IBMとMicrosoftは9月19日、IBMのクライアント・イノベーション・センター内に新たに3つのIBM-Microsoft Experience Zoneを正式にオープンしたと発表した。
これらのExperience Zoneの狙いは、金融サービス、政府、医療、工業、製造、消費財(CPG)など、さまざまな業界のグローバルな顧客が、生成AI、ハイブリッドクラウド、その他のMicrosoft製品やテクノロジーから価値を引き出す新しい手法の発見を支援することにある。
2024年4月にオープンしたインドのバンガロールにあるIBM-Microsoft Experience Zoneをはじめ、新たに加わった3つのExperience Zoneは戦略的な重要拠点に設置されており、IBMの顧客への支援領域と能力を拡大し、Microsoftのテクノロジーを最大限に活用してビジネスを前進させ、潜在的な機会を捉えてイノベーションを起こす方法を模索しようとしている。 新たに設置されたExperience Zoneは、ルーマニアのブカレスト、米ニューヨーク州バッファロー、英レスターの3カ所にある。
「IBM-Microsoft Experience Zonesは、両社の強みを活用した潜在的なソリューションを顧客や見込み客が探求する機会を提供します」と、IDCのグローバルITサービスおよびシステム統合サービス担当リサーチ・ディレクターであるブライアン・ウッド氏は述べている。「データとAIのための統合されたツールとプラットフォームは、多くの環境やビジネスプロセスで相乗効果を発揮します」
IBM-Microsoft Experience Zones
IBMのグローバルな顧客は、Experience Zoneを活用することで、Microsoft Azure、Azure Open AI Service、Microsoft Copilot、Microsoft DynamicsなどのMicrosoftテクノロジーにアクセスし、社内外のビジネスにおける生成AIソリューションを追求し、共同で作成できる。
バンガロールのExperience Zoneでは、CIOとそのチームがクラウドのモダナイゼーション、Microsoft Azure、Copilotのカスタマイズに関するソリューションを検討した。製造、ガス・石油、消費財(CPG)などの業界の顧客は、MicrosoftのHololensやAzure Internet of Things (IoT)、Edgeなどのソリューションを含む、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の機能に関心を示した。
IBMの専門家は、顧客のもとで、クラウドと生成AIソリューションを活用して、顧客独自のビジネス課題を特定し、解決できる。これにより、顧客はビジネス変革を加速し、投資収益率の向上を実現できる。
たとえば金融サービスの顧客は、Microsoft CopilotとAIベースのソリューションを作成する機能が、承認のための融資申請書の文書検索と審査に要する時間を短縮するのに役立つかどうかを検討できる。
あるいは医療分野の顧客は、さまざまなMicrosoft Azureソリューションを使用して、患者の健康情報を保護しながら、複数の診療所から患者のファイルにアクセスするなど、クラウド上でビジネスに不可欠なアプリケーションを提供する方法について評価できる。
さらにExperience Zoneでは、次世代テクノロジーや業界固有の事例を紹介することで、従業員のスキルセットを向上させる機会を提供し、企業が生成AIを活用して競争の激しいビジネス環境の複雑な問題を解決するためのリソースを提供する。
「IBM初のMicrosoft Experience Zoneは、Microsoft Cloud、生成AI、そしてCopilotの潜在能力を最大限に引き出すことで、ビジネスの変革を可能にするものでした。IBMがさらに3つのIBM-Microsoft Experience Zoneを立ち上げることを嬉しく思います」と、MicrosoftのGSI Commercial Partners担当ゼネラルマネージャーであるディニス・クート氏は述べている。
「IBMとのパートナーシップにより、3つの新しいExperience Zoneを設立することで、より多くのお客様が画期的な変革をもたらすAI搭載サービスやソリューションを創出できるようになります」
戦略的パートナーとしてのMicrosoft
IBMコンサルティングがマイクロソフトへの継続的な投資と協力を続けることで、IBMの1microsoft専門家がもつグローバルな専門知識とガイダンスを通じて、顧客がクラウドと生成AIソリューションを市場に投入できるよう支援する。
現在、IBMコンサルタントは4万6000件以上のマイクロソフト認定資格を保有しており、2024年末までに生成AI認定資格を1万件追加することを目指している。
これまでにIBMのコンサルタントは、顧客のために何千ものマイクロソフトプロジェクトを成功裏に完了させてきた。そしてこの新しいExperience Zoneは、グローバルな顧客がビジネスニーズについて話し合い、IBMの専門知識を活用して革新的なソリューションを開発し、提供することで、ビジネスを変革し、AIを最大限に活用する機会をオンサイトで提供する。
IBMとMicrosoftのパートナーシップのもう1つの例として、先ごろ開催された「IBM-Microsoft Copilot Hackathon」がある。ここでは、250の顧客チームと800人以上の参加者が、IBM、Neudesic、Bluetab、Microsoftの専門家と協力し、生産性の向上、創造性の開放、ビジネスプロセスの合理化を実現するAIベースのソリューションの探究と共同開発を行った。
Microsoft Copilot 上でのソリューション開発にとどまらず、各チームは5月に発表されたIBMコンサルティングの「Copilot Runway」も活用した。これは、企業がカスタマイズした独自のCopilotを作成し、展開することで、収益に影響を与える業務効率の向上を支援するものである。150件以上の応募の中から、ハッカソンで優勝したプロトタイプソリューションは、顧客エンゲージメントの強化や、ビジネス上の意思決定を迅速化する能力の実現といった課題に対応していた。
IBMは、これら3つの新しいExperience Zoneとハッカソンのような顧客重視の取り組みを通じて、戦略的パートナーであるMicrosoftへのコミットメントを継続的に強調し、世界中の顧客に共同ソリューションを提供することで、「よりよい未来を共に創る」という理念を実現し、生成AIとハイブリッドクラウドの潜在能力を最大限に活用していく。
Microsoftテクノロジーに対する顧客の関心と需要が継続していることを受け、IBMは、世界中の顧客によりよいアクセスを提供するために、将来的にExperience Zoneを他の地域のイノベーション・センターにも拡大することを検討している。
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