米Broadcomは5月26日(米国時間)、VMwareの買収を発表した。買収価格は610億ドル(約7兆7000億円)で、現金と株式交換により実施する。さらにVMwareの80億ドル(約1兆円)の負債も引き受ける予定で、総額は9兆円近い規模になる。ちなみIBMによるRed Hat買収は340億ドルだったので、今回の買収はその2倍以上の規模となる。
Broadcomは、1961年創業の半導体・エレクトロニクスおよびソフトウェア製品のメーカー。ネットワークや通信用の各種製品やスマートデバイス用半導体などの製造で知られ、2006年に現CEO兼社長のホック・タン(Hock Tan)氏が就任してからは積極的な大型買収戦略に転じ、企業規模を拡大してきた。主な買収企業としては、2014年のLSI Corporation、2016年にBROCADE、2017年のCA Technologies、2019年のSymantecの法人部門などがある。
一方の1998年創業のVMwareは、2004年にストレージメーカーのEMCに買収され、そのEMCは2016年にDell(その後Dell Technologiesに改称)に買収され、さらに2021年にDell傘下からスピンアウトし独立するという変遷を辿ってきた。この間、仮想化市場を切り拓いて市場をリードし、近年はクラウドコンピューティング分野のソリューションでも注目を集めている。
Broadcomの2021年売上高は274億5000万ドルで、半導体ソリューションが74%(203億ドル)、インフラストラクチャ・ソフトウェアが26%(70億ドル)という売上構成比。VMwareの買収後は、半導体ソリューション51%、インフラストラクチャ・ソフトウェア49%となり、400億ドル規模の企業になるとしている。
Broadcomでは、このインフラストラクチャ・ソフトウェア事業をVMwareの買収完了後、VMwareとして再ブランド化することを公表している。同社では、「BroadcomのソフトウェアとVMwareの先進的プラットフォームを組み合わせることにより、データセンターからクラウド、エッジコンピューティングまで、多様な環境に分散する大規模なアプリケーションを構築、実行、管理、接続、保護するための選択肢と柔軟性を高めることが可能になる」とし、その一例としてアプリケーションのライフサイクル全体をカバーするセキュアなソリューションを挙げている。
また、VMware買収の効果として以下の6点をアピールしている。
・確立され、成長する市場の獲得
仮想化は大規模であり、かつファンダメンタルな市場
・リーダーとしてのポジション
プライベートクラウド・インフラストラクチャのリーダーとして、製品ポートフォリオを提供
・ミッションクリティカル分野での優位
ミッションクリティカル分野でどのクラウドにも偏らないソフトウェア・ポートフォリオの提供
・大規模な企業顧客基盤の獲得
プライベートクラウドとマルチクラウド環境を活用する多国籍の主要顧客
・長い企業史と保有する強力な知的所有権群
VMwareは5000件以上の特許を保有
・魅力的な財務的ポチュニティ
買収により85億ドルのプロフォーマEBITDA(会計調整)
[i Magazine・IS magazine]