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KPMGコンサルティング、「Future of HR(人事の未来)2024-25」を発表 ~企業価値を高める“ウェルビーイング経営”の新しい捉え方を提唱

KPMGコンサルティングは9月18日、日本企業の人事部門における今後のトレンドや直面する課題、企業価値の向上に直結する「ウェルビーイングの実現」のために取り組むべきポイントをまとめたレポート「Future of HR(人事の未来)2024-25 ~企業価値を高めるこれからのウェルビーイング~」を発表した。

昨今企業経営において、人材の価値向上が企業価値の向上につながると捉える「人的資本経営」の考えが広まっている。人的資本経営の実践に向けた第一歩として、多くの企業が法定上の情報開示に取り組む一方で、経営戦略と人事戦略との連携は進んでおらず、オペレーション中心の役割を受け身的に果たしている傾向が見受けられる。

不確実さを増すこれからの時代に企業が継続的に成長していくためには、人的資本を重視し、人材への投資を行い、従業員一人ひとりのウェルビーイングを高めていくことが必要である。ウェルビーイングが高まることで、仕事への主体的な取組みと能力発揮に繋がり、その結果として企業価値が向上することが期待されている。

同レポートでは、国内企業111社を対象に行った調査から、今後の人事トレンドと人事が直面する課題、企業価値の向上のために経営がこれから考えるべきウェルビーイングの捉え方や、付随する人事テーマの取り組み状況・期待する効果等を解説している。

人事部門が捉えるべき従業員のウェルビーイングを「心身」「仕事」「組織貢献」の3つの領域において定義し、人事部門が取り組むべき2つのミッション(仕事のウェルビーイングを高め個の力を最大化する/組織貢献のウェルビーイングを高め求心力を最大化する)と6つのトレンドテーマについてまとめている。

さらには、将来の組織成長に軸足を置き、企業価値の向上を人的側面から支えられる人事機能を持つ企業を「パスファインダー企業」と定義し、「Future of HR 2022」で紹介した7社の企業から、花王株式会社、明治ホールディングス株式会社におけるその後の取り組みについても紹介している。

1.主な調査結果 

経営層と人事部門の連携 

60%以上の企業が経営層と連携した大きな変革を検討していると回答しており、人事部門の変革への危機意識は高くなっていることが伺える。

他方で経営との関係性については、過去2~3年で経営戦略と人事戦略の連動が「大幅に進んでいる」「かなり進んでいる」と回答したのは約20%で、経営戦略と人事戦略は連動していない企業がまだまだ多いと言える。

図表1 経営層と人事部門の連携(出典:KPMG)

ウェルビーイング向上への取り組み状況

およそ4社に3社の企業がウェルビーイング向上への取り組みを行っていると回答しており、取り組み予定がある企業を含めると約95%近くに上る。

また、ウェルビーイング向上に取り組むことで特に期待する効果としては、「従業員エンゲージメントの向上」が最も多く、人材獲得競争が熾烈化するなか、人材のリテンションを図るために多くの企業がウェルビーイング向上に取り組む重要性を感じていることが伺える。

「従業員エンゲージメントの向上」に次いで期待する効果としては、「従業員の健康維持と促進」「ワークスタイル(働き方)変革」となっており、「組織風土改革」や「従業員のキャリア自律」といった項目は比較的低い結果となっている。

図表2 ウェルビーイング向上への取り組み状況(出典:KPMG)

2.人事部門が考えるべき従業員のウェルビーイング

3つのウェルビーイング 

1つ目は「心身のウェルビーイング」で、心身ともに健康でありワークライフバランスが取れている状態を指す。

2つ目は、「仕事のウェルビーイング」で、心身のウェルビーイングを土台に、従業員一人ひとりが個として行う仕事を通じた幸福度が高い状態を指す。

3つ目は、「組織貢献のウェルビーイング」で、企業・組織のパーパスや方向性に共鳴し自分の能力を使ってその企業・組織に貢献することが幸福であると感じている状態を指す。

個々のウェルビーイングが高まることで、仕事への主体的な取り組みと能力発揮につながり、その結果として企業価値向上につながることが期待される。

図表3 人事部門が捉えるべき3つのウェルビーイング(出典:KPMG)

人事部門が取り組むべき2つのミッションと6つのトレンドテーマ 

1つ目のミッションは、「仕事のウェルビーイングを高め、個の力を最大化する」ことである。心身のウェルビーイングが満たされている状態から、一人ひとりの持つ個の力を最大化させ、さらなる企業の価値向上につなげることが必要である。具体的な取り組みテーマとして、リスキリングの推進支援などが挙げられる。

2つ目のミッションは、「組織貢献のウェルビーイングを高め、求心力を最大化する」ことである。このミッションの最も本質的な取R組みとしては、パーパスや企業理念の見直しによる存在意義の明確化が挙げられる。

図表4 2つのミッションと6つのトレンドテーマ(出典:KPMG)

 

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