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石井食品株式会社

3.11後のBCP強化内容

・クラウドサービスと「Hybrid SINC」の利用でサーバーを二重化
・首都直下地震を想定し大阪のデータセンターを採用
・今後は安否確認システムなど段階的にBCP策定へ

 

3.11前のBCP
具体的な災害対策には未着手
自家発電装置で計画停電を切り抜ける

「 イシイのミートボール」を筆頭に、各種のチルド食品や 冷凍食品、調理用ソースなど多彩な食品を製造・販売す る石井食品。

「地球にやさしく、美味しさと安全の一体化を図る」こ とを企業理念に、同社は2次元データコードを使用した 品質保証番号システムによる徹底した品質管理や厳選 素材の利用、その素材の美味しさを最大限に引き出すた めに、社内での製造過程で食品添加物を使用しない無添 加調理という三原則を掲げている。

その安全性から食物アレルギーに悩む子供たちのレ シピとして、また最近では災害発生時の非常食としても 高く注目されている。

本社は千葉県船橋市にあるが、主力工場である千葉県の八千代工場(千葉県八千代市)のほか、佐賀県の唐 津工場と京都府の京丹波工場など国内に3カ所の製造 拠点を擁する。

同社は20年近く前に国産汎用機からAS/400へ移行し て以来、一貫してこのプラットフォーム上で販売管理システムを運用してきた。東日本大震災の前はSystem i をは じめ、経理・人事システムが稼働するWindowsサーバーなど、一連のサーバー群を八千代工場の一角にあるサー バールームに設置していた(生産管理システムが稼働す るPCサーバーは各工場に個別に導入されている)。

「昨年3月11日は、八千代工場に大きな被害はなかった ものの、八千代市一体は翌日朝まで停電。受注業務は 八千代・唐津・京丹波の3工場に集約しているため、八千代工場の停電でSystem iが停止し、唐津・京丹波工場 での受注業務も全面停止しました」と語るのは、石井隆 執行役員(管理本部 総括マネージャー)。

その日は結局伝票が出力できず、受注・出荷ともに業 務を停止せざるを得なくなったという。

その後、同社では早急に自家発電装置を手配し、八千 代工場にも導入した。東京電力が実施した計画停電のエ リア内にあったため、実際に数回停電を経験することに なったが、自家発電装置によりサーバールームの電力供 給は保たれたため、地震当日のようなシステム停止は回避することができた。

石井 隆 氏 執行役員 管理本部 総括マネージャー
石井 隆 氏
執行役員
管理本部 総括マネージャー

3.11後のBCP
クラウドサービスの利用で
サーバーを二重化

同社では2010年頃から、内部統制の一環として災害対 策プロジェクトを発足させ、リスクコンサルタントを招い ての研究を進めていた。ただし多くの企業と同様、大震災の発生に現実感が伴わなかったためか、システム面を含めて具体的な対策が進展することはなかったという。

しかし3.11後は、あらためて災害対策の必要性を検討し直すことになった。とくに地震当日の状況を目の当 たりにし、業務システムとデータの保全は優先度の高いテーマとして浮上した。自家発電装置はあるものの、長 期の停電に対応できる燃料の確保が難しく、またバッ クアップテープは同じサーバールームで管理していたた め、データ保全にも課題があると考えられた。

そこで安否確認や行政との連携、避難所の提供や備 蓄品の準備を含めた全社的なBCP対策は部門にまたが る全社プロジェクトとして推進する。しかしシステムの 安全性を守るためサーバーの二重化対策だけは、これとは別に先行して進めることになった。

そして計画停電への対応が落ち着きを見せ始めた昨 年5月から、システム部門による具体的な手法とベンダー の選定作業がスタートした。同社では首都直下地震によ る八千代工場の建物損壊や停電、津波などの被害を想定。 以下の3つの選択肢を検討した。

①八千代工場にある本番機をデータセンターにハウジ ングする

②バックアップ機としてもう1台を導入しHAソリュー ションで同期する

③クラウドサービスの利用でバックアップ環境を構築する

そして最も短期間かつ低コストでの実現が可能と判 断し、③の手法をさらに検討。結論として、大阪市の データセンターを活用したベル・データのクラウドサー ビスを利用して本番環境を設定する一方、八千代工場 側のSystem iはバックアップ機として運用。両者をHA ソリューションである「Hybrid SINC」(ヴィンキュラム ジャパン)で同期することを、2011年8月に決定した。

「 データセンター側のクラウド環境に本番機を設定した のは、八千代工場に置く場合と比較して、リスクが低い と判断したため。このクラウドサービスは首都圏のデー タセンターを選択することも可能でしたが、首都直下地 震を想定すると、首都圏のデータセンターは避けたいと の判断が働きました」と、高原芳隆マネージャー(管理 本部 ITサービス・システム担当)は指摘する。

サービスインは2011年10月。2012年2月より、経理・ 人事システムが稼働するWindowsサーバーを、同じデー タセンターにハウジングする対策も講じている。

同社ではこれにより、とりあえずサーバーの安全性は 高まったと考えている。今後は安否確認システムを導入 し、災害発生時は携帯メールによりコミュニケーション 維持を図ることを決めるなど、本格的なBCP策定に向け、 少しずつ歩を進めていくという。img_56fd5fd822c33

高原 芳隆氏 管理本部 ITサービス・システム 担当マネージャー
高原 芳隆 氏
管理本部 ITサービス・システム
担当マネージャー

 

 

CompanyProfile
本社:千葉県船橋市
設立:1945年
資本 金:9億1960万円
売 上高: 106億1500万円 (連結、2011年3月)従業員数:340名(連結、3月末時点)
業務内容:食品の製造・販売
http://www.ishiifood.co.jp/