本コラムの第2回で、変革を成功させる組織文化の醸成に必要なキーファクタとして、「今を疑う」ことの大切さをお話ししました。
これまでのお話しと重複しますが、今の会社には、昨年6月に転籍しました。まだ転籍から2年も経ちません。
私は現在の会社では変革者・改革者役として、時には社内外の抵抗勢力とぶつかりながらも、「今を疑い」「高速に仮説検証し」「変革を推進して、新しい事業を創出、そして変革して事業拡大を目指す」、そんな経営層の役割を担っています。
私は、今まさに「今までの枠組みにとらわれない」「今を疑う」を心がけ、また実践しているところですが、思い返すと、過去にも何度かそんな挑戦をしてきました。
古くは学生時代まで遡ります。大学では体育会サッカー部に所属し、最上級生になった時にはチームの主将を任されました。その頃も、「今を疑う」を実践していました。
私が大学生だった頃の体育会では、上位下達で先輩の言うことは絶対、下級生は先輩の言うことには原則従うことが正とされているようなカルチャーが根付いていて、私の所属した大学サッカー部だけでなく、多く大学で同じようなことがうかがえました。
振り返ると、「昭和な」という表現で揶揄されるようなカルチャーだったと思います。
高度経済成長を遂げていた昭和の時代に、「考えるより動け」というカルチャーを叩き込まれた体育会出身者は、企業でも重宝された時代でもあり、昭和を象徴するような気質だとも思います。
私はその当時、そんな体育会の常識に疑問を持ちました。挨拶やマナー、気遣いといったチームメイトやチームに関わる多くの関係者をリスペクトするという、どんな時代にも通用するよき体育会文化もありましたが、一方で、雑用は何でも下級生、特に一番立場の弱い一年生というのに疑問を持っていました。
ですので、そういう慣習をなくす活動指針を打ち出し、一年生がやることが当たり前だったことを学年に依存せず、部員全員でやることにしました。
自分たちが下級生の時の慣習をひっくり返されたチームの上級生たちの一部には、それをよしと思わないメンバーもいましたが、その抵抗勢力と対峙しながらも、変革・改革を断行しました。
「今と同じだなぁ」と、ふと思い出し、DXをリードする人材、体現できる人材は、そんな意識改革、「Behavior Transformation」を求められているのかもしれないと思います。
私はかつて、プロジェクトマネジメント学会の2012年度春季研究発表大会にて、「サッカー監督に共通するPMのメンタリティ」という論文発表をしたことがあります。
大切なメンタリティとして、「次を考える心理状態=Next Mentality」をその1つとして紹介したのが、次の図表です。
「現状に満足しないで高みを目指すネクストメンタリティ が求められる」とありますが、これは、正に「今を疑う」から始め、できない理由を思い込まないことだと振り返っています。
私自身、変わる勇気を持って、その勇気を奮い立たせる仲間を社内に少しでも増やして、会社の変革に少しでも貢献するために尽くしたいと考えています。
正しいと思うことを前に進める勇気を持ち続けたいと思います。
一方でこれまで培ってきた我々がお客様や社会に貢献してきた、変えてはいけない価値は、変わらない勇気を持って、守っていきたいとも思っています。
田中良治
株式会社ソルパックCDTO 取締役
(一般社団法人CTO協会、一般社団法人プロジェクトマネジメント学会所属)
プロジェクトdX|実現を支えるプロフェッショナルの流儀は人間力
第1回 今こそ変革の武器に! 日本企業の持つ強みは元サッカー日本代表監督イビチャ・オシム氏も評する“現場力”
第2回 変革実現に求められる企業カルチャー(前編) ~対極の発想をする
第3回 変革実現に求められる企業カルチャー(後編)~経営層の意識改革
第4回 DXプロジェクトがこれまでのプロジェクトと異なる理由
第5回 迫られる企業経営変化への対応と変革に必要とされる3つのエンジン