情報処理推進機構(IPA)は10月20日、『ニューヨークだより』として、「米国における企業のデジタル活用事例調査」を公開した。
同調査は、伝統的企業でのDX成功事例を調査・分析し、日本企業の参考となり得る示唆を抽出することを目的としている。
元来IT企業ではなく、伝統的産業の現業がある上でDXに取り組み、成功を収めたと社会的に評価されている企業5社を調査・分析対象に選定した。
ここでのDXは、デジタル技術の活用による既存ビジネスの効率化のみならず、新たなビジネスや価値の創出を実現しているものを指す。
同調査では、DXに成功している企業は経営陣がDX推進に中長期でコミットするとともに、ビジネスニーズを起点にアーキテクチャー、ケイパビリティ、テクノロジーの取り組みをDX成熟度に応じ並行して実施している、と示唆している。
またDXに成功している企業は、DXについて具体的なビジョンがある上で、経営陣がそれを重要経営課題として中長期的にコミットし、専門の組織の立上げや全社投資を複数年にわたりトップダウンで実行している。
DXを行うことで、中長期的に企業価値を上げることを狙い、単年度の損益収支に捉われすぎない活動として投資を実行している。
具体的施策はトライ&エラーを繰り返すアジャイル的なビジネストランスフォーメーションになることから、その成果を厳格なROIで管理するのではなく、変革の進展度を見るKPIも活用して管理している。
さらに、「DXが成功している企業の特徴として、ITなど技術部門主導でDXを推進するのではなく、あくまで事業側が理解している顧客ニーズや業務上の課題を解決する手段としてデジタル技術を活用している」と指摘する。そのためには、ビジネス部門の従業員がデジタル技術やデータを活用してビジネス変革を推進できるようになることが必要である。
一般的にテクノロジー専門家は現場での事業の知見が少なく、ビジネスに精通した従業員はテクノロジーやデータ活用の知見が十分でない。DX先進企業はそのギャップを解消し、ビジネス起点でのDXを実現するために、組織体制整備や従業員へのDXスキル教育に取り組んでいる、と指摘している。
◎IPA 「米国における企業のデジタル活用事例調査」(PDF)
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/trend/ny-dayori.html
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