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プロジェクトdX|南の島ですすむ持続可能な社会への挑戦 ~「島とデジタル」座談会に参加して(田中良治)

社会貢献、特に社会の持続を阻害する課題の解消に取り組むことは、企業が社会へ還元する利益として認識されるようになりました。その利益創出への認識の高まりは、企業の存在価値が社会から認知されることについて経営がもっと重要視するべきということを示しています。企業が存在価値の実現に取り組むことは、社員には働きがいをもたらし、それを目指す企業の成長が実際に顕著になりつつあるのです。

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の課題であるとともに国をあげて取り組むべき課題として、「デジタル田園都市国家」構想にその方向感が示されています。DXはそれほど喫緊の課題なのです。デジタル田園都市国家構想については、内閣官房のサイトに次のように記されています。「デジタルの力で、地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図ります。そして、『地方に都市の利便性を、都市に地方の豊かさを』を実現して、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指します」。

SDGsを提唱している国連も、SDGs 9番の中で「SDGsはデジタル技術の発展により達成される」と唱えています。そしてそれを体現するような先進的な取り組みをすすめる沖縄県宮古島では、持続可能な島づくりにデジタル技術が密接に関わることから(特に再生可能エネルギー分野)、「島とデジタル」をテーマとする座談会が今年2月14日に宮古島市役所で開催されました。宮古島市が推進する“エコアイランド宮古島”構想に賛同し、取り組みをリードする方々が集まった座談会です。

私は、エコアイランド宮古島構想を行政とともに推進する「離島未来ラボ」の大島康生代表とご縁があり、座談会のファシリテーターのオファーをいただきました。企業の利益が社会に還元されるべきである以上、座談会のファシリテーターをお引き受けすることに迷いはありませんでした。

座談会では、「来間島(くりまじま)マイクログリッド」(*1)などの再生可能エネルギープロジェクトに対する島民の理解を高めるための情報宣伝や、エコ活動そのものの必要性や重要性、有効性について認識を深めてもらうためのさまざまな取り組みが紹介されました。

*1   宮古島市の来間島における「来間島地域マイクログリッド構築事業」。2022年2月から実証実験が進められている。

またプロジェクトの過程で生じた障壁、実証実験を行うことで判明した課題など、実務を推進されてきた方々ならではのご苦労もお聞きすることができました。

さらに、座談会出席者の「今取り組んでいることは宮古島市および沖縄県への貢献となり、さらには日本全体の環境問題を解決に導くリファレンスの1つになる」という確固たる信念も感じ取ることができ、その思いは必ず島民の方々に伝わると確信しました。

プロジェクトをリードしマネージしてきた代表の方は、「不撓不屈」を座右の銘とすると語っていました。失敗を失敗として終わらせない、その行動力と情熱、実践に大変な感銘を受けました。

また、座談会に出席された宮古島市エコアイランド推進課の方、そして沖縄県内の離島のほぼ全域で再生エネルギープロジェクトの立ち上げてきた株式会社ネクステムズの方のお話やメンタリティ、パッションは、新しい取り組みに挑戦してきた私にとって刺激になるだけでなく、勇気と元気をもらうことにもなりました。

現在、実証実験中の来間島マイクログリッドでは、リファレンスモデルの検証が終わり、実用化に向けた一歩を踏み出しています。そして、これから出てくるであろう実用化へ向けて乗り越えるべき課題にはデジタルが力になるという期待と、それを確信させるテクノロジーの進歩を共有することができました。

以上の詳細は、まもなく発行される(3月予定)宮古島市の季刊誌『島の色』で紹介されますので、そちらに譲ります。関心・興味のある方は、ぜひご一読ください。

こういった座談会に出席でき、私にとってはカーボンニュートラルの実現、環境課題の解消に向けたデジタルへの期待値を理解するよい機会となりました。IT業界での経験値や学んできたことは、社会が持続していくうえでの課題解決に貢献できることも再認識できました。そしてそれを実現できる人材に求められること、期待される能力について、以下のように整理してみました。

1.柔軟な発想
2.課題解決、問題解決能力
3.これまでの常識や過去の成功ばかりにとらわれない
4.失敗は成功するまで、それを乗り越える精神力と振り返る分析力

上記1、2は、既存製品や技術の仕様を知っていて、それを適用するプロダクトアウトなアプローチだけではなく、テクノロジーを組み合わせて実現する方法・方式を考える応用力こそがこれからの人材、今風に言うとDX人材に求められることと理解しています。

座談会ではデジタルへの期待やデジタルで解決・解消できないかと期待されている事柄をお聞きでき、個客(人)体験の高度化はデマンド、ニーズがこれまでにはないものに多様化していることも再認識できました。

今の時代にこそ求められるリスキリング(学び直し)の必要性について、次回のコラムに続けたいと思います。


・島の色公式サイト https://shimanoiro.site/
・島の色|エコアイランド宮古島https://eco-island.jp/projects/projects-shimanoiro/
・「沖縄は「再エネ不毛の地」か 火力9割、脱炭素の道探る」日本経済新聞2023年2月1日(有料会員記事) 
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC124A00S3A110C2000000/

著者
田中 良治 氏

株式会社ソルパック
取締役CDTO
(沖縄経済同友会、一般社団法人日本CTO協会、一般社団法人プロジェクトマネジメント学会所属)

プロジェクトdX|実現を支えるプロフェッショナルの流儀は人間力  ◎コラム掲載

第1回 今こそ変革の武器に! 日本企業の持つ強みは元サッカー日本代表監督イビチャ・オシム氏も評する“現場力”

第2回 変革実現に求められる企業カルチャー(前編) ~対極の発想をする

第3回 変革実現に求められる企業カルチャー(後編)~経営層の意識改革

第4回 DXプロジェクトがこれまでのプロジェクトと異なる理由

第5回 迫られる企業経営変化への対応と変革に必要とされる3つのエンジン

第6回 これから企業が取り組むべく3つのトランスフォーメーション・ロードマップ 

第7回 デジタル先進企業へ進化するための3つのポイント

第8回 デジタルトランスフォーメーションで高度化する事業活動

第9回 DX人材になることは自身の意識改革? Behavior Transformationかも?

第10回 DXと千羽鶴 変わる勇気と変わらない勇気

第11回 デジタルトランスフォーメーション実現には、人材育成変革が必然

第12回 デジタルトランスフォーメーションへの挑戦 ~ソルパックの取り組み、その先の真の変革

第13回 2022 FIFA ワールドカップに見る「デジタルトランスフォーメーションがもたらした勇気」

[i Magazine・IS magazine]

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