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企業間「書類取引」の成功へ向けて ~電子化のスコープ、合意形成の仕組み、賛同を得る3つのポイント|エキスパートに聞く

企業間で交わす電子的な書類取引は、相手先の賛同を得ないことにはシステム導入が進まない。その賛同を得るポイントは3つあると、日鉄日立システムソリューションズの吉留宏和氏は指摘する。また導入を効果あるものにするには、書類間のつながりや合意形成の仕組み、「書類取引」前後のシステム化など考慮事項は多々あるという。それらのポイントを吉留氏にうかがった。

吉留 宏和

日鉄日立システムソリューションズ株式会社
営業統括本部
ソリューション営業部
シニアマネジャー

 

書類間のつながりを
考慮しない電子化が多い

i Magazine(以下、i Mag) 取引先とやり取りする書類にはいろいろな種類があり、その保管も考慮しなければなりません(図表1)。電子化を進めるときは、どこから整理すればよいですか。

吉留 企業間でやり取りする書類を大づかみに整理すると、請求書のような取引先に送るだけのものと、注文書・注文請書のような取引先に送ってその処理結果を返してもらうものの2つに分けられます。しかし角度を変えて考えてみると、企業間でやり取りする書類は必ずどこかでつながっているはずです。たとえば見積書、注文書、注文請書、請求書、納品書、支払通知書などは一連の取引で発生する書類ですし、その記載データは引き継がれています。書類間のつながりを考慮するのとしないのでは、電子化の取り組みが大きく違ってきます。

図表1 書類の企業間取引で必要になる4つの形態
図表1 書類の企業間取引で必要になる4つの形態

i Mag そう指摘されるのは、書類間のつながりを考慮しない電子化が多いということですか。

吉留 多いですね。ご相談をいただいたお客様に取引関連の書類の整理をお願いすると、1つ1つの書類が個々別々の書類のようにリストされることが少なくありません。その中の一部の書類をスポット的に電子化しているケースも多くあります。

i Mag それは書類の担当が分かれているからでしょうか。

吉留 それもあります。発注する人と請求書を送る人が異なるので、それぞれ別の書類のように捉えているのです。また書類の作業とその前後の作業を分けて考えているので、書類間のつながりが見えにくくなっているのだろうと思います。

i Mag そのようなユーザーに吉留さんはどんな話をしているのですか。

吉留 弊社がご支援した事例の話は必ずします。電子化の範囲をどのように検討したかというような話ですね。たとえば注文書の電子化だと、担当者が注文書を作成して送付するだけのシンプルな電子化もありますし、注文書作成の前工程に申請・承認のワークフローの組み込むことも考えられます。また注文書データを取得するための基幹連携なども視野に入ってきます。書類の電子化を考えるときは、前後の作業やフローも念頭に置かないと正しい検討を行えません(図表2、図表3)。

図表2 注文書・注文請書の事例
図表2 注文書・注文請書の事例
図表3 相殺計算書の導入例
図表3 相殺計算書の導入例

ほんとうに便利になるのか
合意形成の仕組みはあるか

i Mag そのときの話のポイントは何でしょうか。

吉留 書類の電子化によってお客様の業務が便利になるかどうか、に尽きると思います。さらに加えると、取引先にもメリットがあることが、もう1つのポイントです。

今、書類の電子化や電帳法対応をうたう製品が非常に多いので違いがわかりづらいのですが、業務がほんとうに便利になるのか、という視点で考えていただくとよいと思います。

i Mag その違いを説明していただくとどうなりますか。

吉留 たとえば図表4は、紙で送付していた発注見積をあるサービスを導入して電子化した例で、導入企業は電子化によって見積書の印刷・封入・発送作業を不要にしたので省力化を実現しています。しかし取引先の作業と、取引先から回答書を受け取ったあとの自社の作業は元のままです。これだと取引先にとっては以前と変わらず、導入企業にとっても半分の効果しかありません。

これに対してDocYouを利用した場合は、導入企業も取引先も作業を画面上で完結できるので、大きな効率化が期待できます(図表5)。

図表4 発注見積書の電子取引 ~一般的な請求書管理サービスの場合
図表4 発注見積書の電子取引 ~一般的な請求書管理サービスの場合
図表5 発注見積書の電子取引 ~DocYouの場合 
図表5 発注見積書の電子取引 ~DocYouの場合 

i Mag 従来は書類を作って印刷して送付していたのを、DocYouでは「同意」「却下」のクリック1つで済ませることができるということですね。

吉留 そうです。そうした合意形成の仕組みを備えているか否かで、同じ電子化ソリューションでも効率化の度合いや「便利になった」という実感が違ってくると思います。

書類電子化で
賛同を得るポイント

i Mag ユーザーはよく、取引先の賛同を得るのが難しいので電子化を思うように進められない、ということを口にします。吉留さんはどのようなアドバイスをしていますか。

吉留 その点に関しては3つあると考えています。1つは安心感、2つ目はコスト、3つ目はメリットです。

取引先にとってセキュリティ面で安全であることは絶対です。書類をやり取りする際のすべてのフェーズで安全性を担保できなければなりません。それと法制度への対応です。この面の安心感も取引先から賛同を得る大きなポイントです。

2つ目のコストについては、取引先にとっては、ビジネスの相手が要望するので電子化に対応するとしても、費用や手間をかけたくないという思いがあります。そうした負担感をいかに軽減するかもポイントです。

i Mag その点でDocYouはどうなのですか。

吉留 DocYouは招待制度があるので取引先に費用はかかりません。またWeb画面上の操作だけですから、誰でもすぐに利用できます。

i Mag 3つ目のメリットはどのようなことですか。

留 先ほどの発注見積の例でもふれましたが、電子化によって取引先も便利になるということが重要です。さらに電子化によってペーパーレス化や業務改革が進むという側面も小さくありません。そうした効用を積極的に話していくのが、賛同を得るためのいい取り組みだと思います(図表6)。

図表6 取引先から賛同を得る3つのポイント
図表6 取引先から賛同を得る3つのポイント

千差万別、書類電子化の
導入・展開のパターン

i Mag 便利になるという点では、電子取引前後の作業のシステム化や基幹システム連携なども重要になりそうですね。

吉留 そのとおりです。書類の電子取引にあわせて申請・承認のワークフローを組み込むのは、ほとんどのお客様が実施されています。また基幹システムの更改にあわせてDocYouを導入し連携させたり、DocYou
を導入してから上位システムとの連携へ進むお客様もおられます。

i Mag 採用を決めたあとは、どのようなスケジュールになりますか。

吉留 お客様の規模と導入内容によって異なりますが、取引先が400社あり書類配信を目的に導入されたお客様は、約3カ月で利用を開始しています。このお客様はシステム構築後に取引先への提案を開始し、賛同を得た企業から導入していくという展開方法を取りました。

また取引先が2600社あり、電子契約、電子取引、書類配信、ドキュメント管理の仕組みを導入したお客様は、システム構築と並行して取引先への提案を行い、本番開始と同時に多数の取引先と電子取引をスタートしました(図表7)。

図表7 2社の導入展開スケジュール
図表7 2社の導入展開スケジュール

i Mag 相手のある書類の電子取引だと、導入・展開のパターンはいろいろですね。

吉留 はい。あるお客様は電子取引の対象を1つの書類に絞り、すべての取引先への働きかけが一巡したところで次の書類の電子化に取り組むという展開方法を採用しました。また別のお客様は電子取引を行う取引先を1社に限定し、その会社とはすべての書類を電子化すると決めて取り組んでいます。柔軟な展開が行えるのも、ツール/サービスを選択するときのポイントだと思います。


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