矢野経済研究所は7月27日、国内データ分析関連人材規模を調査し、採用や研修、育成方法などの現況や職種別の動向、および将来展望を明らかにした。
1 市場概況
データサイエンティストを中心にジョブ型採用が進む
現在、データ分析関連人材(分析コンサルタント、データサイエンティスト、分析アーキテクト、プロジェクトマネージャー)を取り巻く状況では、新卒採用・中途採用を問わず、AI人材を含むデータサイエンティストを中心に各企業が採用活動に取り組んでいる。
また研修では、社内や社外向けの各階層に向けた研修プログラムの整備が進んでいる。しかしデータ分析関連人材の獲得競争は特に中途採用で激しく、当該人材は全般的に不足している状況にある。
まず新卒採用について、大手IT事業者はデータサイエンティストを中心にジョブ型採用を進めている。ユーザー企業では総合職など従来からの一括採用をベースとしつつも、IT系の職種を中心に一部でジョブ型採用にシフトしつつあり、データサイエンティスト職種を中心にスペシャリストとして採用する動きが出てきている。
次に中途採用では、IT事業者、ユーザー企業を問わず、即戦力となるデータサイエンティストの採用を積極的に行っている。特にユーザー企業では電気や自動車、化学、製薬等の製造業や流通・小売業、金融業を中心に積極的に採用活動を行っている状況にある。
一方、研修面について、IT事業者は社内研修に限らず、リスキリングニーズも相まって社外向けにも研修を提供する傾向にある。また、ユーザー企業では外部の研修プログラムなども取り入れ、急ピッチで研修プログラムの整備を進めている。その他、地元の大学と連携した高度なプログラムを整備する企業もある。
また、データサイエンティストの不足が課題となるなか、教育機関でもデータサイエンス学部・大学院の設置が進み、データサイエンティストを中心に輩出に向けて取り組んでいるものの、教師の不足は引き続き課題として横たわっている。
2 注目トピック
IT事業者は優秀な人材を惹き付ける仕組みづくりが、ユーザー企業では多層的な研修プログラムの充実に向けた動きが加速
優秀な人材確保に向けて、IT事業者では大手を中心にさまざまな施策に取り組む動きが広がっている。自社独自の認定資格整備のほか、データサイエンティストをより惹きつけるべく、社内外向けのハッカソン参加や柔軟なIT環境の整備に加えて、トップ研究者の確保に向けて有期雇用での特別な雇用制度を設け、能力に応じた高額な年俸制度を整備する動きなどがみられる。
ユーザー企業では、データをもとに意思決定を行い、経営に活かすデータドリブン経営の浸透を図るべく、データサイエンティストをその指南役に位置づけている。そしてデータサイエンティストの育成と併せて、経営層やマネジメント層に加え、全社員に向けて各々の階層に応じた研修プログラムを提供する動きもみられるなど、多層的な研修プログラムを通じたデータ分析関連人材の育成を進めている。
自治体でも、全庁的にEBPM(Evidence-based policy makingの略。証拠に基づく政策立案)の推進に取り組むべく、データ分析関連人材の採用や育成に向けて取り組んでいる。
3 将来展望
2025年度の国内データ関連人材規模(人数ベース)は17万6300人に達すると予測
データ分析関連人材について職種別にみると、DXやデータドリブン経営の推進を背景として、データ分析案件の増加や内製化の進展に伴い、データ分析関連の4種の人材がいずれも伸びていく見通しである。
IT事業者では、DX関連プロジェクトを推進していくうえで、データサイエンティストや分析アーキテクトのようなIT寄りのスペシャリストと併せて、特にビジネスとしての成功に重きを置く分析コンサルタントの重要性がますます高まっていく見込みである。
ユーザー企業ではデータドリブン経営の浸透に伴い、データ分析の内製化に向けた機運が強まっており、データサイエンティストや分析アーキテクトを中心に専門部署を起ち上げる企業もみられる。
また、データ分析支援に関わる専門部署に留まらず、事業部門側でも事業の効率化や新事業の立ち上げなどにデータ分析の活用が広がりを見せつつある。
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