IBMは8月22日、IBM Z上でCOBOLからJavaへのマイグレーションを可能にし、同プラットフォームでの開発者の生産性を高める新しい生成AI支援ソリューション「watsonx Code Assistant for Z」を発表した。
同ソリューションは2023年第4四半期に提供開始予定で、COBOLアプリケーションのモダナイゼーションを加速するために設計されている。watsonx Code Assistant for Zは、9月11～13日にラスベガスで開催される技術イベント「TechXchange」でプレビューされる。
watsonx Code Assistant for Zは、今年後半にリリースが予定されているIBM watsonx Code Assistant for Red Hat Ansible Lightspeedとともに、watsonx Code Assistant製品ファミリーに新たに加わる。
これらのソリューションは、IBMのwatsonx.aiコードモデルを核とする。watsonx.aiコードモデルは、1.5兆個のトークンから学習した115のコーディング言語に関する知識を持ち、200億個のパラメータを備え、コード自動化のための最大級の生成AI基盤モデルを目指している。
watsonx Code Assistant for Z は、IBM Z のパフォーマンス、セキュリティ、弾力性の維持を目標に、生成 AI と自動化ツールを活用してメインフレーム・アプリケーションのモダナイズを支援するように設計されている。
COBOLは、世界中の組織で多くの重要なビジネスや業務プロセスをサポートしている。規模が大きくなれば、開発者はwatsonx Code Assistant for Zを利用することで、COBOLのビジネスサービスを選択的かつ段階的に、そして適切に設計された高品質のJavaコードへ、他のアプローチよりも容易に変換できるようになる。
生成AIは、適切なコードをより迅速に評価、更新、検証、テストできるよう支援し、大規模なアプリケーションをより効率的にモダナイズし、開発者がよりインパクトの大きいタスクに集中できるように支援する。
IBMは、モダナイゼーションの各段階に対応するツールを提供するために、同ソリューションを設計している。これには、IBMのアプリケーション・ディスカバリー＆デリバリー・インテリジェンス（ADDI）ツールが含まれる予定である。
さらにADDIに加えて、COBOLのビジネスサービスのリファクタリング、COBOLコードから最適化されたJavaコードへの変換、自動テスト機能を使用した結果の検証などが含まれる。
watsonx Code Assistant for Zには、次のようなメリットが期待されている。
・アプリケーションのモダナイゼーション・ライフサイクル全体を通じて、コード開発を加速し、開発者の生産性を向上させる。
・IBM Z 上のコードの移行と最適化を含めて、アプリケーションモダナイゼーション・イニシアチブのトータルコスト、複雑性、リスクを管理する。
・卓越したIT スキルを利用することが可能になり、開発者の参画を促す。
・モデルのカスタマイズとベストプラクティスの適用により、高品質で保守が容易なコードを実現する。
AIによるメインフレーム・アプリケーションの
モダナイゼーションが急務に
IBM Institute for Business Valueの新しい調査によると、企業は今後2年間で、アプリケーション資産をゼロから再構築するのではなく、既存のメインフレーム資産を活用する可能性が12倍高くなると指摘する。しかし同時に、同じ組織にとっての第1の課題は、リソースとスキルの不足であることも示している。
「watsonxを通じて生成AI機能を新たなユースケースに導入することで、お客様の真の進歩を促進する計画です」と、IBMソフトウェアのプロダクト・マネジメント＆グロース担当シニア・バイス・プレジデントのカリーム・ユスフ博士は述べる。
「IBMは、watsonx Code Assistant for Zを、的を絞った最適化されたアプローチをとるように設計しています。これは、IBM Zに最適化されたコードを迅速かつ正確に変換し、市場投入までの時間を短縮し、スキルプールを広げるために構築されています。これにより、IBM Z固有のパフォーマンス、回復力、およびセキュリティを維持しながら、アプリケーションを強化し、新しい機能を追加することができます」
現在、アプリケーションをモダナイゼする多くのアプローチが提供されている。その選択肢には、すべてのアプリケーションコードをJavaで書き直すことや、すべてをパブリッククラウドに移行する手法も含まれる。
しかしそうした場合、IBM Zの価値提案の中核となる機能を犠牲にする可能性がある一方で、期待されるコスト削減を実現できないことも考えられる。COBOLアプリケーションをJavaに変換するツールは保守が困難で、Java開発者が認識できないコードを生成する可能性もある。生成AIは有望だが、現在のAIが支援する部分的なリライトテクノロジーは、COBOLをサポートしておらず、生成されるJavaコードは目的とする最適化レベルには値しない。
watsonx Code Assistant for Zから得られるJavaコードは、オブジェクト指向である。IBMはこのソリューションを、COBOLアプリケーションの残りの部分、すなわちCICS、IMS、Db2、および他のz/OSランタイムとの相互運用に最適化するように設計している。またJava on Zは、x86プラットフォームと比較してパフォーマンスが最適化されるように設計されている。
ガバナンスとイノベーションの基盤の構築
2023年のガートナーのレポートによると、「2028年までに、人間とAIアシスタントが連携して作業することで、コーディング作業を完了するまでの時間が30％短縮される可能性がある」という。
同レポートはさらに、「AIによるコード生成ツールは、堅牢で安全な製品開発のために開発者が必要とする品質保証プロセスやセキュリティ管理のレベルには達していない。またコード生成手法がもたらすリスクを解消するわけでもない」と述べている。
生成AIの実装に関しては、機密データと顧客の知的財産の保護が重要である。IBMは何十年にもわたって、信頼性と透明性へのコミットメントに基づく基本原則に従ってきた。この原則に基づくアプローチにより、watsonxプラットフォームは、企業が自社の信頼できるデータと知的財産を活用して、業務全体にわたって拡張可能なテーラーメイドのAIソリューションを構築することを目指している。
さらにIBMコンサルティングは、銀行、保険、ヘルスケア、政府機関などの主要産業において、IBM Zのアプリケーション・モダナイゼーションに関する深い専門知識を提供し、このプラットフォームを活用するクライアントの指導に重点を置いている。
これらの専任コンサルタントは、watsonx Code Assistant for Zの潜在的なメリットを最適化するために、顧客がモダナイゼーションすべき適切なアプリケーション分野を特定するのを支援する。
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