Dropboxの日本法人である Dropbox Japanは12月12日、集中力の途切れがもたらす労働生産性損失に関するグローバル調査「In search of lost focus」の結果を発表した。
日本では、ナレッジワーカーの集中力の途切れを対策することにより、年間約 25.8 兆円(1760 億ドル)の経済的効果が創出されることが明らかになった。
同調査では、北米、欧州、アジア、オーストラリアなど世界 10 カ国のナレッジワーカー 1000 人以上を対象に、集中が途切れることが原因で引き起こる経済損失をモデル化した。ここでのナレッジワーカーとは、肉体労働よりもデジタルツール使った仕事を主に行う専門家、研究者、教育者、アナリスト、IT スタッフなどを指す。
ナレッジワーカーは業務する上で必要な情報、資料、アセットなどを見つけるために、さまざまなフォルダ、メール、ブラウザータブを行き来することに多くの時間を費やしている。これらの集中を途切らす行為にかかる時間は、年間数百時間にも及ぶことがわかった。このような、「仕事をするための仕事」に時間を費やすことにより、業務の本質的な部分に割ける時間が少なくなる。
同調査によると、職場における集中力の途切れ対策を行うことにより 10 カ国合計で約 370 兆円(2 兆 5200 億ドル)相当の商機が創出されることがわかった。日本単体では、約 25.8 兆円(1760 億ドル)の商機が創出され、生産性を高めることで日本のナレッジワーカーの経済産出量が 34% 上昇することを示している。
調査対象者の 42%は、生産的な作業を 1 時間以上連続で行えないと回答した。日本のナレッジワーカーは、作業の中断により 1 人当たり年間約 511 時間を損失していることが明らかになった。
SNS や雑用などの個人的な用事が、日本のナレッジワーカーの集中力の中断を牽引しており、これにより年間 1 人につき 133 時間損失している。
日本でその次に多かったのは、年間 129 時間の損失の原因となった仕事関連のメッセージのやり取りであった。またいったん途切れた集中力を取り戻すために、日本のナレッジワーカーは年間 115 時間費やしていることもわかった。
一方で、AI を活用したツール、柔軟な業務体制、非同期コミュニケーションを組み合わせることで、テクノロジーが我々の能力を増幅させ、より効率的な働き方ができることが最新の研究で示唆されている。同調査でも、AI と自動化ツールは、自分の仕事を脅かすものではなく、よりスマートで、より効率的に働くことを支援してくれるという意見が優勢であった。
AI や自動化を活用していると答えた人の86%が、そのようなツールによって自身の職の安定に関して安心感が増した、または影響がないと答えている。世代別にこの回答の傾向を見た際も、Z 世代からベビーブーム世代まで、どの世代でも概ね一貫していた。
AI と自動化ツールは、すでにナレッジワーカーの集中力の維持や業務の進め方に多大な影響を与えている。近年はAIを搭載した自動化ツールも増えているが、自動化ツールを使って仕事をしていると答えた人の 79%が、使う前より生産性が向上したと回答した。さらに75%近くが仕事の質が上がり、日常の反復作業に取られる時間が減ったと答えた。また70% 近くが、以前より思考が整理されていると回答した。
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