筆者の所属するCTO協会では、変革実現に求められるのは、企業カルチャーの変革であることを強く訴求しているので、前回はそれをご紹介しました。後半となる今回は、経営層の意識改革を後押しする経団連や経産省の取り組みもあわせてご紹介します。
日本CTO協会では、5つのポイントでDXへの準備段階レベルを自己診断できる「DX Criteria」を発表しています。
DX Criteriaでは、Digital Transformationとともに、Developer eXperience をDXと呼んでいて、2つのDXを一体で捉えた基準作りをしています。その中で、とくに企業カルチャーに紐づくポイントが下図に示すPoint1とPoint4です。
高速な仮説検証を何度も繰り返せる組織風土やチーム文化を醸成し、変革を完成形に導くには、アジャイルな開発~実装~検証を可能にする環境への投資が重要とされています。
これまでの企業ではスタートアップを除き、経営者は形としての成果が見えない投資には慎重で、なかなか実施に踏み切らない面が多々あったため、ここにフォーカスしています。Developer eXperienceの向上を実現するための投資でもあるわけです。
また学習する組織 振り返りをする学習カルチャーを醸成し、成功体験であっても古い常識を忘れて、学びほぐすというのがPoint4です。これまでの成功体験と古いこれまでの常識は、時にニューノーマル創出の障壁になります。
また失敗は、それを振り返り、真因を深堀りすることが次につながり、次の成功を後押しします。高速に仮説検証する中では、失敗も繰り返しますが、その都度、次のステップの糧にできる文化が重要なのです。
しかもその評価において定量化・可視化し、論理的根拠を明らかにすることが、多くの共感を得るうえで重要になります。またこれは実は失敗だけでなく、成功にも同じ行動文化が求められます。それができれば、成功体験やこれまでの常識を忘れることの必要性も理解できるようになるはずです。
次に、経営層の意識改革を後押しする経団連や経産省の取り組みをご紹介します。
東証一部上場企業が対象ですが、デジタルトランスフォーメーションの促進に向けて「DX銘柄」等の選定の発表がありました。
DXへの取り組み(ビジネス・業務の変革)を事業評価に加えることで、経営層の意識改革の後押し効果になると期待されています。「経営層が判断し、リードする」という成功する組織のキーファクターを企業にもたらすトリガーになると期待しているのです。
このような対策を経産省が主導したのですが、それにもかかわらず変革が進まない、対応の遅い企業が大半を占める現状に対して、経産省発行の「DXレポート2(中間とりまとめ)」ではその実態を定量化・可視化し、危機感を募らせています。
次回は、DXプロジェクトがこれまでのプロジェクトと比較して難しいとされる理由と、それにより変化が迫られるチームマネジメントの在り方についても、変革実現に必要な企業カルチャーの根拠の妥当性を訴求する仮説の1つとしてご紹介したいと思います。
田中良治
株式会社ソルパック
CDTO 上級執行役員(一般社団法人CTO協会所属)
プロジェクトdX|実現を支えるプロフェッショナルの流儀は人間力