Text=三神 雅弘 日本アイ・ビー・エム
現在の Navigator for i は、2021年の IBM i 7.4 TR7、IBM i 7.3 TR11 で登場して以来、毎年春と秋の2回、IBM i のテクノロジー・リフレッシュが提供されるたびに機能拡張を続けている。
当初は、それまでの Navigator for i の一部機能が提供されていなかったため、新旧の Navigator for i を併用する必要があった。
しかしその後のテクノロジー・リフレッシュで機能追加されたことで、旧版以上の機能が提供されるようになった。2022年12月に提供された IBM i 7.5 TR1、IBM i 7.4 TR7 では、多くの機能拡張が実施されている。
主な機能拡張は、以下のとおりである。
◎ホームページ
表示する IASP を選択し、IASP の切り替えを許可。
◎実行管理機能−アクティブ・ジョブ
基本、処理、詳細を表示。ジョブに対して SQLの詳細を表示。
◎ファイル・システム
IFS ツリービューとツリーテーブルをサポート。
◎セキュリティ
監査ジャーナルを更新。
◎ネットワーク
IPポリシー(パケットルールのリストとアクション)を追加。
◎モニター
システムモニターのVisualization パネルが再作成され、1つのモニターで監視されているすべてのメトリクスを 1つのパネルで表示。権限管理パネルを追加。
2023年4月の IBM i 7.5 TR2、IBM i 7.4 TR8でも、多くの機能拡張が実施された。以下にそのいくつかを見てみよう。
フィルター機能の拡張
Navigator for i でのシステム情報の表示画面では各カラムにフィルターがあり、表示する対象を絞り込めるが、これまでは一致する項目の表示のみが可能であった。
これに対してIBM i 7.5 TR2、IBM i 7.4 TR8 からは、フィルターに対して、「前方一致」「含まれる」「含まれない」「後方一致」「イコール(一致)」「等しくない」などの設定が可能となった(図表29)。
これにより、さらにきめ細かくリストの条件を選択できる。
統合ファイル・システム のファイルをアップロード/ダウンロード
統合ファイル・システム(IFS)のディレクトリを開く際、新しいタブで開けるようになった。IFSディレクトリでポップアップ・メニューを表示し、「Open (new tab)」を選択すると、そのディレクトリの新しいタブが作成される(図表30)。
IFSのファイルについては、これまでは表示のみ可能であったが、IBM i 7.5 TR2、IBM i 7.4 TR8 ではファイルのアップロード/ダウンロードを実行できる。
ディレクトリ・オブジェクトの権限変更の際に、画面右下の Propagate change to subtree をチェックすることで、サブツリーの下のすべてのオブジェクトに対して変更された権限が適用される(図表31)。
プリンター出力のエクスポートの拡張
実行管理機能メニューの「出力待ち行列」または「プリンター」、マイ作業メニューの「マイ・プリンター出力」から、複数のスプールファイルをPCのデスクトップへエクスポートする場合、従来はそれぞれ個々のファイルで出力されていた。IBM i 7.5 TR2、IBM i 7.4 TR8からは、複数のスプールファイルを1つのzipファイルにまとめて出力できるようになった(図表32)。
ジョブ・ログ表示の拡張
ジョブ・ログの表示で、「基本」と「すべて」の選択が可能になった。「基本」表示では、ジョブ・ログのメッセージのみが表示される(図表33)。
「すべて」を選択すると、それぞれのジョブ・ログの送信日時や重大度などのすべてのカラムの情報が表示される(図表34)。
アクティブ事前開始ジョブの拡張
アクティブ事前開始ジョブの変更・除去が可能になった(図表35)。
また、経過統計を表示できるようになった(図表36)。
以上、新しいNavigator for i に搭載された便利機能と、テクノロジー・リフレッシュにより拡張された最新機能について紹介した。ここで取り上げた以外にも、IBM i の管理に役立つ多くの機能が提供されている。
Navigator for i は、IBM i システムの監視・管理のためのツールとして機能を拡張し、使いやすさを追求してきた。これからもテクノロジー・リフレッシュが発表されるたびに機能拡張は続き、さらに強力で使いやすいツールとして発展していくだろう。
Navigator for i はIBM i の標準機能であり、追加料金の必要はなく、すぐに使用できる。まだ使用していないなら、ぜひ一度試してほしい。すでにNavigator for i を使用している場合でも、IBM i のリリースアップや最新のテクノロジー・リフレッシュを適用して最新版の使用を推奨したい。
Navigator for iを使うことによって、IBM i の監視・管理が少しでも効率化できれば幸いである。
著者
三神 雅弘 氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス
アドバイザリー Power テクニカルスペシャリスト
1989年、日本IBM入社。AS/ 400のテクニカル・サポートを担当。日本IBM システムズ・エンジニアリングへの出向を経て、2004年よりテックライン、2016年よりビジネス・パートナー向けテクニカル・サポート、2018年よりIBM iブランド業務を兼任している。
[i Magazine 2023 Summer(2023年8月)掲載]