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“IBM iの父”F・ソルティス氏が熱弁、IBM i35周年記念イベント開催 ~単一レベル記憶とPowerアーキテクチャ移行による広大なアドレス空間が発展の基礎

欧州向けWeb討論会
欧州向けWeb討論会

IBMは、AS/400の発表から35年目にあたる6月21日、「IBM i35周年記念イベント」をオンラインで開催した。日付が最も早く変わる「アジア太平洋向け」からスタートし、「欧州向け」、「北米向け」へとイベントを移していった。

3つのイベントのハイライトは、メンバーを違えたWeb討論会。“AS/400の父”“IBM iの父”と呼ばれるフランク・ソルティス氏が3つのWeb討論会のすべてに参加し、開発秘話を含めてIBM i成長の技術的核心と今後の展望などを、現役さながらにエネルギッシュに語った。また、IBM iのコミュニティに話が及ぶと、“大好きだったコミュニティ”として日本のiSUCを挙げ、「1990年代初めにiSUCに参加したとき、その参加者の多さに圧倒されました。それ以来毎年iSUCで話す機会がありましたが、実に楽しい思い出でした」と振り返った。

3つのWeb討論会は、IBMエキスパート・ラボ CTOのイアン・ジャーマン氏が司会を務めた。同氏はIBM i製品マネージャーを長く務めた人。

ジャーマン氏は、Web討論会のために次の4つの質問を用意し、参加者に投げかけた。

・IBM iは今後35年間にどう変化するか。
・IBM iが過去35年生き延び、今も技術的優位に立つ理由は何か。
・IBM iコミュニティについて。
・次世代を担う若いIBM i技術者への提言。

以下、「IBM iは今後35年間にどう変化するか」に関する主な発言を紹介しよう。なお討論会の参加者名は末尾にまとめた。

フランク・ソルティス氏
「IBM iの今後を考えるとき、AS/400の開発時に私たちが抱いていた当初のコンセプトのいくつかを思い出します。その1つは、どうすれば本質的に永遠に続くシステムを構築できるかということで、その答えの1つが、単一レベル記憶というコンセプトでした。単一レベル記憶は、すべてのユーザー、すべてのインターフェース、すべてのものを1つのアドレス空間に包含でき、さらに多くの異なるシステムにまたがるアドレスを包含できるというアイデアです。そして実際、単一レベル記憶は実装され、現在も生き続けています。

未来に目を向けると、人工知能や量子コンピューティングのような新しいテクノロジーが登場しています。IBM iのチャンスは、そうした複数のシステムをカバーするように単一レベル記憶を拡張できないかということです。言い換えれば、これらのシステムのクラスタ間で直接アクセスできるようにすることです。

私は1990年代初頭にIBMのPowerグループと交渉して、IBM iにとって必要な機能をPowerアーキテクチャに搭載してもらったことがあります。ビジネス・コンピューティングの世界では、その当時のPowerの売り物だった2進数の浮動小数点演算なんて誰も必要としていなかったからです。

私たちは、IBM iのアドレスにもっと多くのビット数が必要だと主張しました。Powerアーキテクチャにはアドレスを74ビットや80ビットにする機能が含まれており、これによって単一のアドレス空間で非常に大規模なシステム・クラスタを横断できるようになります。現在はまだ実現していませんが、将来的には素晴らしいチャンスになるはずです」

上記は「アジア太平洋向け」討論会でのソルティス氏の発言だが、Powerへの移行について、「北米向け」では上記の発言を次のように補足している。

「当時ロチェスター(IBM iの開発拠点、米ミネソタ州)のエンジニアたちは、独自に64ビット・コンピュータを開発していました。しかし当時のIBMの経営幹部たちは、すべてのシステムに共通のプラットフォームを導入したいと考えていたのです。それで、IBMの社長がニューヨークから急遽飛んできて、Powerプロセッサを使ってほしい、と言ってきたのです。

そこで私たちは、当時のPowerプロセッサがなぜIBM iに使えないのかを説明しました。そうしたら彼はPowerの開発を行っていたIBM基礎研究所に話をつけ、AS/400チームが必要とするものは何でも提供するように指示を出したのです。それで、Powerアーキテチャに80ビットのアドレスを組み込むことに成功したのです。

システム/36とシステム/38との統合(=AS/400)と、Powerアーキテクチャへの移行が今日まで続くIBM iの技術的基盤であり、それがあるのでIBM iは新しい技術を取り入れていくこと可能です。IBM iが今後も成長していくと考える理由ですす」

他の参加者は、今後のIBM iをどう見ているだろうか。

スコット・フォスティ氏
「IBM iはデータベースマシンとして知られています。そしてこの10年間に、IBM iのデータベースを活用するエンジンとしてSQLが台頭してきました。私はIBM iにおけるSQLを“破壊的なテクノロジー”と考えたいのですが、実際にSQL技術を使ってWatsonの地理空間分析機能をDb2 for iテクノロジーに融合させたとき、世界に衝撃を与えました。

IBM iには、IBMの他部門から技術を導入し、この素晴らしいオブジェクト指向オペレーティング・システムに統合する力があります。今後もそうしたことが進んでいくでしょう。IBM iと新しい技術が、この先本当に緊密に統合されていくのを見るのは素晴らしいことです」

キャロル・ウッドバリー氏
「IBM iと他製品とを分ける差別化要因の1つは、セキュリティ・チェックがどこで行われるかだと思います。IBM iでは、セキュリティ・チェックはMI(マシン・インターフェース)レベルで行われるように設計されています。そして、各マシン命令には、プロセスに一定の権限が要求されます。そのため、各マシン命令が実行されるたびに、そのプロセスの権限がチェックされます。そのため、権限チェックを迂回することは不可能ではないにせよ、困難です。

セキュリティ・レベル40のようなものを導入し、ステートとドメインを分離することで、オペレーティング・システムの完全性を確保できるようになりました。その後、私たちはオペレーティング・システムにデジタル署名をするようになりました。このように、段階を踏んできたのです。現在では、Powerハードウェアのセキュリティ・インテグリティ・チェックも行われています。このように、IBM iの設計の大本からセキュリティが確保されたアーキテクチャがあり、そのアーキテクチャを改良し続けてきたのです。これは今後も継続され、優位性を保ち続けるでしょう」

サイモン・ポルステンドルファ氏
「IBM iのオープンソース言語のサポートは、このプラットフォーム全体を前進させたと思います。まず第一に、それはISVベンダーの活躍を可能にし、その結果IBM iの可能性が拡張され、クライアントに新しい能力をもたらしてきたのです。このことは今後ますます重要な意味をもつようになると思います」

ハイジ・シュミット氏
「IBM iが生き残ってきた最大の理由は、上位互換性です。これは本当に強力な機能だと思います。もちろん、そのことは時には呪いともなって、アプリケーションの近代化がいまだに問題であることにつながっていますが、それでも上位互換性はIBM iの最大の強みです」

各イベントのWeb討論会の参加者は、以下のとおり(敬称略)。

◎アジア太平洋
・フランク・ソルティス 元IBM iチーフアーキテクト
・スコット・フォスティ IBM iデータベース開発責任者
・キャロル・ウッドバリー IBM iセキュリティ専門家(元IBM)
・ジェラール・セイブリマチュ IBMシンガポール テクニカル・リード
・イアン・ジャーマン(司会) IBMエキスパート・ラボ CTO 

◎欧州
・フランク・ソルティス 元IBM iチーフアーキテクト
・スコット・フォスティ IBM iデータベース開発責任者
・ハイジ・シュミット PSK Software代表(ドイツ)
・スティーブ・ブラッドショウ Rowton IT Solutions(英国)
・アンドリュー・アイルランド ARCAD Software(フランス)
・ホワン・マヌエル・アルカディア CD-INVEST Soluciones(スペイン) Common Europeプレジデント
・サイモン・ポルステンドルファ IBM EMEA担当
・イアン・ジャーマン(司会) IBMエキスパート・ラボ CTO

◎北米
・フランク・ソルティス 元IBM iチーフアーキテクト
・スコット・フォスティ IBM iデータベース開発責任者
・ドーン・メイ IBM iコンサルタント Common North Americaプレジデント
・キャロル・ウッドバリー IBM iセキュリティ専門家(元IBM)
・トム・ハンディングトン Forta
・イアン・ジャーマン(司会) IBMエキスパート・ラボ CTO

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IBM i 35周年記念イベントの録画は、TechChannelサイトで視聴することができる。
TechChannel:https://techchannel.com/

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