text:菱沼 章太朗 日本IBM
日本IBMが2020年6月に発表した金融サービス向け「デジタルサービス・プラットフォーム」(以下、DSP)の基盤構成の詳細について、2020年10月に当サイトで記事を掲載し、多くの皆様から反響をいただいた。
DSPは、「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」の中核ソリューションの1つで、発表後もサービスのリリースや構築がいくつかあり、DSPをご提供する側の我々チーム内にも活用のためのノウハウが蓄積されつつある。
DSPについては、「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」の名で示されているように、お客様のご迷惑にならない範囲で極力ナレッジの公開をすすめることで、さらなる発展と洗練ができると考えている。そしてその一環として、2021年4月21日に開催された日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング主催のカンファレンスにおいて「DSP 冒険の書」と銘打つ4時間(4コマ)の講演を行った。
この講演は合計で約650人の参加者に視聴いただき、平均で90ポイント以上の満足度(NPI)を得ることができた。これは新しい価値をお届けできている結果だと考えている。本稿は当日発表した内容を基に、当サイトの読者向けに執筆したものである。
本稿は、以下の3つの章で構成されている。
1章 ログ管理システムの構築
2章 ジョブ管理システムの構築(7月13日掲載予定)
3章 クローン環境の構築(7月14日掲載予定)
1章のログ管理は、コンテナ環境において大きく運用が変わるものの1つである。DSPはマルチテナントなプラットフォームであるため、よりいっそう工夫が必要になる。本章では、さまざまな種類のログの管理方法についてナレッジを共有する。
2章のジョブ管理は、実装方法の方針を決める最初の段階から悩まされたテーマだった。業務ジョブをコンテナ環境で実装する例がほとんどなかったからである。調べてみると、ジョブの部分だけは仮想サーバー上で動かすパターンや、コンテナでジョブを実行する場合でも仮想サーバーからコマンドを実行をしているパターンがほとんどだった。
その一方で、大規模な業務ジョブを実行するには「IBM Workload Scheduler」(IWS)のようなジョブ管理基盤が必要であると考えており、それをマルチゾーンやオートスケールといったクラウド固有の要件にどう対応させるかが課題であった。本章では、これらの要件に対するソリューションのナレッジを共有する。
3章のクローン環境は、金融機関の既存環境の活用や企業方針などに対応するソリューションの一環として発表当初から構想されていたが、適用するお客様が出てきたので検討を進めた。そのノウハウを活かすためのヒントとなるナレッジを共有したい。
菱沼 章太朗 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 金融第二事業部
エグゼクティブ・アーキテクト
TEC-J Steering Committeeのメンバー
大手金融機関を担当するSEとして、お客様のビジネス変革を実現するプロジェクトをアーキテクチャ面でリード。近年はトークンサービスプロバイダーやデジタル通貨の発行などを実現するために、クラウドやOpenShiftの技術を活用したプロジェクトに従事している。
DSP冒険の書 Contens
0章 はじめに ~発表から1周年を迎えたDSP
1章 ログ管理システムの構築
2章 ジョブ管理システムの構築
3章 クローン環境の構築
このサイトの掲載内容は著者自身の見解であり、必ずしもIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。
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