情報処理推進機構(以下、IPA)は2月9日、日米企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の動向を比較調査した解説書「DX白書 2023」のPDF版を無償公開した。
IPAではこれまでも2009年に「IT人材白書」、2017年に「AI白書」を発行してきたが、昨今のDXの進展を背景に、新たに「DX白書2021」を発刊した。今回の「DX白書 2023」は2021年に公開した解説書の最新版で全377ページ。構成は以下のとおりである。
第1部 総論
第2部 DX戦略の策定と推進
第3部 デジタル時代の人材
第4部 DXを支える手法と技術
付録 第1部 AI技術
付録 第2部 制度政策動向
第1部 総論は、本白書の重要部分の要約で、まず第1章では、既存のDX関連アンケート調査の分析および企業がDXに取り組み154事例の収集・整理により、DXの取り組みの俯瞰図を作成し、日本企業のDXに対する取組状況を概観した。
企業規模、産業、地域を整理軸として、俯瞰的に分析している。
◎企業規模別の俯瞰図
「企業規模(売上高区分)」を横軸、DX事例の取組内容を縦軸とした俯瞰図が下記の図表である。
個々の事例を分析すると、売上規模が小さい企業(50億円未満)でもDXや「デジタルオプティマイゼーション」(以下、DO)に該当する取り組みが確認できる。
たとえば地域内での農産物流通の仕組み、人手不足の農家と在宅勤務を希望する障がい者をマッチングする仕組みなど、デジタルを活用して企業と消費者・労働者をつなぐアイデアを実現するなどにより、小規模でも新たなビジネスの創出が可能であることが伺える。また、売上規模が大きくなるほど、受発注や物流のプラットフォームサービスなど、同業者や取引先、顧客を巻込んだ大規模な取り組みが見られる。
◎産業別の俯瞰図
総務省調査における産業別のDXの取組割合を基に、各産業を3つの産業群に分類したうえでこれを横軸とし、DX事例の取組内容を縦軸とした俯瞰図が下記の図表である。
DXに取り組んでいる企業の割合が20%未満の産業でも、DX、DOに該当する取り組みが確認できる。
たとえばDXの事例としては、「宿泊業、飲食サービス業」でAIを活用した外国人などへの顧客対応、「医療、福祉」産業で仮想現実(VR)によるリハビリテーションにおいて、業務効率化のみならず、顧客体験変革も兼ねた事例などの取り組みが確認できる。
◎地域別の俯瞰図(全国)
全国を10の地域に区分し、収集したDX事例の中から各地域区分に該当する事例をマッピングした俯瞰図が下記の図表である。
ここで各地域での個々のDXの取組事例を見ると、多くの大企業が集まる関東、東海、関西では、大企業を中心に「社会変革」や「市場変革」をはじめとするDX事例が見られる。
また北海道では農業でのデジタル活用事例、甲信越ではドローンによる森林調査など地域産業での活用、また東北地方、北陸地方、四国地方では働き手の減少や高齢化といった地
域課題の解決としてデジタルを活用する事例を確認できる。
◎日米企業の比較
日本ではDXに取り組んでいる企業は約56%であるのに対して米国では約79%、取り組んでいない企業は日本33.9%、米国14.1%であり、DXに関しては米国企業が大きく進んでいると言える。
業種別の取組状況では情報通信業と金融業の全社的な取り組みが進んでいるという点で日米の傾向は似ているが、製造業の全社的な取り組みの割合に関しては日米差が大きい。
DX白書2021
https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/dx-2021.html
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