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フルスクラッチ型で新・基幹システムが始動、Web発注システムと労務日報システムをIBM iに取り込む |株式会社平賀

SPXとは同社の小売流通業界に特化したサービスを
総称するコンセプトワードです。

 

株式会社平賀
本社:東京都練馬区
設立:1956年
資本金:4億3431万円
売上高:99億5400万円(2024年3月期)
従業員数:303名(2023年3月)
概要:販促促進プロモーション、販促管理システムの企画・管理、WebおよびSNSのデジタルマーケティング、総合印刷など
https://www.pp-hiraga.co.jp/

新・基幹システム
「NEXT-CORE(ネクストコア)」

平賀は1956年の設立以来、長年にわたり小売流通に寄り添ってきた。もともとは印刷会社としてチラシや販促物などのマーケティングツールを提案・製作してきたが、現在ではそれにとどまらず、長年にわたる経験と実績から培ったコンサルティング機能を発揮しながら、各種メディアのコンテンツ制作やロジスティクス機能、デジタルサイネージなどのITソリューションを併せ持つハイブリッドなビジネスを展開している。

同社は1990年代にIBM i(当時のAS/400)を導入し、自社開発型の基幹システムを運用していた。販売管理、購買管理、在庫管理が中心である。もともとはIBM i上で稼働する統合CASEツールを利用していたが、2014年に全面再構築した新システムが稼働した。

導入検討に際しては、Windows上で稼働するパッケージ製品をカスタマイズする案と、RPGおよび「Delphi/400」(ミガロ.)によりフルスクラッチ型で開発する案の2つを比較した。しかし見積額に大きな差がなかったため、自社要件を反映できる後者を選択し、外部ベンダーに開発を依頼したという。

このときはWebアプリケーションとして運用していた受注書・見積書の機能を基幹システム側に取り込んだ。また取引先(仕入れ先)向けのWeb発注システムは、クラウド(AWS)上にCGIでWebプログラムを稼働させ、ODBCでIBM iのDBに接続していた。

しかし新システムではプログラム上の不具合が多く、システム部門では対応に追われていたのに加え、ユーザー側の業務要件も緻密に反映されているとは言えなかった。また本稼働後に、大阪にある企業を子会社として統合合併したが、その業務要件が反映されていないなど、いくつかの課題が浮上した。

そこで本稼働から3年ほどが経過した2017年ごろに、次期システムの検討をスタートさせることになった。

このときも、IBM iの利用を中止してWindows系のパッケージ製品を採用する案と、今のままIBM iの利用を継続し、もう一度フルスクラッチ型で開発する案の双方を検討することになった。

「かなり時間をかけて検討しましたが、Windows系のパッケージ製品の場合、カスタマイズしないことが前提になります。しかしその場合、当社の業務要件に合わない機能はツールの組み合わせで実現することになり、結果的にはシステム部門でもユーザー部門でも負荷が増大すると予測されました。そこでもう一度、フルスクラッチ型で再構築する手法を選ぶことになりました」と、経営企画本部の石田健二本部長は当時を振り返る。

石田 健二氏

新しい基幹システムの名称は、「NEXT-CORE(ネクストコア)」。プロジェクトの開始は2020年4月である。

プロジェクトスタート時に代表取締役社長に就任した中前圭司氏は前回の反省を込め、エンドユーザーとのヒアリングに時間をかけて現場のニーズを徹底的に吸い上げるように指示したという。

 

中前 圭司氏

RPGで開発した5250画面を
「aXes」でWeb画面に変換・編集

開発を担当するのは、その少し前からアプリケーションの保守を依頼していたベル・データである。前回と同様にビジネスロジック部分はRPGで、フロントエンド部分はDelphi/400で開発することになった。

当初、ベル・データではWeb発注システムについては、既存のWebプログラムを流用することを予定していた。しかしNEXT-COREではテーブル定義などが大きく変更されたため、プロジェクトが進行するなかで、流用は難しいとの判断を出さざるを得なかった。同じようなWebプログラムを開発するにしても、実際に開発を担当していたベンダーはWebの経験が少なく、ゼロから再構築すると開発費が膨らみ、時間的にも厳しくなるとの懸念があった。

そこでベル・データが提案したのが、5250画面からWeb画面を生成・編集する「aXes」(ランサ・ジャパン、フェアディンカム)と、IBM iのスプールデータ配信に対応する「WilComm」(フェアディンカム)であった。

つまり発注、受託、出荷、請求など5~6枚の画面で構成されるWeb発注システムをまずRPGプログラムとして開発し、作成された5250画面をaXesで変換してグラフィカルに編集する。また発注のタイミングで送信する確認書や出荷伝票、納品書、請求書などは、WilCommを使ってメールに添付する。

この手法であれば、RPG開発をメインに担当する現行のベンダーでも対応が可能であり、基本的にRPGで開発するので開発費や工数の増大を避けられるとのメリットが生まれる。

同じ手法を使って、新たにIBM i上で労務日報システムも実現した。これは現場担当者や制作に携わるデザイナーなども含めて社員がその日の作業内容を日報として入力するシステムであるが、これまでは基幹システムに取り込んでいなかった。そのため労務日報のデータは、月次処理を行う際に、いったんエクスポートしたものを、Db2 for iにインポートしていたという。

これがNEXT-COREでは基幹システムのプログラムとしてRPGで開発し、aXesでWeb画面に変換・編集する。運用されているWeb画面は、RPGで開発したとは思えぬほど、グラフィカルで使いやすいインターフェースとして完成している(図表12)。また、労務原価をリアルタイムに参照可能である。

図表1 労務日報画面①

NEXT-COREは当初の稼働目標を2022年4月に設定していたが、コロナ禍による進捗の遅れなどもあり、最終的には2023年8月に本稼働を迎えた。

「新システムでは仕入れ、販売、労務データなどがリアルタイムに処理できるため、月次処理を待つことなく、いつでもリアルタイムに実績や原価を管理できるようになったことが最大の効果」であると、労務日報システムの仕様作成を担当した企画統括本部の大塚光生本部長は指摘する。

大塚 光生氏

また画面上にExcelへのダウンロードボタンを置いたことも、Excelの使用頻度の高いユーザーに好評である。さらにWeb発注システムにより、大幅にペーパレス化が進んだことも大きな評価点だ。働き方改革の推進やコロナ禍への対応により在宅勤務が増えるなか、自宅でも印刷不要で確認でき、決済や押印が可能になった。これにより月間約1万枚以上の帳票削減を実現したという。

労務日報システムの実現により、1人あたりの作業時間が1日8分(10分→2分)短縮された効果も見逃せない点であろう。

「こうしたユーザー側の時間短縮、工数削減効果に加え、RPGを使用していることで、プログラム改修に伴う工数も削減すると考えています。画面を変更する場合も、Web特有の知識不要で、RPGだけで作業できる点が助かります」と、開発を担当する経営企画本部 経営企画部の藤田充雅部長は語っている。

藤田 充雅氏

 

[i Magazine 2024 Summer 掲載]

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