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日本情報通信「NI+C Cloud Power」「PowerクラウドNEXT」 ~仮想化基盤の拡充や災対ストレージなどによりハイエンドのクラウド・ニーズに応える |IBM iクラウドベンダーの戦略・サービス

サービスを向上させる
3つの大きな節目

日本情報通信は2009年に「NI+C Cloud Power」をスタートさせた。2011年にPower7モデルを提供し、2022年からはPower10モデルのサービス提供を開始した。

また、EDI、BCP、監視、ネットワークなどのオプションを順次追加してサービス内容を拡充するとともに、FISC(金融情報システムセンター)安全対策基準への準拠やPCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準)の認証取得などを実施し、高度なセキュリティ基準に対応する設備面での充実も図ってきた。

NI+C Cloud Powerの利用数は現在「約100社、250区画」。クラウド事業部副本部長の秋山粹史氏は、「2009年のスタート以来多少の波はあったものの、順調にご利用数を伸ばしてきました」と話す。

この100社を大・中・小の売上規模別に分けると、「ほぼ均等のお客様数」(秋山氏)という。大は売上高1000億円以上、小は100億円未満である。このことは、NI+C Cloud Powerが他のIBM i クラウドサービスと比べて大企業の比率が高いことを示している。これは中堅・大企業向けのサービス・設備を充実させてきた成果で、NI+C Cloud Powerは「中堅以上のIBM i ユーザーに強いクラウドサービス」と言えそうである。

NI+C Cloud Powerにはこれまでに、3つの大きな節目があった。1つは、Power8マシンの提供を契機に、サービスを高度化したことである。クラウド事業本部クラウドサービス部・第四グループ長の田部井貞治氏は、「仮想化基盤の拡充により冗長性や耐障害性を劇的に向上させ、現在のサービスの原型となる基盤を整備できました」と説明する。

2つ目は、2021年2月リリースの「災対ストレージ」である。ハイエンドストレージを横浜と大阪のデータセンターに配置し、本番データをバックアップ側に非同期でレプリケーションし、DRソリューションを提供するものだ(オプション)。

災対ストレージの基本メニューでは、災害で停止した本番機が復旧した後、バックアップ・データを本番機へ戻すことができる。拡張メニューでは、有事の際に利用するCPU・メモリを予約しておき、本番機が災害で停止した際にバックアップ機を立ち上げて本番稼働させることができる。

HAツールによるDRソリューションは本番側とバックアップ側に同じ仕組が必要になるため高価になるが、災対ストレージはHAツールを利用した構成の「2〜4割程度のコスト」で済む。「2021年以降は、災対ストレージがあるからNI+C Cloud Powerを利用する、というお客様が増えました。2021年以降のお客様の1/3以上は災対ストレージをご利用になっています」と、田部井氏は話す。

3つ目は、2021年6月のServiceNowの採用である。従来からのマネージドサービスにServiceNowを組み込むことにより大規模なクラウド基盤の運用が可能になった。

クラウド事業本部クラウドサービス部・第一グループ長の灘波誠二氏は、「2020年以降、NI+C Cloud Powerの引き合いが急激に増え、このままユーザーが増えた場合を想定し、クラウド基盤の運用・管理、カスタマーエクスペリエンスをいかに向上させるかを検討した結果、採用に踏み切りました」と理由を述べる。

幅広いユーザーが歓迎する
利便性やメンテナンス性

利用ユーザーには「カスタマーポータル」と呼ぶServiceNowのポータル画面が提供される。その上でインシデントへの対応や契約情報などを一元管理できる。「これによりサービスレベルとユーザビリティ(利便性)が向上しました」と、灘波氏。

また秋山氏は、「NI+C Cloud Powerには、お客様のプライベートネットワークを引き込んで社内ネットワークと同様にお使いいただける利便性や、LPM(筐体移動)機能を活用した柔軟なメンテナンスが可能で、それが売上高1兆円を超える企業から中堅・中小のお客様まで幅広くさまざまな場面でご利用いただけるポイントと考えています」と胸を張る。

同社とベル・データは2023年4月にパートナーシップ基本合意契約を締結し、両社のクラウドサービスを「PowerクラウドNEXT」として発展させ、協業していくことを発表した。日本情報通信はサービス基盤の企画・設計と運用管理の役割を担い、ベル・データと協力し新規ユーザーのさらなる獲得を目指す。NI+C Cloud Powerの目玉であった災対ストレージやServiceNowは、PowerクラウドNEXTにおいてさらにサービスを拡充して提供されるという。

図表 NI+C Cloud Power 災対ストレージ

 

[i Magazine 2024 Spring掲載]