丸八倉庫株式会社
本社:東京都江東区
設立:1934年資本金:25億2760万円
売上高:49億7200万円(2023年11月)
従業員数:54名(2023年11月)
概要:倉庫・運送などの物流事業、不動産業
https://www.maru8.co.jp/
サーバーはすべてクラウドへ
本社.各拠点に1台も残っていない
丸八倉庫は、関東と南東北を中心に倉庫・運送などの物流事業と不動産事業を展開する、今年創業90年を迎えた歴史のある会社である。IT化の歩みは1980年代に始まり、システム/36からAS/400、IBM iへとIBMミッドレンジ機を使い続けてきた。
同社のシステム利用は活発である。2000年以降だけを見ても、2000年代前半に会計システムをIBM iからWindowsベースのパッケージ製品へ移行したのを皮切りに、Webアプリケーション化にも着手。
2010年代には本社サーバーを外部データセンターへ移設し、その後に順次クラウドへ移行。さらに自社保有のIBM iをレンタル機に切り替え、2022年にはIBM i上のすべてのシステムを日本情報通信のIBM iクラウドサービスへ移行した。また同時期にWindowsサーバーもすべてAWSへ移行した。
「サーバーは現在、本社・各拠点に1台も残っていません」と、情報システム部の佐藤信一氏(副部長)は話す。
佐藤 信一氏
情報システム部
副部長
一方、顧客向けシステムでも、2016年に「Web文書保管管理システム」、2021年に「電子請求書発行システム」、2022年に紙文書と電子文書を統合管理可能な電子帳簿保存法対応の「ポッポストレージ」をリリースするなど、IT活用による顧客サービスの高度化を推進してきた。
今回レポートするのは、新規顧客用のWebアプリケーションをMONO-Xのノーコード開発ツール「MONO-X One」で短期開発した事例である。
3種の開発方法を検討
ノーコード開発ツールを選択
同社は創業以来、幅広い業種の顧客に対応する一方、出版社用の商品(書籍)管理システムや理美容品の卸売業者向けシステムなど、少量多品種の在庫管理システムの開発を得意としてきた。
今回の新規顧客(以下、A社)も、少量多品種の商品をひんぱんに入出庫し、店舗ごとの在庫を管理できるシステムへのニーズをもっていた。
「A社は従来、仕入先(メーカー)からの商品の入庫と、倉庫から各拠点への商品の出庫・配送管理をExcelで行っていました。同社の事業には1年のうちで数回ほど商品の入出庫・配送が極端に増えるという特性があります。それが拠点数の年々の増加に伴い、Excelによる管理では事業スピードに追いつかないことが鮮明になっていました」と佐藤氏は言い、「早期にシステム導入を実現することと、アプリケーションをサービスとして利用することを強く望まれていました」と説明する。
丸八倉庫ではさっそくシステム化の方法の検討に入った。当初はスクラッチ開発、次にローコード開発ツールを検討した。しかしスクラッチ開発は初期コストが大き過ぎ、ローコード開発ツールのほうも拠点数が増えるに従ってコストが大きくふくらんでいくため、「別の方法を検討せざるを得ませんでした」と、佐藤氏は振り返る。
そうした折、MONO-Xから「MONO-X One(当時「NextB2B」)の提案があった。MONO-X OneはWebアプリケーションをノーコードで開発できるクラウドサービスである。仔細に検討してみると「費用面では拠点数が増えても問題なく、機能的にもこれでいけるとの感触がありました」と、佐藤氏は話す。
ヒアリング後に短時間で
システムを組み、レビューできる
2023年8月からMONO-X Oneのテスト利用を開始した。テスト開発するのは、A社の3つの拠点を対象とするWebアプリケーション。開発をメインで担当したのは、2023年5月に総務部から異動してきたばかりの若い斎藤光氏である。
斎藤 光 氏
情報システム部
10月に仕様の確認をA社と行い、10月末に1回目のプレビュー、11月中旬に2回目のプレビューを実施し、2024年1月に3拠点での本番運用を開始した。概要設計から本番開始までわずか4カ月という短期間である。
「開発経験のない私でもスムーズに設定・開発が進みました」と、斎藤氏。佐藤氏は、「MONO-X Oneは、仕様についてのヒアリング後に短時間でシステムを組めるので、アプリケーションの動きをお客様にすぐに確認いただけます。それが今回の開発をスムーズに行えた要因と考えています」とMONO-X Oneを評価する。
また斎藤氏は「A社はExcelによる管理に慣れていたので、Excelライクなインターフェースを強く希望されていました。ご要望に近いものを開発できました」と言う。
老朽化した社内・顧客システムに適用し
モダナイゼーションへ
プロジェクトは現在、A社から3拠点における実践経験と新たな要望に関する情報を収集中で、ほかの拠点に横展開する直前にある。
「A社からは好感触の評価を得ており、これから本格展開が始まると期待しています」と、PM(プロジェクトマネージャー)を務めた有瀬浩一氏(情報システム部課長)は語る。
有瀬 浩一 氏
情報システム部
課長
同社では今後、MONO-X Oneを老朽化した社内システムや顧客システムに適用し、リニューアルしていく計画。すでに一部進行中で、営業などのユーザー部門で、システム部門の手を介さずにIBM iからのデータ抽出が始まっている。また顧客向けでは、従来、外部協力会社に依存していた在庫照会システムの保守・開発を自社で行えるようになった。
佐藤氏は、「コスト面でもすでに効果があり、今後MONO-X Oneのいっそうの活用により、さらにコスト削減とシステムの効率化・高度化を図れると考えています」と述べる。
[i Magazine 2024 Winter号掲載]