豊臣ソフト開発株式会社
本社:愛知県名古屋市
設立:1973年
資本金:1500万円
従業員数:32名
概要:システムインテグレーション、各種ソ
フトウェア開発、その他コンピュータ関連事業
http://www.toyotomi-center.jp/
今年設立50周年を迎える。設立当初はグループ会社のシステム構築・運用が中心だったが、次第に外部ビジネスが拡大し、現在は外部の売上がグループ会社向けを大きく上回る。RPGおよびオープン系技術を核にしたシステム構築と技術者派遣に強みをもつ。
バッチ処理のため
実務とのアンマッチが拡大
豊臣ソフト開発は、石油ストーブなどの暖房機器・空調製品メーカー、トヨトミのグループ会社で、今年設立50周年を迎える。現在はトヨトミおよびグループ会社の基幹システム全般の構築・運用を担うほか、グループ以外の企業向けにシステム構築や技術者派遣などを推進中である。グループ以外の売上比率は「70%を超える」という。
今回のレポートは、トヨトミの業務支援サブシステムの再構築プロジェクトがテーマである。
トヨトミでは1970年代から30年以上にわたり、富士通製オフコンを使用して基幹システムを構築・運用してきた。そしてそのブラックボックス化や災害・障害復旧への懸念が深刻になる中で、2011年にIBM iへ移行し、問題の解決を図ったという経緯がある。
このときは帳票基盤の刷新もあわせて実施した。従来連続用紙で行っていた大量の帳票の作成・出力・配布を、アイエステクノポートのUT/400-iPDCを導入してA4カット紙へ切り替え、複合機/普通プリンターから出力することで用紙・プリンターのコスト削減と汎用性の向上を実現した。
そしてそれ以降は、IBM i上の新規プログラムはRPG Ⅳで開発し、オフコンからのCOBOLプログラムと並存させて運用してきた。また、トヨトミの受注や販売管理、出荷で使用する各種業務支援サブシステムは、オフコン時代にVB.NETで開発したWindowsベースのプログラム(データベースはOracle)を引き続き利用してきた。
ただしこのVB.NETプログラムはトヨトミの業容拡大にともない相次いで開発されたため、サブシステムやサーバーの乱立を引き起こし、運用負荷を増大させていた。
「とくに問題となったのは、IBM iからWindowsサーバー側へのファイル転送がバッチ処理だったのでリアルタイム処理が行えなかったことと、業容の変化にシステムが取り残され、実務とのアンマッチが発生していたことでした」と話すのは、システム部1課の繁澤傑課長である。
繁澤 傑 氏
システム部
1課 課長
再構築プロジェクトがスタート
しかし暗礁に乗り上げる
2018年のIBM iマシン更改期に、移行にあわせて改築すべき最優先のシステムとして挙げられたのが、VB.NETによるサブシステムだった。
さっそく提案書をまとめ、トヨトミの承認を得て、2019年〜2022年春を期間とする再構築プロジェクトがスタートすることになった。
その考え方は、現行のVB.NETプログラムをRPGでWebシステムに作り変え、クライアントのブラウザからIBM i上のデータを直接参照してリアルタイムにデータを取得する、というものだった。3年という再構築期間を設けたのは、VB.NETによるプログラムが約350本あり、それを業務単位に、これからの業容の変化を見据えて再設計すると、必要な期間だからである。
ところが、設計を詰めていく段階で「暗礁に乗り上げてしまいました」と、繁澤氏は振り返る。
「Db2 for iからデータを抽出し、Excelへ変換できる最適なツールが見当たらなかったのです。当社が求めていたのはIBM i上で稼働しWindowsなどの別サーバーは不要であることと、導入と運用が容易なツールでした。IBM iはデフォルトでCSVを出力できますが変換エラーの問題があり、またACS経由ならばIBM iのExcel出力機能も使えますが、ブラウザからの利用は困難です。そのためツールの利用か自社開発のいずれかが必要でした」
Webシステム化により
端末の導入・設定が不要に
そうこうするうちに、アイエステクノポートから「こんなツールを開発しました」という新製品の案内があった。それがデータ抽出変換ツールの「i-D2cx」だった。
i-D2cxはDb2 for iからデータを抽出し、編集してExcel・XML・JSONなどのフォーマットへ変換し、IFSに格納できる。今回の事例では、クライアントのブラウザからIBM i上のWebシステムを操作してDb2 for iからデータを抽出し、Excelへ変換してIFSに格納したものをWebシステム経由でブラウザに表示するという仕組みになる(図表)。
「製品の説明を聞いたときに、これこそ求めていたツールだと思いました。すぐに稟議書にまとめ、プロジェクトが再度動き始めました」(繁澤氏)
プロジェクトはその後計画どおりに進み、2022年2月にカットオーバーした。構築期間中も本稼働以降も大きなトラブルは発生していないという。
今回のプロジェクトについて繁澤氏は次のように総括する。
「懸案事項だったリアルタイム処理が実現したのが大きな成果です。トヨトミの実務担当者からも、実務に即したシステムになり業務スピードが向上したと評価をいただきました。またクライアントモジュールの導入・セットアップが不要になったので、導入コストも削減できました。利便性が大きく向上したと評価しています」
同社では現在、5250画面を使う運送業者の送り状発行システムのWeb化や、インボイス制度・電帳法への対応など、業務効率化を主眼とした仕組みをトヨトミに提案中である。また今夏にはもう1台IBM iを開発専用機として導入し、開発基盤の強化や技術者の育成に利用する計画という。
システム部の川原龍真氏(営業係長)は、「IBM iを長く運用してきたお客様は、旧来からの基幹システムを刷新し、業務やコンプライアンス対応のレベルを飛躍的に向上させたいというニーズをお持ちです。グループ以外のお客様からご相談いただく件数も増え、若手のRPG技術者やPython・Javaなどを扱うオープン系技術者も育ってきたので、今後はRPGとオープン系を両輪とするシステム刷新をテーマに、お客様へのご支援を拡大していくつもりです」と抱負を語る。
堀切 裕二氏
情報システム部
主任
[i Magazine・IS magazine]