IBMとHashiCorpは4月26日、IBMがHashiCorpを64億ドル(約9800億円)相当で買収することで両社が最終合意した、と発表した。
HashiCorpは、ハイブリッド/マルチクラウド環境の自動化を推進する製品を多数提供しているソフトウェアメーカー。クラウド基盤自動化(Infrastructure as Code)ツールの「TerraForm」は事実上の“業界標準”(IBM)で、そのほか、機密データや機微データへのアクセスを自動認証するセキュリティツール「Vault」や、ワークロード・オーケストレーション用の「Nomad」、サービス・ベースのネットワーキング・ツール「Consul」などを提供している。
IBMは今回の買収により、Red Hat、watsonx、データ・セキュリティ、ITオートメーション、コンサルティングなどの戦略的成長分野で「大きな相乗効果が期待できる」とし、両社のポートフォリオと人材の組み合わせにより「お客様に広範なアプリケーション、インフラストラクチャ、セキュリティ・ライフサイクル管理機能を提供できる」と述べている。
またHashiCorpは、Bloomberg、Comcast、Deutsche Bank(ドイツ銀行)、GitHub、J.P.モルガンなどの著名企業を含む「4400社以上の顧客」を有しているものの、Forbs Global 2000企業はそのうちの20%、年間10万ドル以上の経常収益を上げているのは全体の4分の1に過ぎないため、「世界175カ国で展開するIBM事業全体でHashiCorpを拡大する機会は非常に大きい」と、IBM CEO兼会長のアービンド・クリシュナ氏は期待を語った。この市場進出と製品の相乗効果によって、「買収後の最初の1年間は利益増、2年目はフリー・キャッシュ・フローの増加が見込まれる」という。
IBMでは従来、クラウド基盤自動化(Infrastructure as Code)製品として「Red Hat Ansible」を提供してきた。コードや設定ファイルの記述に基づき構成管理を行うという点ではHashiCorpのTerraFormと同種製品になるが、AnsibleはOS・ミドルウェア層の構成管理を得意とするのに対して、TerraFormは基盤管理のほうを得意とする違いがある。IBMは、Ansibleの構成管理とTerraformの自動化の組み合わせにより「ハイブリッドクラウド環境でのアプリケーションのプロビジョニングと構成を簡素化する」と強調している。
なお、今回の買収は2024年末までに完了する予定という。
[i Magazine・IS magazine]