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電帳法・インボイス制度対応:請求書からスタートする企業間「書類」取引の電子化・その拡張

 

電帳法やインボイス制度への対応を「請求書」から始める企業は多い。
しかし、請求書だけを視野に電子化に取り組むのと請求書フェーズ前後の「契約書」や「見積書」「領収書」なども視野に入れて電子化に着手するのでは、システム導入後の事務担当者の作業効率やシステム運用の効率化が大きく違ってくる。
特効薬のようなソリューションはあるのだろうか。識者に聞いた。

書類取引の電子化には
4つの機能が必要になる

インボイス制度の開始(10月1日)や電帳法の電子取引宥恕措置の廃止(2024年1月1日)が目前に迫ってきた。ツール/ソリューションを提供するベンダー各社は「現在も対応を進める企業は少なくない」と口をそろえる。

電帳法やインボイス制度への対応は、どの企業にとっても大変な労力を要する案件である。しかし元をたどれば、納税者の帳簿書類の作成・管理の負担を軽減する目的で創設されたもので(電帳法は1998年、インボイス制度は2021年)、その背景には帳簿書類の作成・保管・送受信にかかわるシステムの広範な普及があった。

とはいえ、電子データは紙の書類と比べて改変されやすい特性をもつため、データの真実性や、データをいつでも容易に確認できる見読性の確保が要件とされた。それを細かく定めたのが電帳法であり、インボイス制度である。

ベンダーは、この2つの法令への企業の対応について、「守りの対応」と「攻めの対応」の2タイプがあると指摘する。守りの対応とは、法令遵守のために「やらざるを得ない」という姿勢で臨むもの。攻めの対応とは、法令遵守を優先しつつも企業全体の書類業務の効率化・高度化を念頭に置いて進めるものである。

日鉄日立システムソリューションズの吉留宏和氏(営業統括本部ソリューション営業部シニアマネジャー)は、「お客様からのお問い合わせや引き合いは、圧倒的に守りの対応が多数を占めます」と話す。しかし会話を進めるうちに、「守りの対応から攻めの対応へと考え方を変える企業も少なくありません」とも言う。

「たとえば、契約書を紙(郵送)と電子データの2通りで受け取っているお客様は、まず電子データで受領している契約書の法令対応を念頭に置き、紙のほうは次の段階で考えるというスタンスであることがよくあります。しかし紙で受領した契約書も同じ仕組みの中で一元的に管理できるソリューションがあることをご説明すると、少なからず驚かれます。また取引先が将来的に紙から電子へ契約書の送付形態を切り替えても対応可能なことをお伝えすると、“電子取引は進化している”と感心されることもあります」(吉留氏)

吉留 宏和氏

企業が取引先や個人(社員を含む)と取り交わす書類には、契約書、注文書、請求書などさまざまな種類がある(図表1)。

 

図表1  想定される電子取引データの例

そしてそれらを電子的な仕組みで整理すると「電子契約」「電子取引」「書類配信」の3つに分類でき、そのいずれにも「ドキュメント管理」が必要になる(図表2)。

図表2  企業間取引で必要となる4つの機能

これらはインボイス制度や電帳法にも密接にかかわる。しかし本稿では、企業間の書類のやり取りにスポットをあて、電子化をみることにしたい。

「書類」電子化をトータルに
考えるときのポイント

IT市場では、上記4つの機能に個々に対応する製品・サービスが多数ある。電子契約に対しては「電子契約サービス」、電子取引には「EDIサービス」、書類配信には「書類配信サービス」、ドキュメント管理には「ファイル管理サービス」といった製品・サービスである。

吉留氏は、「企業が他社と取り交わす書類のトータルな電子化を考えるときは、個々のサービスと他のサービスのスムーズな連携と、運用・管理を統合的に行えることがポイントです。そうでない場合は、運用・管理の工数が増大化し、全社的な展開が困難になります」と指摘する。

ここで、請求書の送付・受領を起点に、取引書類の電子化の範囲を広げていく場合を考えてみよう。請求書からスタートするのは、国税庁によって国税関係帳簿書類の「重要書類」に区分されているのと、実際に「請求書から始める案件が多い」(吉留氏)からである。

請求書の送付・受領の前段として、契約の締結、見積依頼に対する回答、受発注作業などのフェーズがある。また後段には、領収書や支払通知書などの送付・受領が必要になる場合もある。つまり、請求書は企業間取引で発生する各種書類作業の最終フェーズであり、企業間取引の書類作業全体の効率化・高度化に視点を置くならば、契約の締結や見積、受発注などの電子化も不可欠なことがわかる。

この観点で図表2を見ると、企業間取引の電子化を請求書の送付・受領(書類配信)からスタートしても、電子化の範囲を広げていくには「電子契約」「電子取引」「ドキュメント管理」の仕組みが必要になり、仕組みと仕組みの間の「スムーズな連携」が必要なことが理解できるだろう。

クラウドベースのプラットフォーム型

日鉄日立システムソリューションズの「DocYou」は、図表2の4つの機能を包含する企業間取引の電子化ソリューションである。つまり、すべての機能が備わっているので、請求書の「書類配信」から始めても、「電子取引」や「電子契約」へと電子取引の範囲を段階的に拡大していける(図表3)。

図表3  DocYou上で企業間電子書類取引の範囲を段階的に拡大できる

また紙と電子を並行運用していても、紙の書類をスキャナ保存して取り込み、一元的に管理できる機能ももつ。吉留氏は、「電子契約サービスや書類配信サービスなどを“専用型”とすると、DocYouは“統合型”のサービスです」と強調する。

DocYouは、統合型ゆえに可能となるさまざまな特徴を備えている。クラウドサービス(SaaSタイプ)という点からは、次の特徴を挙げることができる。

・スモールスタートが可能で、必要な書類の電子化から始め、段階的に電子化の範囲を拡大していける。
・少量の書類から「月間数十万件」(吉留氏)規模の書類まで対応可能で、書類の量に応じて処理をスケールできる。
・多種類の書類を同一の操作で送受信でき、どこからでも利用できる(セキュリティの担保が必要)

しかし、企業間書類取引のさまざまなツール/サービスの中にDocYouを置いてみると、同社のいう「プラットフォーム型」という特徴が際立って見えてくる。

DocYouの企画・開発者でもある吉留氏は、「DocYouの発端は、書類の配信に苦労されていたお客様からのご相談でしたが、製品化にあたって他社のサービスを精査してベンチマークし、さらにお客様の課題を解決する最良の仕組みを検討した結果、クラウドベースのプラットフォーム型にすることを決めました」と、製品化の経緯を話す。

プラットフォーム型というのは、DocYou上で、請求書、契約書、見積書などの書類を混在させて扱うことができ、1つのアカウントで複数の企業と書類のやり取りが行えることを指す。また、書類の送受信ごとにログイン・ログアウトを行う必要がなく、1回のログインで複数の取引先に、取引先ごとに必要な書類を送受信できる。

n対nのメリットを享受できる統合型

日鉄日立システムソリューションズでは、1つのアカウントで複数企業とやり取りできる特徴を「n対n」と呼び、アピールしている。n対nを実現するには、取引先にDocYouを導入してもらうか、DocYouの「招待機能」を使って取引先に利用してもらう(取引先企業にDocYouの費用はかからない)ことが前提になるが、この環境がセットできれば企業間取引の効率を飛躍的に高めることができる。

「専用型サービスでは、送信側がアカウントを固定し、受信側企業にそれへの対応アカウントを作成してもらう必要があるため、『1対n』のやり取りになります。この場合、自社からの送信アカウントと他社から書類を受信するアカウントが異なるので、送受信のたびにアカウントを切り替え、ログイン・ログアウトを行う必要があります。この非効率性は、書類の送受信量が増えるにつれて顕著になり、多くのお客様企業で課題になっていました。その解決策として設計したのが、プラットフォーム型のDocYouです(図表4図表5)」(吉留氏)

図表4 専用型サービスは1対n
図表5 プラットフォーム型はn対n


プラットフォーム型のDocYouは、検索機能にも特徴がある。取引先企業を横断して請求書だけを一覧したり、期間を限定して特定企業とのやり取りだけを確認できたりする。これは図表2の4つの機能を横断する「ドキュメント管理」機能があるからだ。

またワークフロー機能を使って、受信した請求書を決裁担当者へ転送し、承認済みの書類を基幹システムへ自動連携し処理することも可能という。

IBM iなど基幹システムとの連携は、DocYouが装備するAPIや「アップローダー」と呼ぶ簡易連携機能(書類をフォルダに保存すると、基幹システムへ自動連携)を使って実現できる。

さらに現在、IBM iベンダーのアイエステクノポートが同社の帳票PDF化ツール「UT/400-iPDC」とDocYouを連携させる「UT/400 Cloud Connector DocYou連携アダプター」を開発中という。UT/400-iPDCが生成するPDFに、DocYou用の各種情報をパラメータ設定で付加してDocYouへ送出できる。これにより、IBM i上の基幹データをダイレクトに取引先へ送信可能になる。今年秋の発売を予定しているという。

最近、APIによる異なるシステム/サービスの連携が注目を集めている。しかし、こと企業間でやり取りする書類に限っては、“専用型”サービスをAPIなどで連携させる形態よりも、“統合”のメリットを享受できるプラットフォーム型が1つの有力な方向性を示していると思われる。

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