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事例|北陸銀行 物理サーバー300台のシステム基盤をNutanix導入により一新

システム開発を2カ月から2週間へ、運用コストを40%削減

 

 

先進の金融サービス提供へ向けて
積極的なIT・インフラ投資

富山県富山市に本店を置く北陸銀行は、北陸3県と北海道に強い地盤をもち、県外や海外にも支店・出張所を構える大型リージョナルバンクである。北海道に地盤をもつのは明治期の北海道移住者に北陸出身者が多かったことによるもので、その理由を遡ると江戸時代の北陸と北海道とを結ぶ北前船による経済的・文化的に密接な交流に行き着く。明治10(1877)年の銀行創業(前身の金沢第十二銀行)から約20年後の明治32(1899)年に、早くも小樽支店を開設し、北海道進出の足がかりを作っている。そしてこの地縁がもととなり、2004年には北海道銀行と経営統合して「ほくほくフィナンシャルグループ(以下、ほくほくFG)」を設立し、北海道銀行と並ぶ傘下の銀行となった。

北陸銀行では現在、2016年4月〜2019年3月の3カ年を対象とするほくほくFGの中期経営計画「BEST for the Region」を推進中である。そのなかで「営業力の強化」と「経営の効率化」の重点施策として取り組んでいるのが、先進ITの活用によるBPRと、ハイパーコンバージド技術を適用したIT基盤の再構築だ。

「マイナス金利政策や人口の減少、高齢化などで収益性が頭打ちになっているなかで、地域No.1の金融サービスを提供していくためには銀行業務の運用そのものの抜本的な改革が避けられません。先進的かつ最適な金融サービスを可能にする基盤や仕組みへ向けて、積極的なIT・インフラ投資を行っています」と、常務執行役員の多賀満氏は説明する(図表1)

 

多賀 満氏

株式会社北陸銀行 常務執行役員

 

【図表1 画像をクリックすると拡大します】

 

物理サーバー300台の
運用管理に

2016年にはBPR検討のための複数のプロジェクト・チームが管理部門を中心に立ち上がり、システム面では各業務へのワークフローの新規導入、営業支援やグループウェアなどの強化を進めてきたが、このなかで、最大のプロジェクトとして取り組んだのが、仮想デスクトップ(以下、VDI)の改築と、システム基盤の再構築である。

VDIに関しては、2011年へのMEJAR切り替え時に導入し、利用してきた経緯がある。ただし、物理端末約2600台に対して2000台分の導入だったので「朝の始業時間に利用が集中して使いづらい」(富永英司氏、総合事務部システム戦略グループ長)という問題があったほかに、もう1つ懸案事項があった。富永氏が説明する。

 

富永 英司氏

株式会社北陸銀行
総合事務部
システム戦略グループ長

 

「集中化の解消のためにVDIの台数を増やそうとしたところ、仮想環境に構築されていたシステムであるにもかかわらず高額な費用を請求されたことがありました。その件をきっかけとして、システムの構築・運用を外部ベンダーだけに委ねるのではなく、自社でも行えることの必要性を痛感しました」

そして2011年に導入したVDIの基盤が老朽化による刷新の時期を迎え、検討に入った。

一方、同行では、本部系・営業店系・渉外系の約60種類に及ぶ業務アプリケーションを約260台の物理サーバーで、2000台分のVDIを約40台の物理サーバーで運用してきた。このWindowsとLinuxが混在するサーバーの運用・保守がかなりの手間と煩雑さで、「メンテナンスだけにスタッフ70名のうち20〜30名がかかりっきりになっていました」と、北銀ソフトウエアの堀洋人氏(開発第一部担当部長)は振り返る(図表2)

堀 洋人氏

北銀ソフトウエア株式会社
開発第一部
担当部長

 

【図表2 画像をクリックすると拡大します】

 

問題解決には、ハードウェアの削減と
新しいインフラが不可欠

北銀ソフトウエアは、北陸銀行のシステム部門が1986年に独立してできたほくほくFG傘下のシステム会社で、北陸銀行の本部系・営業店系・渉外系システムの構築・運用・保守を担当するほか、ほかの企業へも各種ITサービスを提供中だ。

「北陸銀行へのシステムの納品では、受託からリリースまで1年近くかかるものもあり、いかにすばやく業務の現場にシステムを届けるか、その短期化が従来からの課題でした。それにもかかわらずサーバーは増える一方で、メンテナンスに多くの人員を取られていました。

その問題を解決するには、ハードウェアの数を減らしてシステムをシンプルにすることによるメンテナンス工数の削減と、新規サーバーをタイムリーに構築できるインフラが不可欠です。実は、2011年のサーバー仮想化の導入時にそれを目指しましたが、まだ仮想化技術自体が未熟で実現できず、苦い思いを抱いてきました。いずれは仮想化技術が成熟し、業務システムのすばやい提供が可能になるだろうと考えていました」(堀氏)

また富永氏は、VDIと業務サーバーが同じ仮想化でありながら別々の環境で運用されていることに「大きな疑問を感じてきました」と言う。そして、あるべきインフラは、「クライアント(デスクトップ)とサーバーの仮想化を共通の基盤上で実現し、インフラの追加・削減を自由に低コストで行える環境であるべき、という認識で堀氏と一致していました」と話す。

リソースの増設と性能向上を
最適化できるNutanixに注目

そうしたなかで、堀氏は2015年秋に開催されたあるセミナーでNutanixに出会い、「これなら長年の課題を解決できる」との啓示を受けたという。

「仮想化と分散ファイルシステムの技術を駆使してシステムの信頼性と高いパフォーマンスを実現し、しかも小さくスタートして限りなくスケールアウトできる点に驚かされました。とくに注目したのは、リソースの増設と性能の向上を最適化するクラスタリング技術です。当社の経験では、増設が簡単だと性能が出ず、性能を出そうとすると増設に苦労し、その結果、ベンダーの専門家に頼らざるを得ないことが大半でしたが、Nutanixはその点をクリアしていて、これなら外部に頼らず自分たちだけで構築・運用を行えそうだと確信しました」(堀氏)

北銀ソフトウエアの基幹システム用基盤と銀行システムの開発用として、さっそく4ノードのNutanixを採用。北陸銀行では、その実績をもとにシステムの導入を決めた。2016年春のことである。

ハイパーバイザーには
信頼を置くVMware ESXiを選択

導入したのは、Nutanix Enterprise Cloud PlatformのNX-3000シリーズとNX-8000シリーズで、合計29ブロック(1ブロックは1筐体で、筐体内に1〜4ノードを収容)・45ノードに上る。この上に数百台の仮想サーバー環境を構築し、新たに採用したVDI用のXenDesktop(シトリックス)を構築し、300台の物理サーバーで稼働していた業務アプリケーションを順次、移行中である(図表3)。その結果、システムはきわめてシンプルに整理・統合された。

 

【図表3 画像をクリックすると拡大します】

 

 

Nutanix上で稼働するハイパーバイザーには、VMwareのESXiを選択した。「Nutanix独自のAHVもありましたが、経験があり信頼を置いていたVMwareを選びました。AHVがリリース直後で実績がなかったこともありますが、AHVにすると基盤の環境がすべてNutanixとなりベンダーロックインされる形になることを避ける考えもありました。VMwareならこの先何が起きても、ほかの環境へ簡単に移行できます」と、堀氏は語る。

2016年7月より構築と旧システムからの移行を行い、2017年1月に新システムの利用を開始した。システムの実質的な構築・移行期間は「約2カ月半」だったという。

FinTechの概念実証も
手軽に行え、簡単に撤収

利用開始以降、システムの障害やトラブルはまったく起きていない。新規の仮想サーバーの構築・設定は数クリックで行えるので、数十分で完了している。インフラの運用にかかる要員は3〜4名で済むようになった。従来の人数の1/10である。

導入効果について富永氏は、「これまで平均で約2カ月かかっていた新規システムの構築を2週間に短縮でき、運用コストは40%削減できています。ハイパーコンバージドはまさにレボリューションと言える技術で、10年に1度の革新的なテクノロジーと感じています。すでに、グループ会社の北海道銀行のシステム基盤としての導入も始まっており、両行で同一の環境をもつことによりリソースの共有やBCP対策など高いシナジー効果が期待できます。新しい金融商品やサービスの提供もタイムリーに迅速に行えそうです」と、評価し期待を述べる。

また堀氏は、「FinTech関連の取り組みが北陸銀行でもさまざまな形で進んでいますが、PoC(概念実証)を手軽に始められ簡単に撤収できるのもハイパーコンバージドならではのメリットです。この基盤がなかったら、FinTech用のPoCはできなかっただろうとさえ感じています」と感想を語る。ハイパーコンバージドが金融ビジネスのインフラにもなりつつあるようだ。[IS magazine No.17 (2017年10月)]