旭化成は5月24日、再生プラスチック製品のリサイクルチェーンや原料などの可視化を目的とするプラスチック資源循環プロジェクト「BLUE Plastics」(ブルー・プラスチックス)の発足と、プロトタイプを用いた実証実験を2022年3月末までに開始する、と発表した。システム基盤には、IBM Cloudのブロックチェーンサービスを利用する。
持続可能な社会へ向けた資源循環社会の構築は日本および世界で課題となっているが、プラスチック製品は、排出される廃棄物の20~50%の重量を占めるにもかかわらず、リサイクル利用される割合は世界全体で10%程度、日本は20%台にとどまっている。
その結果、再生プラスチック製品の利用が進んでいないが、利用が進まないもう1つの理由として、消費者が安心して利用できる環境が整備されていない点が指摘されている。
BLUE Plasticsは、その問題を解決するための取り組みで、再生プラスチック製品に原料のリサイクル比率やリサイクルチェーンに関わる企業名などを明示することにより消費者の安心感を醸成し、行動変容を促することを目的としている。
プロジェクトの特徴は、再生プラスチック製品のリサイクルチェーンにかかわるすべてのステークホルダーが参加可能な仕組みである点と、その仕組みを実現する基盤としてブロックチェーン技術を採用した点。ブロックチェーンのステークホルダー全員がアクセス可能でありながらデータの改ざんが行えないという技術を利用し、リサイクルチェーンの透明性とデータのトレーサビリティを担保する。
プロジェクトの発足時は、消費財メーカー(旭化成、ライオン)、原材料メーカー(富山環境整備)、プラスチック成型加工メーカー(メビウスパッケージング)という再生プラスチック製品のリサイクルチェーンを構成するすべての業種と日本IBMが名前を連ねるが、旭化成では「特定のメーカーや樹脂に限定されるものではなく、今後幅広く参画メンバーを募り、樹脂の種類や用途も拡大していく予定」としている。
実証実験は、一般家庭などから廃棄・回収されるトイレタリーボトル(ポリエチレン製を想定)からスタートする予定。すでに実証実験用のプロトタイプを完成済みで、次の3つの特徴をもつという。
・ブロックチェーンによる認証でリサイクル率を証明
日本IBMのブロックチェーン技術の応用により、消費者はスマートフォンのカメラで再生プラスチック製品に貼付してあるQRコードなどを読み取ることで、再生プラスチックのリサイクル率を確認できる。
・リサイクルチェーンの可視化により消費者の安心感を醸成
消費者は製品のQRコードなどを読み取りによりリサイクルチェーンとプレイヤーを確認できるため、安心感を醸成できる。
・消費者のリサイクル行動の変容を促す仕組みづくり
リサイクル行動にポイントを付すことで、消費者の行動変容を促す。「実証実験や社会実装を通じてさらに効果的な仕組みづくりに努め、新たなリサイクル文化の創造を目指す」(ニュースリリース)
プロジェクトでは今後、ブロックチェーン上で運用する樹脂の種類や用途を拡大し、同業他社を問わず誰もが活用できるオープンなデジタルプラットフォームとして公開し、日本だけでなくアジアへの展開も見据えて取り組むとしている。
◎参考
「マテリアルリサイクルによる天然資源消費量と環境負荷の削減に向けて」(環境省、2016年3月)
[i Magazine・IS magazine]