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S・ウィル氏が日本で語らなかったこと ~1週間後の米国セミナーでRPG Code Assistantの狙い・進捗状況を詳細に説明

12月3日・4日に開催された「IBM i Advantage」(日本IBM主催)で生成AIによるRPGアプリケーション開発支援ツール「RPG Code Assistant」についての講演を行ったスティーブ・ウィル氏(米IBM IBM i CTO)は、その1週間後(12月11日)の米IBM主催Webセミナーで、RPG Code Assistantについて改めて解説している。

その根幹部分は日本の講演では語られなかったもので、かつウィル氏の過去の講演でも触れられてこなかったものなので、概要を紹介したい。

ウィル氏はWebセミナーの前段で、RPG Code Assistantが今なぜ必要なのかを説明した。背景としては、古いRPGアプリケーションのモダナイゼーションをユーザーが求めていること、IBM iスキルをもつ人材の不足が問題になっているの2つで、そのためにIBMのチームは、次の3つをRPG Code Assistantの目標とした。

・既存のコードの説明
・仕様記述に基づいた、最新のフリーフォーマットILE RPGの生成
・RPGのテスト・プログラムの生成

以上は、ウィル氏によってこれまでに何度も語られてきたことだが、12月11日のWebセミナーでは「RPG Code AssistantのユーザーインターフェースはVisual Studio Codeコードベースの統合開発環境に統合される予定」と語った。

「まだ、その具体的な詳細は決まっていませんし、多くの事柄がIBMの開発チームにとって初めての経験です。ただし、将来的にはGitリポジトリに登録されているRPGコードをクリックしたら、そのコードには何が書かれているかがわかるようになる、と確信しています」(ウィル氏、以下引用はすべてウィル氏)

またウィル氏は、「あるRPGコードを説明するのに、必要な要素が、たとえばSQLなどで書かれていてそのRPGコードの内部にない場合、そのRPGコードとつながっている要素をつなげて説明できるようにしたい。そのためのコンテキストを提供できるようにしたいと思っています」と述べた。

RPGコードを生成するために、RPG Code Assistantに質問を投げて的確な回答を得るためのRAGやプロンプトについては、IBMが行った実験の結果を紹介した。

❶❷は「RPGプログラムの内容と構造について説明してください」という質問の「問」(❶)と「答」(❷)。

「特定の変数名などを持たないという意味で相当に高度な説明になっていて、RPGを見たことがない人でもプログラムの内容が理解できるかと思います」

❶ ~RPGプログラムの内容についての質問(不動産プログラム)
❶ ~RPGプログラムの内容についての質問(不動産プログラム)
❷ ~RPGプログラムの内容についての回答(不動産プログラム)
❷ ~RPGプログラムの内容についての回答(不動産プログラム)

これに対して➌➍は、変数やインジケータ、サブルーチン名などを使って、より具体的な要件で質問した時の「問」(➌)と「答」(➍)。

プログラムについてより具体的な説明が帰ってきているが、これはRAGやプロンプトの作り方をガイドする機能によって可能になっているという。

「ただし、RAGについて、RPG Code Assistantの最初のバージョンで可能になるかどうかは今の段階ではわかりません」

➌ ~RPGプログラムの内容について、より具体的な質問(不動産プログラム)
➌ ~RPGプログラムの内容について、より具体的な質問(不動産プログラム)
➍ ~RPGプログラムの内容について、より具体的な回答(不動産プログラム)
➍ ~RPGプログラムの内容について、より具体的な回答(不動産プログラム)

RPGコードの生成とテストコードの作成については、ウィル氏は次のように話した。

「RPGコードの生成では、IDEにRPGを入力している間に次に何が必要かをリアルタイムで提案してくれる、そうした一種の自動補完機能を搭載したいと考えています。RPG Code Assistantはあなたが何をしたいのかを正確に知っているわけではありません。しかしプロシージャを入力し始めると、そのプロシージャを構文的に正しく理解するためのすべての要素を埋めてくれるものになるはずです」

「同様にテストコードも、RPGコードの一部が与えられたら、それをテストするRPGコードを生成できるようになるはずです」

ウィル氏は、RPG Code Assistantのロードマップについての説明も行った。下図は、その説明に使用された画面である。

RPG Code Assistantのロードマップ
RPG Code Assistantのロードマップ

 

「私たちは今2024年12月の時点にいるが、今年初めの時点では、私たちIBM iのチームは大規模言語モデル(LLM)の作り方について何も知りませんでした。そのため私たちは、RPGのためのLLMを作成するために多くのことを学ぶ必要がありました。この9カ月に学んだことは、ここ数年で学んだことよりもはるかに多い気がしています」

「2025年第1四半期にRPG Code Assistantのアルファ版をリリースする予定ですが、これが多くの人の期待に応えられないものであることは覚悟の上です。むしろアルファ版で遊んでもらい、どこをもっと学習させればよいかを認識してもらうことに狙いがあります」

「2025年第2四半期にはベータ版をリリースします。これは50人への提供になるか1000人への提供になるかはわかりませんが、製品版へ向けて具体的なフィードバックを得るためのものです。そして微調整を続けて、2025年後半に製品版をリリースする予定です」

 

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