i Magazine 2021 Autumn号の「特集 IBM iユーザーに捧げるGit入門」では、
RDiを利用するGitの活用法についてご紹介した。
今回は、5250エミュレータで始めるGitの活用法である。
DXやモダナイゼーションへ向けてRPGプログラムの改修・開発が増える時期、
RPG ⅢユーザーにGitによるバージョン管理の世界をぜひ実感していただきたい。
執筆は、「特集 IBM iユーザーに捧げるGit入門」の著者である
ティアンドトラストの小川誠氏にお願いした。
著者｜
小川 誠氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
RPG Ⅲのソースコード管理を
IBM i上のGitで行えないか
本誌 i Magazine 2021 Autumn号で「特集 IBM iユーザーに捧げるGit入門」を書いてから、早いものでもう2年半が過ぎようとしている。特集記事ではGitの基礎知識、RDiでのGitの活用方法について基本的な概念と使い方を解説した。この記事を参考にRDiでGitへの取り組みを始められた読者も多いことと思う。
最近ではVisual Studio CodeとCode for IBM iを組み合わせて、FF RPGの開発を実践される方も増えてきた。もちろんVisual Studio Code（以下、VSCode）とGitは連携可能。IBM iの開発環境も他のプラットフォームと同様にオープンな環境が整ってきたと言える。VSCodeとCode for IBM iについては、以下の記事も参考にしてもらいたい（両記事ともi Magazineサイトに掲載中）。
▷i Magazine 2022 Winter号「特集 IBM iユーザーに捧げるVisual Studio Code入門」
▷i Magazine 2023 Winter号「特集 Code for IBM i」
今年（2024年）5月4日に発表された最新のテクノロジー・リフレッシュでは、IBM iの開発環境Merlin 2.0が話題になっている。Merlinは2022年に発表されたブラウザ・ベースの開発およびDevOps環境で、RedHat OpenShiftで実行されるもの。今回の発表では、Code for IBM iもMerlinで利用可能になるとのこと。ますます、IBM iの開発環境がVSCode中心へ移行していくさまが見て取れる。
私はこの動きを全面的に歓迎したいと思う。どの言語、どのプラットフォームであっても開発環境は自由に選べることが重要だと考えているし、Visual Studio Code は現時点で最も使用されているコード・エディタだからだ。VSCodeに早いうちから慣れておくことは今後、IBM iの開発者にとって必須要件になるような予感がある。
しかし、こういった新しい環境に何の躊躇もなく移行できるIBM iユーザーは、日本にどれぐらいいるのだろう。基本的には、VSCodeはオープンなエディタなのでFF RPGがメインになる。Code for IBM iではある程度定位置記入方式のRPG Ⅳもサポートされるが、日本語の場合はシフト文字の問題があるので、使用には若干の注意が必要だ。さらに、RPG ⅢはCode for IBM iを使えば参照は可能だが、プロンプト機能のあるSEUに慣れたユーザーにとっては使用は厳しい。
このように、RPG Ⅲで開発されたシステムの保守がまだまだ多いユーザーにとって、VSCodeなどのオープンなエディタへの移行はハードルが高いと言える。では、これからもSEUメインの開発スタイルでRPG Ⅲをメンテナンスしていって何も問題はないのだろうか。
SEUを使い続けることの弊害は、これまではFF RPGへの移行が進まないという文脈で指摘されることが多かった（私もそう過去に書いている）が、もう1つの弊害はGitと連携できないことである。もちろん、RDiを使用すれば可能なのだが、VSCode使用への流れがRDiを使用する機会をいっそう減らしていくように思う。そうなれば、RPG Ⅲソースのバージョン管理はますます実現されない。
本当にそれでいいのだろうか。
今回の記事は、「SEUでRPG ⅢだからGitは関係ない」と思ってしまっているかも知れない開発者向けに、RPG Ⅲのソースコードの管理をIBM i上のGitを使って行えないかを検証し、少しでもGitに興味をもってもらうことを目標として進めていきたい。
