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03 IBM iの仮想化

LPAR方式とVM方式

1台のハードウェアの上で複数のOSを動作させる方式として、大別すると「LPAR(論理パーティショニング)方式」と「VM(仮想マシン)方式」の2つがある。前者はハードウェア資源を区切ってOSに使わせることにより仮想的なサーバーを実現する考え方であり、後者はハードウェア資源を小さなハードウェアの形で標準化・抽象化してOSに使わせる考え方である。

IBM iが稼働するPower Systemsにはいくつかの仮想化機能を実現するPowerVMがファームウェアとしてあらかじめ組み込まれ、LPAR方式によるエンタープライズ・クラスのサービス品質を確保したクラウド環境が構築できる(図表1)。また、LPAR方式はIBM zシリーズ(メインフレーム)で長年採用されている仮想化方式であり、メインフレームに匹敵する信頼性、性能を発揮する。

図表1 画像をクリックすると拡大します】

HMC

HMC(Hardware Management Console)は、Power Systemsの仮想化機能を利用するうえで必要になるLinuxベースのインターフェースである。Power Systemsサーバーの制御や、LPARの作成をはじめとする環境構築のための管理用マシンである(図表2)。 1つのHMCで複数のPower Systemsサーバーを管理でき、次のような機能を提供する。

・ 複数のサーバーの制御およびステータス表示

・ LPARの構成/ブートの制御およびステータス表示

・ ダイナミックLPAR(DLPAR)の制御

・ 障害監視およびIBMコールセンターへの自動通知

 

図表2 画像をクリックすると拡大します】

 

PowerVM

PowerVMは、メインフレーム向けに開発されたハイパーバイザーをベースに、POWERプロセッサ向けに拡張された仮想化機能である。Power Systemsの最新モデルであるPOWER8の場合、物理CPU 1個を0.01個単位(ただし最小0.1個)でLPARに割り当てられる(マイクロ・パーティショニング)。

また、LPARを再起動することなくOSを実行したままプロセッサ、メモリ、I/Oアダプタを追加・削除・移動する機能(ダイナミックLPAR)や、ディスクI/Oや通信に必要な物理アダプタを複数のLPARから共有して使用できる機能(Virtual I/O Server)など、先進的な機能を豊富に備えている。

Virtual I/O Serverによる環境構築を前提として、稼働中のLPARを別の物理的システム(筐体)に移動するといったVMware VMotionに相当する機能(Live Partition Mobility)も提供されており、ユーザーへのサービスを継続させながら、並行して元の筐体のハードウェア保守を行うことも可能だ(図表3)

図表3 画像をクリックすると拡大します】

クラウド基盤にも最適なPowerVM

PowerVMが組み込まれたPower Systemsは、セキュリティ面でもクラウド基盤に最適である。Windows環境で一般的なVMwareなどのハイパーバイザーは、その脆弱性がたびたび報告されており、ホストOS上のファイルを削除されたり、DoS(サービス運用妨害)攻撃を受けたり、任意のコードを実行されたりする危険性がある。これに対してPowerVMではこれまで脆弱性に関する報告はゼロであり、セキュリティ面の信頼性は高い。

同一のPower Systems上にIBM iはもちろん、AIXやLinuxを併存できるのも複合的なビジネス・システムを構築するうえで大きなメリットである。

LPAR方式による仮想化環境の場合、物理CPU割り当てに専有方式やキャッピングといった機能があり、素行の悪いシステム(OS)が共存することによる悪影響を極力排除できる。そのため、パフォーマンスが最も重要な要件となりうる、大容量トランザクションを伴うビジネスに不可欠なアプリケーションの安定稼働が求められる場合にも、PowerVMは対処できる。[小林直樹]

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