森原達夫氏
ソリューション・ラボ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
森原達夫氏が代表取締役社長に就任した2022年4月、ソリューション・ラボ・横浜はソリューション・ラボ・ジャパンへ会社名を変更した。設立30周年を機に、新たなコーポレートスローガンを掲げ、組織改編に着手。新しい事業領域の拡大に向けて、これからの30年を歩み始めたソリューション・ラボ・ジャパンの戦略を森原氏に聞く。
ソリューション・ラボ・横浜から
ソリューション・ラボ・ジャパンへ
i Magazine(以下、i Mag) 代表取締役社長に就任された2022年4月に、「ソリューション・ラボ・横浜」から「ソリューション・ラボ・ジャパン」へ、会社名を変更されましたね。この社名変更に込めた思いをお話しください。
森原 当社は昨年に創業30周年を迎えました。社長は私で5代目になります。歴代の経営者・従業員が一丸となり、メインフレームやIBM iなど、企業の根幹となる基幹システム関連のITサービスを提供することで、ここまで成長してきました。おかげさまで2022年度は、利益・売上ともに過去最高の業績を達成しています。
30周年を迎えるにあたり、社員全員で記念となる取り組みをいろいろと検討したなかの1つが社名変更でした。実は数年前から検討を重ねてきたのですが、30周年を迎えるにあたって今後の30年の成長を思い描いた結果、このタイミングで着手することになりました。
ソリューション・ラボ・横浜というと、どうしても横浜を中心に首都圏をカバーするというイメージがあります。しかし当社では3年前、福岡に西日本支店を設立するなど、首都圏にとどまらず、東日本・西日本へと広くビジネスエリアを拡大しています。そこで横浜からジャパンへ、つまり日本全国をカバーするというコンセプトを込めて、ソリューション・ラボ・ジャパン(SLJ)という社名に変更したわけです。
i Mag 社長に就任されてから、どのような戦略・施策を打ち出したのですか。
森原 まずコーポレートスローガンとして、「気づく、見つける、ともに創る。」を掲げました。これは「対話で課題に気づく、頭脳で糸口を見つける、さまざまな人と協力してともに価値を創り出す」という企業理念を表現しています。
私はこれまでの「パートナー」としての役割を、もっと広く捉え直す必要があると考えています。ユーザーとベンダーの垣根を越えて、お客様の組織の中に深く分け入り、お客様自身が気づいていない課題を発見して、提案・解決する。お客様との共創により、構想段階から構築・運用までをトータルにサポートできる。そういったIT企業へ成長していきたいと思います。
i Mag 具体的にはどのような施策を展開しているのですか。
森原 今年から、つまり2023年度から新たな中期経営計画をスタートさせました。これは6年先を見据えてビジョンを描き、2023〜2025年の前半3年に向けた「Vision SLJ 2025」と、2026〜2028年の後半3年に向けた「Vision SLJ 2028」に分けて推進しています。そのなかでは既存の2つのコア事業のほかに、新しい事業領域の拡大を目標に掲げています。すなわち西日本事業の拡大、お客様のモダナイゼーションとDXの実現、そして専門のサービスに特化した事業領域の深堀りです。今年4月には、それを実現するための組織改革に着手しました。
新しい事業領域の拡大に向け
組織改革に着手
i Mag これまでは2つのコア事業を推進する2つの事業部で組織を構成していたのですね。
森原 そのとおりです。当社は長きにわたり、ITS事業とソリューション事業という2つの事業部を軸にビジネスを展開してきました。ITS事業はIBM zをはじめとするメインフレーム、およびLinuxやWindows、各種クラウドサービスなど、サーバー関連のインフラ技術支援を提供します。一方のソリューション事業はIBM iをコアに、PHPやJavaなども活用して、基幹システムからWebアプリケーションまでの開発・保守を担っています。
これは長く当社を支えてきた事業体制ですが、双方の独立性が高いゆえに、昨今のIT市場の変化に照らし合わせると、うまく整合しない場面も増えていました。2つの事業部が別々に動くのではなく、双方のスキルやノウハウをうまく活用・連携すべき場面が増えていたのです。
そこでメインフレームやIBM iの基幹システムを大切に守り、レガシーの強みを活かしながらモダナイゼーションを実現する。その一方、新しいテクノロジーを活かしながら新しい価値を創造する。つまり、「レガシーIT」と「モダンIT」の双方を武器にビジネスを展開していきたいと考えました。
それに向けて、今までの2事業部制を廃止し、2023年4月から5つの事業部を発足させ、互いに連携し、シナジー効果を活かせるような組織体制をスタートさせました。
i Mag 実際にはどのように事業部を再編したのですか。
森原 第1サービス事業部はIBM i関連の部隊で、既存システムの開発・保守・維持管理、およびモダナイゼーションを実現します。第2サービス事業部は、メインフレームのz/OSとクラウドサービスを意識したビジネスモデルの構築を目指します。第3サービス事業部は、統合ICTソリューションと食品業界へ特化したソリューションを提供します。第4サービス事業部は、主に西日本エリアの拡大を念頭に、LANSAをコアにしたビジネス領域を成長させます。そして5つ目の事業部となるビジネス・テクニカルソリューションは、従来から強みとしてきた製造関連ソリューションやインフラ構築支援など、専門性の高いサービスの拡大を目指します。
i Mag このような5つの事業部制にすることで、どういった効果が生まれると考えていますか。
森原 部門横断型の組織運営を可能にすることで、経営資源を最適化しつつ、各事業部のスキルやノウハウを連携できる体制にするという狙いがあります。
メインフレームやIBM iの基幹システムを大切に守ることはもちろんですが、今後はクラウドサービス、ローコードアプリケーション開発、ERPの導入および運用支援、そしてRPA、IoT、BPMなど、お客様のDX実現に向けた先進的なICTサービスの充実を図っていく計画です。そのために従来のITS事業とソリューション事業の一部を融合し、統合ITサービス事業を立ち上げ、新しいソリューションの実現を目指していきます。
新しいソリューションブランド
「SLJ Sustainable Solutions」
i Mag 新たなソリューションを実現していく施策の一環として最近、新しいソリューションブランドを立ち上げましたね。
森原 そうです。中期経営計画に沿って、新たなソリューションブランドである「SLJ Sustainable Solutions」を打ち出しました。持続可能なサービスをベースに、お客さまとの共創価値を創出しようという考えに基づいています。IBM i分野については、持続可能なIBM i基盤の確立を目指し、3つのソリューション/サービスの提供を開始しました。すなわちクラウドサービス、LANSAフレームワーク、研修サービスの3つです。
i Mag 具体的に教えてください。
森原 1つ目は「Quick! Power for i」で、これはIBM iの運用から保守までをワンストップでご提供するデータセンター型のマネージドサービスです。業務提携先のデータセンターを活用しながら、マネージドサービスを付加したクラウドサービスとしてIBM iを柔軟に利用いただける環境をご用意しました。
2つ目は「Quick! Base for LANSA」です。これはローコード開発ツールであるLANSAによるWebアプリケーション開発を加速させるためのフレームワークです。当社ではIBM iのWebアプリケーションを開発する手法として、IBM iとの親和性が高く、資産継承も可能なLANSAを選択し、開発実績を積み重ねてきました。その経験のなかで、LANSAの特性を理解しながら、Webアプリケーションを容易に開発するためのコンポーネントやユーティリティを多数開発しました。それらを集約してフレームワーク化したのが、Quick! Base for LANSAです。
i Mag そして3つ目が研修サービスですね。
森原 そうです、「Quick! Learning」です。これは開発人材の不足に悩むお客様の課題を解決しようとスタートさせた研修サービスです。フリーフォームRPG(FFRPG)入門、統合開発環境であるRational Developer for i(RDi)のハンズオン、ベテランRPGプログラマーに向けたILE RPGの学び直し(リスキリング)などのコースをご用意しています。またご要望に応じて、LANSAなどの教育にも対応します。原則的にお客様先で開催するオーダーメイド型の研修サービスで、二ーズや教育目標に応じたカスタマイズに対応していきます。こうしたソリューションについては今後もラインナップの充実を図っていく予定です。
i Mag 中期経営計画が終了する6年後には、どのようなITベンダーに成長していきたいですか。
森原 先ほどもお話ししたようにレガシーITとモダンITを両立できる、すなわちこれまでの基幹システムを大切に守りつつ、新しいテクロジーを活用して新しい価値を創出できる、そんな両輪で前に進んでいける企業に成長させたいと思います。なにより、今後も社会から必要とされるITサービス企業であり続けること、そして社員の皆が安心して、かつ生きがいをもって働ける企業であり続けながら、これからの30年を進んでいきたいと考えています。
森原達夫氏
1992年、ソリューション・ラボ・横浜の設立時に立ち上げ、メンバーとして出資元企業より参加。AS/400上でRPGを活用したシステムエンジニア兼プログラマーとしてスタート。その後、プロジェクトリーダーとして日本IBM、大手SIベンダーの生産管理システム導入プロジェクトを数多く経験。2005年に執行役員、2012年にソリューション事業部長、2013年に取締役に就任。2022年より現職。
(撮影:内田和稔)
[i Magazine 2023 Summer(2023年8月)掲載]