株式会社システナ
本社:東京都港区
創立:1981年2月
設立:1983年3月
資本金:15億1375万円(2023年4月1日現在)
売上高:652億7200万円(2022年3月期連結実績)
従業員数:単体4506名、連結6047名(2023年4月1日現在)
概要:ソリューションデザイン、フレームワークデザイン、ITサービス、ビジネスソリューション、クラウドの各事業
https://www.systena.co.jp/
システナリンクモール「テナモ」
https://systenalink-mall.com/
経営目標は「日本を代表するIT企業となり、日本経済を底辺から支える」。主な事業として、自動運転や車載システムなどを対象とする「ソリューションデザイン事業」、金融系・産業系・公共系などの基幹システム開発を領域とする「フレームワークデザイン事業」、システムやネットワークの運用・保守・監視などのサービスを提供する「ITサービス事業」、IT関連製品の企業向け販売を行う「ビジネスソリューション事業」を推進する。
API-Bridgeの拡張を要望し
ログ監視機能などを実現
システナは今年、創立42周年を迎えるIT企業である。従業員数はグループ全体で6000名を超え、2023年3月末の年間売上高は700億円超を達成する見込みという。事業領域は幅広く、IT製品の販売からシステム開発・運用・保守、ITサポートなどまでを幅広く手がける。また国内だけでなく、米国・ベトナムにも拠点を置き、事業を推進中である。「今後10年で最も伸びる分野」への投資といち早い事業化が特徴で、2019年〜2025年の中期経営計画では、オートモーティブ、キャッシュレス/決済、ロボット・IoT、自社製品・サービスなどを挙げ、経営資源を集中させている。
そうした中で、近年の事業テーマの1つとなっていたのが自社ECサイトの改築で、それが本レポートの内容である。
同社では2011年から「システナリンク」と呼ぶECサイトを運営してきた。「サーバーからケーブル1本まで」約70万点の商品を扱うB2Bサイトで、多くの顧客の間で定着していた。しかしながら、システム運用面では商品マスターなどを置くIBM iとECサイトが連携していなかったため、顧客からの注文を担当者が手入力で基幹登録するなどの“古さ”や非効率性が、取引量の拡大とともに顕在化していた。
そこで改築はスクラッチで行うこととし、さらにECサイトそのものをパッケージ化して将来外販することも決めた。そしてECサイトとIBM iを連携させるツールとして選択したのが、API-Bridgeだった。
「当社では1995年よりIBM iを利用してきましたが、担当者は1人しか置いていないため、連携部分の開発・運用にかかる担当者の工数を極力抑えることが開発時の要件でした。そこでツール探しを始めましたが、IBM iとオープン系とをリアルタイムに連携できる製品がなかなか見当たらず、ようやく見つけたのがAPI-Bridgeでした。お客様からの注文や見積依頼などに即座に応答し、基幹登録などにかかる人的コストを抑えるのがリアルタイム連携の目的です」と話すのは、今回のプロジェクトでPMを務めた荻野春樹氏(ビジネスソリューション事業本部DX推進部係長)である。
ECサイトとIBM iとの連携は、次のような仕組みとした。
①ECサイト上で顧客から注文や見積依頼などがあると、API-Bridge経由でIBM iへ送信
②IBM i側で在庫確認や納期確認などの処理を行った後、API-Bridge経由で返信。顧客が注文状況を確認できるようにECサイト上に表示
③1日に1回、IBM iから商品マスターのデータを吸い上げECサイト上データベースに商品データを反映
④API-Bridgeのログを監視し、実行時にエラーが起きると担当者に通知
上記①③④の機能は、じつはシステナから要望を出しオムニサイエンスが改修・拡張を行ったものという。
①について荻野氏は次のように説明する。
「ECサイトからAPI-Bridgeへ注文データなどを渡す際、API-Bridgeの当初の仕様では1つの明細に対して1つの商品しか紐づけられませんでした。しかし1対1の連携のままだとトランザクションが膨大に発生してしまい、ECサイト側のプログラムの改修も必要になります。そこで1つの明細に対して複数の商品を紐づけられるように拡張をお願いし、対応してもらいました」
③に関しては、IBM iからバッチサーバーへ吸い上げる商品データの件数が大量になると(マスターデータの総数は数万件)、処理が停止することもあったという。これは、取り扱うデータ量のチューニング機能がAPI-Bridgeになかったためで、設定ファイルでパラメータをチューニングできるようオムニサイエンス側で改修を行った。
④のログ監視機能もAPI-Bridgeに標準装備されていなかったもので、システナの要望により改修を行った。
「テナモ」を外販へ
大規模ECにも運用可能な仕様
プロジェクトは2021年12月にスタートし、翌1月にAPI-Bridgeの採用を決定、5月からECサイトとAPI-Bridgeの実装を始め、2022年11月にサービスインした。オープン時にはサイト名を「システナリンクモール」(テナモ)と命名した。
テストを担当した山本麗氏(ビジネスソリューション事業本部DX推進部)は、「API-Bridgeの処理結果とIBM i上のデータをSQLで確認し照合するテストなどを行いました。API-Bridgeの導入により連携部分の開発効率が大きく向上し、開発メンバーの学習コストを抑えられることを実感しました」と感想を述べる。
IBM iと連携するECサイトでは、先進的な製品・技術を数多く採用した。システム基盤はOracle Cloud Infrastructure(OCI)、
データベースは機械学習による自動チューニングやスケーリング機能などをもつOracle Autonomous Databaseを選択し、さらに開発言語は汎用性を考慮し、オープンソースも多数適用した。また大量データへの高速アクセス・高速応答を特徴とする検索エンジンも導入した。
「テナモは外販を見据えていたので、採用されるお客様の負担を軽減し、コストも抑えられる構成としました。とくにAutonomous
Databaseと検索エンジンの選択は知恵を絞ったところで、当社のような商品数が約70万件、年間の見積・注文数が10万件を超えるような大規模ECサイトでも余裕をもって運用可能な仕様としました」と、荻野氏は説明する。
同社では今後、API-Bridgeを活用した連携製品をオムニサイエンスとの協業により開発・販売していく計画。目下、データ連携ツールASTERIA、ワークフロー製品MAJOR FLOW、RPAツールのWinActor・UiPathなどとの連携が予定されているという。
[i Magazine 2023 Spring(2023年5月)掲載]