「Airs RPG to Java」はNCS&Aから今年6月にリリースされたサービスで、RPGアプリケーションをJavaへマイグレーションするための、新しい考え方に基づくサービスである。RPGからJavaへ変換・移行するためのツール/サービスは市場に数多く存在するが、その大半はRPGシステムを一括で書き換え、IBM Powerとは別のオープン系プラットフォーム上で稼働させるマイグレーションである。
Airs RPG to Javaは、Javaへの変換を一括で行わず、ユーザーの実状に合わせて、段階的に切り替えを行い、変換後のJavaアプリケーションもPower上(Linux区画)で稼働させる移行である(図表1)。
「一括で切り換えると、Java技術者の新規雇用や社内要員の育成が必要になり、時間とコストがかかります。さらに新しいサーバーが必要な場合は、その導入費用もかかります。また実際の案件で浮上するのは、一括で変換した場合、抱えるRPG技術者をどうするか、という問題です。これに対してPower上で段階的にJavaへ変換していけば、その間にRPG技術者をリスキリングするための時間的余裕もでき、無理のない移行が実現できます」と、NCS&Aの担当者は説明する。
Airs RPG to Javaのもう1つの特徴は、NCS&A独自の手法によってマイグレーションを行う点である。同社では、20年以上前から金融機関などの大規模システムを中心にマイグレーションを実施してきた。そして約20年前にマイグレーションの大型案件が増加してきたことから、移行作業の効率化と品質向上を目的に、システム資産を可視化するツールと機械変換のための変換エンジンを内製化した。それにマイグレーションの知見・ノウハウをセットしてサービス化したのが、Airs RPG to Javaのベースを成す「Airs」である。Airsは過去20年間に、「累積100メガ(1億)ステップを超えるプログラム」を対象に実施され、「スケジュール(納期)・予算厳守、業務に影響の出るようなトラブルなしのプロジェクト成功率100%を誇ります」と担当者は胸を張る。
同社のマイグレーションは、現行プログラムを可視化ツールによって移行すべき資産とそうでないものに選別し、さらに変換エンジンによって変換できるものは変換し、変換できないものについては同社が手動で変換作業を行い、そのうえで現行プログラムと変換プログラムの比較テストを実施するプロセスで進める。これにより、「プロジェクト成功率100%を実現している」(担当者)。変換については、従来の変換パーツで不足するものはその都度、ユーザーのプログラム特性に合わせて開発するという。
Airs RPG to Javaは、Airsの特徴をそのまま引き継ぐRPGユーザー向けの新しいサービスである。RPGからJavaへの変換エンジンは、同社がこれまでにRPGユーザー向けに実施してきたマイグレーションを基に、知見・ノウハウを結集して新たに開発した。またAirsと同様、開発した変換パーツで不足するものは随時、移行プロジェクトの中で開発していく方針(図表2)。
同社ではAirs RPG to Javaの利用メリットとして、「リスク、期間、コストの大幅な縮小」を挙げる。期間・コストについては通常のマイグレーションと比較して「半分以下」という。
さらに、RPGからJavaへの移行で起こりがちな図表3のような“ミス(考慮漏れ)”を見逃さない「豊富な実践経験」もメリットとして挙げる。これにより「移行後のシステムトラブルを未然に防止できる」という。また、SpringやJakarta、Strutsなどのフレームワークに合わせた変換も可能で、「お客様に最適なマイグレーションを実現できます」としている。
同社は今年2月に、IBM i上のシステム資産の状況を多様な切り口で分析可能なクラウドサービス「DX支援サービス」をリリースした。3つのステップでシステム資産の把握からDXへの準備までを短期間に行えるサービスで、最終的には以下のどの方式がユーザーにとって最適かを示すものである。
・システムの全面的再構築
・ハイブリッド構成への移行
・マイグレーション
・IBM iの継続利用
Airs RPG to Javaはこの「マイグレーション」に該当するサービスで、DX支援サービスと連携して利用することによって、「より迅速に、かつ効率的なマイグレーションを行うことが可能です」と、担当者は話す。
旧来システムのモダナイゼーションとRPG技術者の高齢化ないし要員不足への対処は、多くのIBM iユーザーにとって“待ったなし”の段階にきている。Airs RPG to Javaは、そうしたユーザーの実情を踏まえた新しいタイプのマイグレーション・サービスである。
[i Magazine・IS magazine]