パブリッククラウドによく似た機能を
オンプレミスで実現
「サーバーを構築・利用する時間的・コスト的な感覚が、従来とまったく違う」(古川製作所の貞安啓孝氏)
「ハイパーコンバージドはまさにレボリューションと言える技術で、10年に一度の革新的なテクノロジーと感じている」(北陸銀行の富永英司氏)
今回取材したユーザーは、ハイパーコンバージド・システムに対する感想を異口同音に熱っぽく語る。またベンダーの吉松正三氏(JBCC)も、「ハイパーコンバージドが備える革新的な技術は、次のインフラデザインのフットプリント(基盤)であり、明日のビジネスのステップ1」と、そのインパクトを述べる。
ハイパーコンバージド・システムは、システム基盤に求められるサーバーやストレージ、仮想化などの機能を高度に集約し、1Uまたは2Uのサーバー・ハードウェア上でパッケージングしたもの。サーバー機能とストレージ機能をソフトウェアで提供し、各ノードをイーサネットで接続したクラスタ内で、各ノードのリソースを抽象化したリソースプールとしてもつのが特徴だ。
一般的な3層構造システムでは、システムの導入に、サーバー、SANスイッチ、ストレージなどの選定と設定、稼働検証が必要で、運用開始後も、コンポーネントごとのバージョンアップやバージョン合わせなどのメンテナンス作業が継続的に発生する(図表1)。
【図表1 画像をクリックすると拡大します】
これに対してコンバージド・システムは、コンポーネント間の接続性や性能をメーカーが検証し、統合的な運用管理機能や統一化された管理インターフェースとともに提供される。そのため、3層構造システムの課題である初期導入やメンテナンスの工数を大きく削減できる。ただし、導入がラック単位なので初期費用が巨額になり、専用ストレージゆえに、そのスケール性に制約がある。
これを解決したのがハイパーコンバージド・システムで、1U・2Uの筐体をイーサネットで接続するだけで自動的にノードが追加され、クラスタ内のコンピュートとストレージのリソースプールがそれぞれ拡張される。サーバーとストレージのボリュームは、クラスタ内で自動的にスケールする。つまり、パブリッククラウドによく似た機能をオンプレミスで実現するのが、ハイパーコンバージド・システムなのである。
迅速な導入、スモールスタート
すばやい拡張、容易な運用管理
ユーザーはハイパーコンバージド・システムの利用により、初期導入の工数を劇的に低減できるだけでなく、スモールスタートが可能となり、システムを1ノード単位で容易に拡張していける。北銀ソフトウェアの堀洋人氏は、「注目したのは、リソースの増設と性能の向上を最適化するクラスタリング技術。これなら外部ベンダーに頼らずに、自分たちだけで構築・運用を行えると確信した」と話す。
さらに、管理対象の機器やソフトウェアが少なくなるので、障害や管理のポイントが減少し、より少ない工数・コストで運用できる。また、専用ストレージやSANスイッチがなく高密度に集約化された1U・2Uのシステムなので、設置スペースが小さくて済むのも大きなメリットである。取材した古川製作所では、ハイパーコンバージド・システムの導入により、従来2部屋を占有していたサーバールームを1/4に縮小した。「その分、空調費や光熱費も削減できる」と、同社の木村勝敏氏は言う。
専業のほか、さまざまなメーカーが参入
2017年の市場規模は前年比77%増
ハイパーコンバージド・システム市場では、新製品の投入や機能の拡張、企業間のM&Aが活発に続いている(図表2)。
【図表2 画像をクリックすると拡大します】
専業メーカーのほか、サーバー、ストレージ、ネットワーク、仮想化ソリューションなどのメーカーが参入し、それぞれの得意技術を活かして製品化を進めているのが現状である。この9月にはIBMがNutanixをPower Systemsに搭載したIBM Hyperecnverged Systemsを出荷し、これまでx86ベース製品だけだった市場に新たなページを付け加えた。
IDC Japanの宝出幸久氏は、「2017年のハイパーコンバージド・システム市場は対前年比77%増で成長し、2016?2021年の年間平均成長率は31.2%になる」と予測する。そしてこの高成長をドライブする要因として、「ITインフラに対する効率化ニーズの高まり、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の規模拡大に伴うITインフラの変革、ハイパーコンバージド・システムの適用領域の拡大」の3つを挙げる。
ハイパーコンバージド・システムは、ITインフラの課題を解決する革新的なソリューションとして、大きくクローズアップされつつある。[IS magazine No.17 (2017年10月)]