4つのトラックに17社が参加
各自の活用アイデアを競い合う
日本IBMが主催する「DXチャレンジ 2021」はIBMのビジネスパートナー、ISV、開発ベンダーが集い、最新デジタルテクノロジーを活用した新しいアイデアを創出してビジネス化を目指すコンテストである。参加企業に対しては、DX対応に求められる共創スキル、アジャイル手法の習得といった人財育成を支援している。
今年は、「アイデア創出から新規アプリ開発」「既存ソリューションのIBM Cloud対応・コンテナ化」「IBM iとの連携ソリューション」「OBC奉行シリーズとの連携ソリューション 」という4つのトラックで構成され、合計17社が参加して各自のアイデアを競い合った。
応募は2021年6月を締め切りとし、アイデア整理とロードマップ作成、プロトタイプ作成を同年12月までに完成させる。当初は12月の発表イベントで受賞結果を公表する予定であったが、コロナ感染の状況を踏まえて延期され、2022年2月18日(金)にオンラインイベントの形で全国大会が開催された。
「IBM iとの連携ソリューション」のトラック(以下、IBM iトラック)は、IBM i アプリケーションと連携するソリューションを対象としている。とくにAPIなどを利用し、他システムと連携してIBM iの基幹データを有効に活用するためのアイデアの創出が期待された。
各トラックでは、協力パートナーが技術面で支援しており、IBM iトラックでは、日本IBMに加え、イグアスとオムニサイエンスが協力パートナーとして参加している。日本IBMからはプロトタイプの作成支援、イグアスからはPower Virtual Serverの技術支援、オムニサイエンスからはIBM iのAPI連携を実現する「API Bridge」のツール提供が行われた。
IBM iトラックに参加したのは、JBアドバンスト・テクノロジー、田中電機工業、日販テクシード、SCSK Minoriソリューションズ、中橋システムの5社である。
審査の項目はビジネスデザイン、ビジネスソリューション、プレゼンテーション・スキルの3点。全トラックの参加企業のなかから、最優秀賞を受賞したのはオーイーシー(公共ソリューション開発事業部)、ベストビジネスデザイン賞はセイノー情報サービス、ベストソリューション賞は日本電通、ベストプレゼンテーション賞は神戸デジタル・ラボという結果になった(図表1)。
これらの賞のほかに、2つのスポンサー賞が用意されている。そのうちの1つであるオムニサイエンス賞を受賞したのは、IBM iトラックで発表したSCSK Minoriソリューションズである。
IBM iトラックで発表された内容はいずれも、バックエンドに最適な基盤としてIBM iを位置づけ、クラウドを含む外部システムとの連携を広げる今後のアプローチを十分に予感させるものであった。
以下に、オムニサイエンス賞を受賞したSCSK Minoriソリューションズの発表内容を紹介しよう。
オムニサイエンス賞を受賞した
SCSK Minoriソリューションズ
今回、オムニサイエンス賞を受賞したSCSK Minoriソリューションズの発表内容は、IBM iとkintoneをAPI-Bridgeで連携し、交通費精算データを自動でIBM i上の会計システムに取り組む仕組みである。
プレゼンターの北真梨子氏が所属する同社のクラウド基盤ビジネスユニット クラウド基盤サービス第一事業本部 コラボレーションサービス部は主に開発系の業務を担当しており、IBM iの案件も多い。
「昨今、IBM i業界では技術者の高齢化が進んでいます。新規機能をIBM iではなく、クラウドサービスのkintone上で実現すれば、技術者のスキル移管や利便性の向上、さらにIBM i資産の活用につながるのではないかと、今回の交通費精算システムの着想に至りました」(北氏)。
利用モデルは、Notes/Dominoで実施している同社の交通費申請システムを想定した。現在、同社では社員がNotesアプリケーションを使って交通費を精算すると、経理担当者が手作業により申請データをCSVファイルでダウンロードし、会計システムにアップロードする必要がある。これには時間もかかり、ダウンロード作業などでミスも発生する。
そこで交通費申請システムをkintoneで作成し、API-Bridgeを使って、IBM iで稼働する会計システムへ連携する。社員がモバイル端末を含むブラウザを使って、kintoneで交通費を精算すると、API-BridgeではCALLAPIコマンドでkintoneのAPIを呼び出し、申請データをJSONデータで取得して解析し、IBM iのデータベースへ自動的に書き込む。バッチファイルを設定すれば、一連の作業をスケジューリングして自動化することも可能だ(図表2)。
開発はkintone側を北氏が、API-Bridgeを含むIBM i側を前原勝敏部長(クラウド基盤ビジネスユニット クラウド基盤サービス第一事業本部 コラボレーションサービス部)が担当した。
「API-Bridgeは連携部分の開発を効率化・自動化でき、かつIBM i上で完結できる点が評価できると思います。当社では2021年にサイボウズとkintoneのパートナー契約を締結したばかりで、kintoneの開発ベンダーとしては後発ですが、その一方、IBM iの開発実績は豊富です。IBM iのモダナイゼーションという観点で、今後はIBM iユーザーでもkintoneへのニーズは高まるでしょう。IBM iという当社の強みをkintoneの開発に組み合わせることで、特色のあるソリューションを提供していきたいと考えています」と、前原氏は語る。
オムニサイエンスでは、「ソリューション内容やプレゼンテーションともに、審査員全体の評判が高く、とくに多くのお客様で利用が浸透しているkintoneとの連携事例は、今後を考えるIBM iユーザーの参考になると考えました」と、今回の受賞理由を語っている。
どこの企業でも利用している交通費精算という汎用性の高いモデル、それにIBM iとkintoneを連携させた今後のビジネスへの期待度が評価されたゆえの受賞なのだろう。
[i Magazine・IS magazine]