手 法 ── FileVolanteを核に連携ソリューションを導入
今 後 ── 対象帳票を拡大しグループ各社へ同じ仕組みを提供
電子帳票システムを核に
課題解決に取り組む
設備基本計画から資材調達・建設・試運転まで、王子製紙のプラント建設業務を分社化することで誕生したのが王子エンジニアリングである。
現在は王子製紙グループの総合エンジニアリング会社として、紙パルプ・紙加工プラントにとどまらず、動力・化学・環境プラントのコンサルティングから、設計・施工・メンテナンスまで、広範な事業を展開している。
また最近ではエネルギー問題に高い関心が集まる中、同グループで培ってきた再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術・経験を活かし、バイオマス発電やエネルギー削減に関する提案活動を活発化している。
同社ではSystem i 520上で工事管理や原価計算、管理会計などの基幹システムを運用しているが、帳票基盤の刷新に向けて最初の一歩を踏み出したのは2003年9月に遡る。ある電子帳票システムを導入し、約300種類の帳票を電子化。社内に多数導入されていた5577系の専用プリンタを撤去し、IBM iからの出力をオフィス複合機やレーザープリンタへ移行して、大きなコスト削減を実現している。
しかし2008年10月、この電子帳票システムが後継製品の発表に伴い、2011年3月をもってサポート切れになることが判明した。システム部門の役割を担う業務本部管理部の川上是好氏は、後継製品の価格や機能性に格段の魅力を感じなかったことから、新たな電子帳票システムの導入を検討し始めた。そして2009年3月に、IBM iのプリンティング関連のセミナーで出会ったのが、「FileVolante」(JFEシステムズ)である。
川上氏が評価したのは、電子帳票システムとしてのFileVolanteの導入実績が豊富なことや機能・操作性に加え、IBM iのスプールデータからPDFを生成する「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)や、クラウド型のFax /メール送信サービスである「@Tovas」(コクヨS&T)などの連携ソリューションが提供されている点である。
「 Faxサーバーの運用に関する問題点やPDFの活用といった課題が、これらのツールを連携させることでトータルに解決できるのではないかと感じました」(川上氏)
例えば同社では、取引先への支払通知書を、System iから自動でFax送信している。ただしこのFaxサーバーは、スプールデータを市販のFaxソフトと連携させて自動送信するプログラムをVisualBASICにより手組みで作成したもの。
WindowsやVisual BASICのバージョンアップなどに対応できないため、請求書など他の帳票への適用拡大を含め、新たなFax送信の仕組みを必要としていた。@TovasであればFaxサーバーを利用せず、IBM iからサーバーレスでFax送信できるためそれを解決できると考えたのである。
導入の決定は2010年3月。別システムの新規導入や、別案件のシステム改修を優先させたため、帳票の設計や取引先との調整作業などを経て、新たな電子帳票システムが本稼働したのは2011年11月のことである。
郵送料や通信費
作業時間を削減
新しい帳票基盤の構成を見てみよう。まずUT/400-iPDCによりIBM i上でPDF化されたデータは、「UT/400ファイル転送オプション」を経由して、Windowsサーバー上で稼働するFileVolanteに送られる。FileVolanteはPDFデータを受け取り、独自のファイルフォーマットに圧縮変換して電子帳票化する。ユーザーは専用ビューアを使って高速検索・複合検索やExcelへのデータ抽出などを実行する。
また「UT/400-iPDC自動表示オプション」により、帳票プログラムと連動して自動的に要求したクライアントPC上でPDFを表示させ、ボタン1つでオフィスプリンタへ印刷することも可能。例えば現場で工事管理に携わる技術者は、約10種類の管理帳票を、電子帳票の専用ビューアを使わずに、PDFで参照するなど、PDFファイルと電子保管帳票の使い分けが進んでいる。
さらに、「UT/400-iPDC @Tovasオプション」を経由して、@Tovasへ請求書や支払通知書などのPDFデータを送信する。@Tovasサービス側では、受け取ったPDFを取引先へダウンロード形式(証跡管理)のファイル送信としてメールで自動送信する。
クラウドサービスを活用した自動送付の仕組みは支払通知書だけでなく、取引先への請求書にも広がった。
そして「UT/400ダイレクト印刷オプションfor FUJI Xerox Devices」を経由して、富士ゼロックス製のオフィス複合機にIBM iから直接印刷する。同グループでは2009年頃から富士ゼロックスのオフィス複合機への全面移行を進めていたため、同オプションによりプリンタ資源を有効に活用できるようになった。
さらに請求書の郵送や支払通知書のFax送信の大半をメール(ファイル送信)に切り替えたため、郵送料や通信費、郵送作業時間の大幅削減を実現。コストは従来と比べて約10分の1に削減された。
同社では事業部ごとに運用している注文書などの帳票について段階的に@Tovasでの送信に切り替えることを検討している。またSystem iで基幹システムを運用しているグループ会社4社にも同じ仕組みで帳票基盤の刷新に取り組んでいくとのことである。
COMPANY PROFILE
設立:1964年
本社:東京都中央区
資本金:8億円
売上高:199億円(2010年度)
従業員数:378名(2012年3月)
http://homepage.ojieng.co.jp/