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IBM i市場にに注力するベンダーとして統合のシナジー効果を最大限に描く ~クレスコ・ジェイキューブが高木システムの全発行済株式を取得

クレスコ・ジェイキューブと高木システム
IBM iに注力する2つのベンダー

クレスコ・ジェイキューブは2024年10月、高木システムの全発行済株式を取得し、子会社として迎えることになった。

クレスコ・ジェイキューブは2022年7月、アルス、エヌシステム、ネクサスの3社合併により誕生しており、新会社の設立後、他社をクレスコ・ジェイキューブグループに迎え入れるのは、これが初めてとなる。

高木システムは、電気・電子部品の専門商社である高木商会の関連会社として、1988年に設立された。高木商会がIBM i上で運用していたソリューションを製品化し、電気・電子部品業界向けに特化した基幹システム「TREE」を国内約150社以上に導入した実績をもつ。

両社の統合の経緯を、高木システム側で主導した井坂信行常務取締役は次のように語る。

「当社は後継者問題もあり、昨年秋ぐらいからM&Aの仲介会社を交えて今後の選択肢を探ってきました。具体的に何社かのITベンダーと交渉したのですが、ほとんどがオープン系を主軸とし、当社が力を入れてきたIBM i市場には実績がありませんでした。そのため当社の強みを活かせないのではないかと不安を感じ、なかなか話を締結できませんでした。そんななか、今年の春にi Magazineに掲載されたクレスコ・ジェイキューブの広告や記事を読み、IBM i市場に注力していることを知って、この会社だと直感したのです。そこで早速、アポイントを申し込んだのが今年5月ぐらい。そこからはトントン拍子でした」

井坂 信行氏

クレスコ・ジェイキューブの代表取締役社長で、現在は高木システムの代表取締役社長でもある深井淳氏も、その経緯を次のように振り返る。

「クレスコ・ジェイキューブの発足当初から、IBM iビジネスを中核事業の1つに位置付けてきました。今年度から3カ年でスタートした中期経営計画にも、M&Aによる事業拡大を謳っています。ただし具体的に動いていたわけではないのですが、今年5月にお話をいただいたとき、高木システムの事業内容にとても魅力を感じました」

深井 淳氏

深井氏が魅力を感じた点は、大きく3つある。まず高木システムがIBM iにフォーカスして事業を展開し、TREEを運用する確固とした顧客ベースを築いていること。次に電気・電子部品という特定の業界をターゲットにしていること。そしてTREEというキラーソリューションにより、IBM iの技術力と問題解決力を培っていることである。

「初めて深井社長とお話ししたとき、『IBM iの世界で日本一の会社になりましょう』という言葉を聞いて、とても力強く感じました」(井坂氏)

ちなみにクレスコ・ジェイキューブの前身企業の1つであり、3社のうちで最もIBM iビジネスに力を入れていたアルス、それに高木システム、そしてIBM i(AS/400)が誕生したのはいずれも1988年。同級生ということになる。

技術面でも営業面でも
シナジー効果を期待

今回の統合によって、両社はIBM i市場に向けた新たなシナリオを描いている。

まずは技術的・人的な連携である。現在、クレスコ・ジェイキューブにはIBM iの技術者が約70名、高木システムには21名、これにベトナムにある親会社クレスコの海外子会社の技術者を含めると、IBM iの技術者体制は約100人規模になる。

「2025年4月には、IBM PowerとIBM iに特化した新しい事業部を立ち上げる予定です。高木システムの擁する人的リソースは、頼もしい戦力になると考えています」(深井氏)

また高木システムではTREEを導入するユーザーから、オプション導入やカスタマイズ開発、周辺システムとの連携など多様なニーズが寄せられるが、人的リソースの不足もあって、対応までに多少の時間を要するケースがある。そんな場合でも、今後はクレスコ・ジェイキューブの力を借りることで、リードタイムを短縮し、迅速な対応が可能になるだろう。

「最近はIBM i上で稼働するTREEの周辺で、オープン系の開発・導入を求められるケースが増えています。オープン系の開発に強いクレスコ・ジェイキューブの技術力を活用することで、こうしたニーズにも的確に対応していけると思います」と語るのは、高木システムで開発部隊を率いる渡辺充執行役員(開発管理担当)である。

渡辺 充氏

また双方が提供するソリューションを、双方のユーザーに紹介する機会も今後は増えていくだろう。

クレスコ・ジェイキューブは、「iSeries Site」を活かした人事・給与・経理・ワークフローのソリューションを提供するとともに、iSeries Siteをスムーズに運用するためのサービスである「J CUBEケアサービス」(日本IBMが提供してきたサービスを2023年7月から継承)を提供している。

「J CUBEケアサービスを利用されている中には、電気・電子部品業界のお客様が一定数おられるので、そうしたユーザー様にTREEをご紹介していくことが考えられます。また逆にTREEを運用されているお客様にクレスコ・ジェイキューブのソリューションをご提案していくこともあるでしょう。両社のマーケティングやブランド戦略を密接に連携し、セミナーなどでTREEを訴求していくことも必要です。いずれにしても今後は、両社の技術者・営業担当者がお互いのソリューションを学び合う機会を作っていこうと考えています」(深井氏)

高木システムで営業チームを率いる営業部の村田謙佑シニアマネジャーは次のように語る。

「お客様に今回の統合をご説明すると、最初はTREEが今後も継続していくかどうかを心配され、クレスコ・ジェイキューブがIBM iビジネスに注力しているベンダーだとわかると、『それではTREEは今後も大丈夫だね』と、安心していただけます」

村田 謙佑氏

深井氏は高木システムの代表取締役社長に就任してから、挨拶を兼ねて、TREEのユーザー先を訪問して回っているが、やはり同じ反応をされると指摘する。今後は、コロナで一時休止していた「TREEユーザー会」を再始動し、多くのユーザーが集まる場で、これからもIBM i、そしてTREEに注力していくことを宣言したいと語る。

「IBM iは、ともすれば時代遅れのオフコンというイメージで見られがちですが、過去のプログラム資産をしっかりと継承しつつ、これほど最先端テクノロジーを集積したプラットフォームはほかに例を見ないと考えています。複雑化・高度化するユーザーニーズに1社だけでは対応できません。今後は高木システムと連携し、またIBM i市場のパートナーやベンダーとアライアンスを組み、『IBM iの総合病院』のような存在として、お客様が何でもご相談いただけるように、そして安心してIBM iを使っていただけるように力を尽くしていこうと考えています」(深井氏)

来春にも始動するクレスコ・ジェイキューブのIBM i新体制に注目である。

 

 

[i Magazine・IS magazine]

 

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