アクセンチュアは6月23日、日本を含む世界15カ国・1176社の経営者を対象にしたAI調査レポート「『AI活用浸透』の極意：実践から成果へ」を発表した。
2021年8～9月に実施された調査で、1176社の経営者1615人が回答した。1176社の業種は、航空宇宙・防衛、自動車、消費財・サービスなど16業種でほぼ全業種をカバー。調査データの分析には、企業のAI活用浸透度を0～100の数値で総合的に評価するフレームワークを利用し、企業の財務・非財務データも参照した。同フレームワークには、データ、AI、クラウドなどのテクノロジーに加えて、組織戦略、責任あるAIへの対応、経営層のコミットメント、人材、企業文化が含まれるという。
分析の結果、企業はAI活用浸透度によって次の4タイプに分類された。％は全体に占める割合。
・AI活用先進企業：12％
AI活用の戦略や付加価値を生み出す運用能力を兼ね備える企業
・AI戦略先行企業：13％
AI活用戦略は先進的である一方、運用面で改善の余地が残る企業
・AI運用先行企業：12％
AI活用の基礎的な運用能力をもっている一方で、戦略面で改善の余地がある企業
・AI実証企業：63％
AI活用の戦略や付加価値を生む運用能力の両面で成長の余地がある企業
回答全社のAI活用浸透度の中央値は36。これに対して「AI活用先進企業」の中央値はその2倍弱の64で、「（AI活用先進企業は）AIをテコに競合他社を圧倒し、収益成長率も50％高い」と分析。一方、63％と大多数を占める「AI実証企業」の中央値は29で、「AIが持つ潜在力の表層部分しか享受できていない」と指摘している。
AI活用先進企業（下図中の「AI Achievers」）の特徴は、「戦略」「データ活用」「人材・文化」「責任あるAI」というAI関連のカテゴリーのほぼすべてに対して幅広く取り組んでいる点である。これに対して、AI戦略先行企業（同「AI Innovaters」）は、経営層のスポンサーシップを確保し、全社員にトレーニングを施すことに長けているものの、「AIを大規模にサポートするために必要な基礎的能力に欠けている」という弱点をもつ。一方、AI運用先行企業（同「AI Builders」）は、データとAIプラットフォームの構築に優れているが、「AIに精通し、採用を促進するために必要なイノベーション文化を育成する能力は低い傾向にある」という。
業界別では、テクノロジー企業がAI活用浸透度54で、第1位。2024年に60へと緩やかに上昇する見込みという。自動車メーカーやサプライヤーは、AI搭載自動運転車の販売が急増した場合、今後2年で39から57へと飛躍する見込み。小売企業は、AIを活用した変革に積極的で、2024年には現在の38から54へと上昇が予想されるという。
「業界を問わず、AIがビジネスに与える影響力は拡大している」と調査レポートは述べる。世界の大企業のうち決算発表でAIへの取り組みに言及した企業は、株価の上昇が見られる。またAIへの投資も増加しつつあり、2021年にテクノロジー関連予算の30％以上をAI関連プロジェクトに投資した企業は全体の19％だったが、2024年までに49％に増加する。さらに、AI活用浸透度の中央値も現在の36から2024年までに50へと上昇するという。
アクセンチュアのサンジーヴ・ヴォーラ（Sanjeev Vohra）氏は、「AIをビジネスに活用することはもはや選択肢ではない。あらゆる業界、企業、経営陣にとっての必須事項であり、大きなチャンスをもたらす。AIのサイエンス的側面は画期的で刺激的だが、AIの可能性を最大限に活用することは、リーダーが継続的に鍛えなければならない、芸術（アート）的な側面と言える。今回のレポートは、AI活用先進企業となるために企業はいかにAIの活用を進めるべきか、実践的なアドバイスを盛り込んでいる」と述べている。
・解説「AI活用浸透」の極意:実践から成果へ」
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/artificial-intelligence/ai-maturity-and-transformation
・調査レポート「『AI活用浸透』の極意：実践から成果へ」（The art of AI maturity）英語
https://www.accenture.com/_acnmedia/PDF-178/Accenture-AI-Maturity-PDF.pdf#zoom=40
［i Magazine・IS magazine］
