をランキング表示し、それを選択すればコーパスに反映できるようにしたり(アンケート方式)、SmartQAが未知の質問を受けた場合は、オペレータへ転送し、オペレータが作成した回答をコーパスへ取り込めるようにするなど、使いやすくする機能が搭載されている。

 また、質問の数や傾向、正解率などをビジュアルに確認・分析できる管理画面があり、正解率の低い質問や誤回答を効率よく抽出して修正できる。

 SmartQAの利用料金は、初期費用が35万円、月額費用は30万円。この月額料金に、ユーザー1000名までのアカウント費用も含まれる。APIゲートウェイや外部APIを使った基幹システムや外部サービスとの連携に関しては、別途費用がかかる。

 SmartQAは2018年中に、R&Rのサービス停止(2018年10月)に伴う、後継のWatson Discoveryへの移行を実施する計画。また、Conversation(IBM Watson Assistant)や分析ルール機能を追加し、より複雑な対話シナリオも作成可能にする予定という。

「R&Rの機能を取り込んで拡張されたDiscoveryは、Watsonのフラグシップと言える高機能なAIエンジンなので、それを搭載するSmartQAは、より高度なチャットボットへと生まれ変わります。SmartQAは、成長するチャットボットでもあります」と、長澤氏は語る。

[IS magazine No.19(2018年4月)掲載]